「しずらい」「しづらい」はどっちが間違い?その答えを一発回答
日本語って難しいですよね。何が難しいのかというと、同じ発音で、色々な書き方があることです。
既に記事にした「固いと硬いの違いは?堅いと難いを合わせ使い方や意味を徹底的に解説」では、「かたい」に対して4つの書き方がありました。
また、「暖かいと温かいの違いは何?厳然たる理由とその他の意味を一緒に紹介」では、「あたたかい」に対して2種類の書き方がありました。
今回の記事では、上記のように漢字の書き方を見る訳ではないので、ちょっと毛色が違いますが、同じ発音である「しづらい」と「しずらい」についてどちらが間違いか一発回答します。
それでは、どうぞ、最後までご覧ください。
「しずらい」「しづらい」はどっちが間違い?
まずは、結論を一発回答しましょう。
「しずらい」が間違い!
そもそも、日本語に「しずらい」という言葉はないんです。
ですから、「しづらい」が正解ですね。
「しづらい」という言葉は、「する」という動詞の連用形に「つらい(辛い)」という接尾語がついた言葉です。
「しづらい」は、その動作をするのが難儀である、困難であるという意味を表します。
広辞苑で「つらい」を見てみましょう。
複数の意味があるんですが、今回の狙いは、こちらの意味です!
・・・
広辞苑
④(多く「づらい」の形で、動詞の連用形に付いて)その動作をするのが難儀である、困難であるの意を表す。「読み―・い」「言い―・い」
上記④を見てください。
まさに、この部分が今回の記事で言っている内容ですね!
この「つらい」から来る言葉なので、「しづらい」になるんですよ~。
なお、実用日本語表現辞典に、「しずらい」が載っていましたが、ここでも、『本来的には「しづらい」と表記すべき言い方といえる』と出ています。
なお、しづらいの漢字表記があるかというと「し辛い」となります。上記の青い囲み枠で述べたように、「し」+「辛い」から来ています。
毎日新聞の校閲センタ―でも上記のように『「つらい(辛い)」が濁音の形で動詞についたものなので「づ」というわけ』と言っております。
どうして間違える人が多いの?
さて、「しづらい」と表記すべきなのに、何故、「しずらい」と書いてしまう方がいるのでしょうか?
その理由として、以下の2つが考えられます。
- 単純に「しずらい」と思っているから
- 「現代仮名遣い」における「ず」、「づ」の書き分けを勘違いしているから。
それぞれの理由について、少し突っ込んで考えてみましょう。
単純に「しずらい」と思っている
これ、単純な理由です。
使っている本人が『単純に「しずらい」と思っている』からなんです。
人から「〇〇しづらい」と聞いた際、声に出したときに同じ発音なので、この「づ」について、「つ」に濁点の「づ」ではなく、「す」に濁点の「ず」を思い浮かべるのです。
そんな関係で、SNSやインターネットで文章を発信する際も、「づらい」と表記しようとする時、つい「ずらい」を使ってしまうといった事態になるのです。
現代仮名遣いを勘違いしている
2番目の仮説です。
「現代仮名遣い」における「ず」、「づ」の書き分けを勘違いしているから。
1986年に内閣告示された現代仮名遣い※において、「ぢ・づ」は「じ・ず」に置き換えるよう、統一するとされました(複数ある規則のうち、一部を抜粋しています)。
例をいくつか挙げます。
- 「ふぢの花→ふじの花」
- 「はづかし→はずかし」
- 「いなづま→いなずま」
- 「ぢめん→じめん」
※現代仮名遣い
現代日本語,主として口語体の現代文を仮名で書き表す場合の準則。
ここまでの説明で、「しずらい」でいいんだと思ったわけですね!
ところが、例外として、同じ音が連続する場合や、二つの言葉繋がっている連語の場合は「ず」に統一するのではなく「づ」を用いることになっているんです。
例を挙げておきます!
