抑えると押さえるの違いを意味や漢字表記を使ってこだわりの大特集
コロナ禍も3年目ですか、いい加減収束して欲しいものですが、何度も「おさえる」と言っていながら実現できませんでしたね。
さて、今回のテーマは、この文章に出てきた「おさえる」という表現です。
日本語には、同じ表現を複数の漢字を使った言い方で表わすことが出来ますが、この「おさえる」もその仲間なんですね。
「抑える」と「押さえる」で表現できます。
この二つの漢字の違いは何で決まるのでしょうか?やっぱり気になりますよね。
そこで、今回は、この言葉について、意味や漢字表記についてこだわって調べてみたんですよ~!
漢字も含め、なかなか興味深かったですよ~。
この記事では、これらの違いと、その意味や使い方、漢字表記などを調べた結果を大特集しちゃいます。
抑えると押さえるの違いは?
まず、これらの違いは何か一言で表しますね!
抑えると押さえるの違いは?
漢字表記 | 意味 | 使用例 |
---|---|---|
抑える | ①勢いを止める、食い止める ②こらえる、我慢する、感情を抑制する ③控えめにする | ①物価上昇を抑える ②怒りを抑える ③甘さを抑える |
押さえる | ①実際に力を加えて動かないようにする ②被せる、覆う、押し当てる ③捕らえる、つかむ、確保する | ①手で押さえる ②傷口を押さえる ③証拠を押さえる |
どうですか?意味と使用例を見ると、どんな場合に使うか明確になったと思います。
それぞれの漢字表記の意味と、どんな使用例があるのか見ていきましょう。
抑える
3つの意味を持ちます。
意味 | 使用例 |
---|---|
ある限度を超えないようにする。 | 月々の出費を一〇万円に━ |
感情や欲望が高ぶるのをとどめる。抑制する。 | 怒りを━(=こらえる) |
勢いを増そうとするものを押しとどめる。封じ止める。ふさぎ止める。 | 反対派の動きを抑える 実力行使で猛反対を押さえる(=押さえつける) |
参照:明鏡国語辞典
これを見ると、最初の意味は「抑えると押さえるの違いは?」にはなかったものですね。限度を超えないようにする際も、「抑える」を使用するんだ~!
2番目の意味は、「抑えると押さえるの違いは?」の中の「こらえる」に当たります。
最後の意味は、「抑えると押さえるの違いは?」の中の「勢いを止める」に対応します。最後の例では、使い方に「押さえる」が入っています。
ここでは、表記使い分けは安定していないようなんです。抑止して封じる意では「抑」、権力などで封じる意では「押」を使う傾向があるようですね。
押さえる
こちらは、5つの意味が出てきました。
意味 | 使用例 |
---|---|
動かないように、押しつけて力を加える。 | 文鎮で紙を━ |
おおうようにして、手などを自分の体に押し当てる。 | ハンカチで目頭を━ |
取り押さえたり差し押さえたりして、しっかりとつかまえる。また、相手が否定する事柄を動かしがたい事実としてしっかりとつかむ。 | 現行犯で犯人を━(=捕らえる) 放火犯の証拠を━(=握る・つかむ) |
自分のものとして、しっかりと確保する。 | 手回しよくS席を二枚━ |
自分のものとして、要点などをしっかりと頭に入れる。把握する。また、弱点などをつきつけて相手を支配する。 | 要点[ポイント・壺つぼ]を━ |
参照:明鏡国語辞典
「抑えると押さえるの違いは?」では、「押さえる」で「力を加えて動かないようにする。確保する。つかむ。手などで覆う。」と言っていました。
それで見ていくと、1~4の意味は、この4つの中に包含されるようですね。
最後の説明も、「抑えると押さえるの違いは?」の「つかむ」ないし「確保する」に含まれると思いますが、どうでしょうか?
