紫陽花の別名は10種存在!徹底的に洗い出し俳句等使用例を持ってきた
大分寒くなってきましたが、この夏以来整備していなかった庭を少し片づける機会がありました。
その際、無残な姿になった紫陽花の剪定も行いました。剪定について調べていたところ、「紫陽花の別名」という項目に目を引かれて内容を見たんですが、その別名の多さが気になりました。
そこで、その別名について調べてみると由来などは他の方々がいっぱい調べているんで、60爺は俳句を中心にどんな痕跡が残っているかを主眼に徹底的に洗い出してみました。
その成果を披露しますので、ご一緒に見ていただけると幸いでございます。
紫陽花の別名と俳句などの使用例
始めに、たくさんある紫陽花の別名を見ていただきます。
紫陽花の別名
紫陽花の別名をダーッと並べてみますね。
№ | 別名 | 由来 |
---|---|---|
1 | 四葩 | 紫陽花の花に見える部分は「額(ガク)」と呼ばれ、「額」が4つ集まっていることから「四葩」と呼ばれるようになりました |
2 | 七変化 | アジサイの花色が様々なことから名付けられました |
3 | 手毬花 | 紫陽花の丸い形から、昔から日本にある「手毬」に似ているところから、このような別名が付けられました |
4 | オタクサ | 文政6(1823)年、長崎に渡来したシーボルトは、美しい花に最愛の人・お滝さんの名をつけました。学名はHYDRANGEA OTAKSA(ハイドランゲア・オタクサ)です |
5 | 八仙花 | 八仙花は「ユキノシタ科の落葉低木のこと」の意味として用いられています。花の色が次々に変化することからこの綴りがあります |
6 | またぶりぐさ、止毛久佐 | 紫陽花の葉をトイレットペーパーの代用としていた地域があったようです |
7 | 安豆佐為 | 紫陽花の語源となった言葉のようです |
8 | 味狭藍、安治佐為 | 奈良時代の紫陽花の名称です |
どうですか?何と8つの分類で10種類もあるんですね。花の形や、花色が変わることなんかはいいのですが、何と愛人の名前なんてのもあります。
その他にも、トイレットペーパーの代りなぞというものまでありましたね!
それでは、それぞれの別名について解説していきます。俳句での使用例があれば、その俳句も紹介します。
四葩
この漢字「よひら」と読みます。
俳句では「夏」の季語として使われます。実際の俳句を2つ紹介します。
鍛冶の火を浴びて四葩の静かかな 富安風生
四葩切るをとこの手許大胆に 三橋鷹女
七変化
紫陽花は土壌の成分(酸性、アルカリ性)の量によって花色が変わるのは良く知られています。
酸性の割合が多いと青紫色、アルカリ性または中性であれば赤色となる傾向ですね。日本では酸性の土壌が多いため、青系のアジサイが咲くことが多いのです。
俳句では、やはり「夏」の季語として使われます。
罪ありしは桃色時代七変化 香西照雄
香西照雄(こうざい てるお)は、香川県出身の俳人ですね。
他に和菓子「七変化」を見つけました。練りきりで出来てるんですな!とてもおいしそうです。
手毬花
この漢字は「てまりばな」と読みます。紫陽花の異名・別称です。
「手毬花」を使った俳句を3つ見つけました。
晩年の子のごと秋の手毬花 林 翔1998/11
色褪せし芙美子の袴手毬花 林 翔2001/09
手毬花馬繋がれる河童淵 佐々木蔦芳200206
オタクサ
紫陽花は昔から長崎で愛されていた花で、今でも毎年5月から6月にかけて「長崎紫陽花まつり」が行われています~。
正式名称は「ながさき おたくさ まつり」というんですよ。
こんなお菓子も見つけましたぜ。
八仙花
こちらは「はっせんか」と読みます。
見つけた俳句はこちらです。作者がわからなかったので、URLを載せておきますね。