例外1【同じ音が連続する場合】
- つづく
- ちぢむ
例外2【二つの言葉繋がっている連語の場合】
- はな・ぢ
- し・づらい
「しづらい」は、既に述べてきたように、「する」+「つらい」の二つの言葉が繋がっている連語のケースに当てはまる訳です。
以上から、「しずらい」ではなく、「しづらい」となります。
「しづらい」を使用した例文
この章では、「しづらい」を使用した例文を見ておきましょう。
1.その事態はちょっと想定しづらいと私は思う。
引用 しずらいの意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書
2.このボタンは押しづらい。
3.理解しづらい、または使用しづらい
4.私は背の高い選手はとても低い位置に来るボールをレシーブしづらいのではないかと考えました。
それぞれの使い方を見てみます。
- 発生した事態が、それまでの状況からして想定を超えるモノであったことを示しています。
- ボタンが固いのか、ボタンの形態が悪いのか、ボタンを押すのに苦労しているようです。
- 提示された提案がわかりにくい、提供されたモノが使いづらいことを言ってます。
- バレーボールですかね?背が高いと、低いボールのレシーブに苦労すると思っているんですね。
このような感じで、上記広辞苑の意味④で言っている「その動作をするのが難儀である、困難であるの意を表す。」を示しています。
知恵袋とx(twitter)
「しづらい」と「しずらい」についてのコメントをyahoo!知恵袋とx(twitter)から拝借してきました。
yahoo!知恵袋
「しずらい」「しづらい」のどちらが正しいか、yahoo!知恵袋にも質問がいくつも出ていますね。
…~しづらい
引用 yahoo!知恵袋
…~しずらい
どっちが正しいのでしょうか?
「〜しずらい」と「〜しづらい」ってどっちが正しいんですか?
引用 yahoo!知恵袋
質問です。
引用 yahoo!知恵袋
「~しづらい」と「~しずらい」どっちが正しいのでしょうか?
上から順に、2011年、2022年、2018年の質問です。こたえは、それぞれ、この記事でいったように「しづらい」が正しいと出ています。
x(twitter)
x(twitter)にも、そこそこの数が載っていますね。
「しずらい」がメジャーになっちゃってるのは困りますなあ。
この方が書いている通り、「辛い」⇒「つらい」から「しづらい」なんですよ。日本語、乱れとりますな。
この方も怒ってます。
「しずらい」増殖中なんでしょうか?
ここでも、「しずらい」⇒「しづらい」入ってます。
「しづらい」を教えるところが亡くなっているんですかね。
「しづらい」「しにくい」の違い
「しづらい」に似た言葉に「しにくい」がありますね。ついでですので、これらについても見ておきましょう。
果たして違いはあるのでしょうか?
「しづらい」「しにくい」の違い
違いがあるかどうかについては、非常に難しい問題です。ほとんど、同じといってもいいレベルです。
実際、意味を見ても、その違いを論ずることが難しいです。
「しにくい」の意味は、「することがむずかしい。やりにくい。」(広辞苑)です。
「しづらい」の意味は、「その動作をするのが難儀である、困難であるの意を表す。」でしたので、ほとんど同じ意味だと言えますね。
他のサイトを見ると色々な意見が出ています。例えば、しづらいは「心理的なもの」、しにくいは「物理的なもの」で分けるという方もいらっしゃいます。
しかし、この点については、日本国語大辞典の内容を見てください。
「づらい」は「動詞の連用形に付いて、その動作をすることに困難を感じる意を表わす。」「心理的に抵抗が大きい意に使う場合もあり、物理的に困難である意を示すこともある。」
引用 小学館・日本国語大辞典
これを見ると、「しづらい」であっても、「心理的に抵抗が大きい意に使う場合もあり…」とあるんですね。ですから、先程の意見には簡単にはうなずけないですね。
さて、続いて、次の引用をみてください。
出現時代は「にくい」が古く、10世紀には用例があります。「づらい」は19世紀になってから登場します。
引用 「~にくい」と「~づらい」
「にくい」から「づらい」へ移行しているとも言えます。
「にくい」の方が長く使われ、「づらい」がだんだん台頭してきたと考えられます。
・・・
ことばの裏にあるこういう心理的な問題を上手に表現しようとするのは、難しいかもしれませんし、現代では、もっと別の表現を考えなければいけないのかもしれません。
10世紀に登場の「しにくい」に対し、900年後に「しづらい」に登場したんですよ!
現代は、「にくい」から「づらい」へ移行している時期のようです。
ここから考えても、どう使い分けるか、何が正しいのかを見極めるのは簡単ではないようですね。
この「しづらい」「しにくい」の違いについて、詳しく解説した記事がこちらです。是非、ご覧ください。
最後に
「しずらい」「しづらい」はどっちが正しいのか見てきました。
正解は、「しづらい」でしたね。「しずらい」という使い方は誤りだったとわかりました。
「しづらい」という言葉は、「する」という動詞の連用形に「つらい(辛い)」という接尾語がついたモノだったんです。
ここで、「しづらい」が正しいのがわかったので、これから何かを発信する際には、この言葉が出てきたとき、正しく使用しましょう。知らない所で評価されるかもしれませんから。
■追記 冒頭でも述べましたが、日本語には同じ発音で違う表記がある漢字が多数存在します。
※気づけば「○○と××どっち」の記事も増えてきました
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