鑑賞と観賞の違いとは?意味や漢字表記を複数の辞書を使用して大解体
皆さん。「かんしょう」と聞いて、どんな文字を思い浮かべますか?一方的に勝つ「完勝」や影響を及ぼす「干渉」なんて言葉が思い浮かびますが、今回は格調高い漢字です。
「鑑賞」と「観賞」の違いを見ていきますよ。
この「かんしょう」今言ったように、複数の漢字を使った言い方で表わすことが出来ますが、その中で今言った二つの言葉が似ており、じゃあ、その違いは何だろうと思っちゃったわけです!
その違い、パッと言えますか。ウーン、ちょっとしどろもどろになっちゃいそうなので、辞書を片手に調べまくってみました。
漢字も含め、色々と勉強になりました~。
この記事では、これらの違いと、その意味や漢字表記などを複数の辞書を使って解体してみましたよ。
鑑賞と観賞の違いは?
まず、これらの違いは何か一言で表しますね!
鑑賞と観賞の違いは?
漢字表記 | 意味 |
---|---|
鑑賞 | 芸術作品を理解し、味わうこと。 |
観賞 | 見て楽しむこと。見て賞翫しょうがんすること。 |
しょう‐がん【賞翫・賞玩】
①めでもてあそぶこと。珍重すること。
②あじわうこと。賞味すること。
③尊重すること。
参考:広辞苑
鑑賞と観賞の違いは上記の通りです。
鑑賞は、「芸術作品を理解して、さらに味わう」んですね。それに対して、観賞は「見て楽しむ」ことで、特に理解とかは必要ないと考えればいいでしょうか。
賞翫なんてことが書いてあるので、余計なことを考えなければいくなくなりますな!まあ、この難しい文言は置いといて、大体、上記のことを思っといてくだされば十分でしょう。
それぞれの漢字表記の意味と、どんな使用例があるのか見ていきましょう。
鑑賞
複数の辞書を見て、どのような説明をしているか確認してみました。
辞書 | 意味 |
---|---|
広辞苑 | 芸術作品を理解し、味わうこと。 |
明鏡国語辞典 | 芸術作品などにふれて、その価値を理解し味わうこと。 |
三省堂国語辞典 | 芸術作品などの美しさを、自分なりにあじわうこと。 |
光村国語学習辞典 | 絵や音楽などの芸術作品を見たり聞いたりして深く味わうこと |
これを見ると、やはり、対象は芸術作品になるんですね。ということは、芸術作品でなければ、鑑賞の対象にはならないと考えて良さそうです。
そして、全ての辞書で「味わう(あじわう)」と言っています。また、2つの辞書では「理解」という言葉が使われていますね。
鑑賞とは、単純に見るのではなく、理解し味わうことが要のようですな。
観賞
それでは、観賞も同様に見てみることにします。
辞書 | 意味 |
---|---|
広辞苑 | 見て楽しむこと。見て賞翫しょうがんすること。 |
明鏡国語辞典 | 自然の中で物を見て、その美や趣を味わい楽しむこと。 |
三省堂国語辞典 | 美しいものを見て心を楽しませること。 |
光村国語学習辞典 | 見て楽しむこと。 |
観賞で共通しているのは、「見て」「楽しむこと(楽しませること)」です。
対象を挙げているのは、明鏡国語辞典「自然の中で物を」、三省堂国語辞典「美しいもの」の2つですね。広辞苑と光村国語学習辞典では対象を挙げていません。
こちらは、鑑賞と違い、見たものを理解し味わう必要はなく、ただ、単純に楽しめばよいのだと理解すればいいようです。
次の項では、「鑑賞」「観賞」の漢字表記「鑑」「観」に焦点を当てて、その意味などを見ていきます。
「鑑賞」「観賞」の漢字表記について
「鑑賞」「観賞」の漢字表記について着目して、その内容を見てみましょう。
「鑑」
まず、「鑑」について、読み方と意味を見てみましょう
「鑑」の読み方と意味
鑑
画数 :23画
音訓:カン かがみ かんがみる
意味
①光の反射を利用して物の姿・形などを映す道具。②かがみに映してみる。③前例を見てよしあしを考える。また、よく見て品定めをする。検討する。④姿を映してみて、自分の戒めとする材料。戒めとなる手本や前例。⑤検討の資料や手本となる文書。転じて、手形や、人に見せるしるし。⑥大きな鉢。水かがみに使えるような盆のこと。⑦ご覧いただきたいとの意味を表す書簡用語。⑧姓のひとつ。
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
何と!8つも意味があります。鑑は、「鏡」そのものを指しているんですね。その他にも、「鏡」に関わる意味を持っています。
現在、調べている内容は、③の中の、「よく見て品定めをする。」ですかね!