- 八仙花ちらほら咲けり空曇る 竹馬屋
- 移りゆく心模様に八仙花 竹馬屋
- 八仙花雨を受け止める手静か よしえ
他に、日本画を見つけました。下記の名称で検索していただけると見つかります。
大野草思 『 八仙花 』
またぶりぐさ、止毛久佐
これらの名称は、次のサイトに詳しいですね。
「新撰字鏡」には「草冠+便」の字を安知左井にあて、別に止毛久佐の字もあてられている。中世の「言塵集」には、「またぶり草とは、あぢさいの一名也、和 名、四平草」とあり、また、かたしろぐさの別名もあげられている。止毛久佐は、トモクサと一般によまれているが、「草冠+便」の字、トモクサ、マタブリグサ、カタシログサなどについては、まだ正確な意味が解明されていない。
引用 アジサイ
草冠に便の漢字ですが、残念ですが、漢字源には載っていないようですね。
安豆佐為
平安時代の「倭名類聚抄(和名抄)」に出てくる言葉です。
安豆 あつ = 集まる
佐 さ = 真
為 い = 藍(あい)
これで「真の藍色(あいいろ)の集まり」という意味になります。
そこで、花の様子から、安豆佐為(あつさい)と名がついて、安豆佐為(あづさい)が転訛(てんか)して、アジサイになったらしいのです。
味狭藍、安治佐為
ここで紹介する2つの表現は現在使われている別名とは違いますが、遠い昔に使用された文字ですので、紹介しておきます。
奈良時代の紫陽花が万葉集に謳われています。万葉集に紫陽花の作品が2つあったんです。
味狭藍
こちらは、万葉集の編集者とされる大伴家持の歌です。紫陽花は「味狭藍」と表記されています(巻四 773)。
安治佐為
こちら、橘諸兄の歌では「安治佐為」という万葉仮名で表記されています(巻二〇 4448)。
紫陽花の由来
最後に、紫陽花が何故「あじさい」と呼ばれるようになったかをお知らせします。
紫陽花は素直に読めば、「し・よう・か」となってしまい、知らなければ絶対に読めませんよね。
実は、昔の学者の勘違いから、この名称がついてしまい訂正されないまま、周知されてしまったんです。
招賢寺有山花一樹、無人知名(招賢寺に山花一樹あり、名を知る人無し)
引用 ぽかぽか春庭「紫陽花・安治佐為その1」
色紫気香、芳麗可愛、頗類仙物((色紫にして気香しく、芳麗にして(愛すべく、頗る仙物に類す)
因以紫陽花名之((よって紫陽花を以てこれを名づく。)
「招賢寺に、名前が不明の紫色の花木があった。その名を知る人がいない。色は紫で芳香がある。芳しく麗しい愛すべき花。まるで、人間界とは異なる仙界の花のようだ。よって、この花を紫陽花と名付けた。」
ここ、「色は紫で芳香がある。」とありますが、紫陽花って余り香りませんよね。
そこで、白居易は「名前を知らない花(おそらくはライラック,仏名はリラ)の名前を「紫陽花」としましょう」と謳ったのですが、三十六歌仙のひとり、平安時代の学者、源順(みなもとのしたごう)が今のあじさいにこの漢字をあてたため誤用がひろまったらしいです。
最後に
紫陽花の別名を見てきました。
四葩、七変化、手毬花は、いくつかの俳句に読まれていましたね。七変化は和菓子になっていました。
オタクサは、あのシーボルトが名付け親で、長崎では親しまれ、未だに祭りが行われるんです。銘菓もありましたね。八仙花にも俳句がありました。
安豆佐為は、アジサイの基になった漢字でした。また、平安時代に読まれた和歌の中に既に紫陽花(味狭藍、安治佐為)があったのにも驚きました。
最後の最後に、紫陽花の漢字が間違いからついたこともびっくりでした。
※気づけば「別名」の記事も増えてきました
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