次の項では、「抑える」「押さえる」の漢字表記「抑」「押」に焦点を当てて、その意味などを見ていきます。
「抑える」「押さえる」の漢字表記について
「抑える」「押さえる」の漢字表記について着目して、その内容を見てみましょう。
「抑」
まず、「抑」について、読み方と意味を見てみましょう
「抑」の読み方と意味
抑
画数 :7画
音訓:ヨク おさえる そもそも
意味
①おさ・える。上から下へとおしつけて止める。また、あばれたり起きたりするものをおさえつける。②それとも。③それでは。④姓のひとつ。
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
4つも意味があります。④の内容は、今回、調べていることとは関係ありません。
「それとも」とか「それでは」という意味も持っているんですね。「そもそも」をパソコンで漢字変換(IME)したら、確かに「抑」が候補として出てきました。
今回のターゲットは①ですね。
語源です。
抑と印は同源で「上から下へに押さえつける」というイメージがある。上から押さえつけると下のものは動きを止めるから「対象が動かないように押さえ止める」というイメージに展開。印はただ押さえることにポイントがあるが、抑は押さえて動きを止めることにポイントがある。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
「抑は押さえて動きを止める」ことを言うんですね。抑圧も抑制も、抑えつけて動きを止める場合に使っているのはその意味なのか。
字源は次の通りです。
抑=「卬(ヨク 押さえつける)+手(て)」。卬は抑・迎に含まれる卬(ゴウ)とは別で、印の鏡文字。鏡文字は反対の意味・イメージを作るテクニックだが、ここでは印と同じイメージを表す。抑は人を上から手で押さえつける情景。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
鏡文字なんて初めて聞きましたよ。こんなテクニックがあるんですね。
鏡文字
引用 wiki 鏡文字
鏡文字(かがみもじ)とは、上下はそのままで左右を反転させた文字である。鏡文字で文章を綴る際には文字の進行方向も言語本来の進行方向に対して左右逆になる。鏡に映すと正常な文字・文章が現れる。鏡像文字ともいう。
「押」
「押」について、読み方と意味を見てみましょう
「押」の読み方と意味
押
画数 :8画
音訓:オウ おす・お(さ)える
意味
①おしかぶせておさえる。転じて、上から押しつける。②お上の力で犯人をとりおさえる。権力でおさえつける。③物品をおさえて抵当とする。④「花押」とは、記号風の署名のこと⑤姓のひとつ。
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
こちらは、5つの意味がありまが、④、⑤の内容は、今回、調べていることとは関係ないですね。
また、①~③の意味が、今回追いかけている内容を説明しています。
②で言っているのは、上記「抑える」の最後の意味にあったモノです。即ち、抑止の意味で使う場合も、使い分けは安定しておらず、権力などで封じる意では「押」を使うんですなア。
語源を見ておきましょう。
押は甲と同源。甲は蓋・函と同源で「蓋をして封じる」「表面に覆いかぶさる」というイメージがある。表面にかぶさると下のものはおしつけられた状態になるから、「上からかぶせておさえつける」というイメージに転化。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
こちらは、「抑」と違って、動きを止めるというイメージはないですね。ここで、「押」と「抑」の違いをもう一度見ておきます。
- 「押」(オウ):外からかぶせておしこめる意
- 「抑」(ヨク):上から下にへおしつける意です!
押の字源は次のようなものです。
「押」=「甲(コウ:表面に覆いかぶさる)+手(て)」。甲は中の物を周囲から殻で覆いかぶせて閉じ込める状況を示す象徴的符号。この意匠によって、「表面に覆いかぶさる」というイメージを表す記号となる。押は手を物の上に覆いかぶさるようにして下に押しつける情景。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
手を以て押しつけるのが「押」のイメージと考えて良さそうですね。
最後に
今回は、「抑える」、「押さえる」について、どんな違いがあるのかを見てきました。
始めに、これらの違いが何かを表しました。「抑える」が物理的な力とは別物であるに対して、「押さえる」には物理的な力を加えてやるようなニュアンスでしたね。
漢字で見ていくと、「抑」は人を上から手で押さえつける情景で、「押」は手を物の上に覆いかぶさるようにして下に押しつける情景でしたね。
日本語は、ひとつの表現を違う漢字で表わす(しかも、意味が変わってくる)んで難しいですが、それを明らかにしていくと感慨深いものがあります。
前回も言っていますが、漢字も奥深くて非常に面白いですな~。この先も、このシリーズは続けていきたいです。
※気づけば「違い」の記事も増えてきました
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