字源は次の通りです。
鑑=「監+金(きんぞく)」。鑑は監から派生・展開する語。監は水鏡から発送された言葉で、「一定の枠の中に収める」というイメージがある。一定の枠の中で姿を映す金属製の鏡を鑑という。かがみの機能から意味が展開する。かがみに姿を映して見る意味、手本や前例に照らして反省する意味(鑑戒)、戒めとなる手本や前例の意味(殷鑑・亀鑑)、さらに、教えてくれる手本の意味(図鑑・年鑑)、照らし合わせて本当の姿をはっきりと見分ける意味(鑑識・鑑賞)、本物かどうかを見分ける意味(印鑑・門鑑)へと展開する。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
くしくも、鑑=鏡で、その「かがみの機能」から、色々な意味が出て来たとは驚きました!図鑑や年鑑、鑑識や印鑑にまで広がっているのはビックリです!
「観」
「観」について、読み方と意味を見てみましょう
「観」の読み方と意味
観
画数 :18画
音訓:カン みる・しめす
意味
①揃えてみる。み渡してみ比べる。み比べて考える。②見物して回る。見物の旅。③揃えて人に見せる。④外に表わしてみせる姿。また、み渡した景色。⑤物事の意味や本質をつかむ。⑥見方。考え方。⑦周易の六十四卦の一つの形で、敬虔な態度を保てば、全てが整然と行われるさまを示す。
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
こちらは、7つの意味がありまが、②の内容が、今回追いかけている内容を説明していると思います。
この漢字は、他に「み比べて考える」「揃えて人に見せる」「外に表わしてみせる姿」「物事の意味や本質をつかむ」「見方。考え方」「周易の六十四卦の一つの形」など、様々な意味を持っているんですね。
漢字ってすごいな!
語源を見ておきましょう。
「みる」という行為に対して、見・視・看・監など多くの語があるが、それぞれイメージが異なる。見は「対象の姿が視野に現れてみえる」、視は「まっすぐ視線を向けてみる」、看は「様子を伺いみる」、監は「見下ろす、見張る」の意味。これに対し、全体をまとめて(一望のうちに)見渡す見方が観である。全体をまとめて見渡すことから、景色などを一望のうちに見る(見物する)意味、見渡す全体の姿・眺めの意味に展開。また、視覚から知覚へ転じて、物事の意味や本質をつかむ意味、物事に対する見方。考え方の意味を派生。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
「みる」に対応する漢字は多数ありますが、「全体をまとめて(一望のうちに)見渡す見方が観」なんですね。そして、ここから、意味が広がっていって、「物事の意味や本質をつかむ」「見方。考え方」まで派生した訳なんですな。スゴイ!
最後に字源を見ておきましょう。
「觀(観の旧字)」=「雚(カン:左右に揃う)+見(みる)」。雚は「二つの頭」+「ふたつの口」+「隹(とり)」で雄雌がHの形に仲良く並んでいる鳥を暗示させる図形。雚は鸛(コウノトリ)の原字。ただし実態ではなく形態や生態に重点がある。コウノトリの生態や習性からイメージが取られる。コウノトリは雌雄が揃って巣の上で子育てをする習性があり、夫婦仲のよい鳥とされた。だから雚は「Hの形に並ぶ」「同じようなものが左右にバランスよく揃う」「一緒に合わせ揃える」というイメージを示す記号となる。觀は対象がどんな様子であるかを知るために、全体を合わせてまとめてみる状況を示す。この意匠によって、対象を相対的に見渡す意味を表す。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
観の旧字である「觀」がコウノトリにつながり、そこから、「対象を相対的に見渡す」意味になっていくとは驚きですね。
「賞」
鑑賞、観賞のどちらにもついている「賞」についても簡単に見ておきましょう。
「賞」の読み方と意味
賞
画数 :18画
音訓:ショウ
意味
①功労のあった者に報いるために、それに当たる財貨を与える。②人の功労や善行をほめたたえる。③いつくしんで楽しむ。④ほうびとしていただいたもの。ほうび。⑤姓の一つ。
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
③の意味が、鑑賞や観賞についている際の内容ですね。「いつくしんで楽しむ」、どちらの「かんしょう」でも楽しむという意味を持つわけですな!
次の章では、鑑賞及び観賞の他に「かんしょう」と読む言葉について見ていきます。
その他の「かんしょう」
さて、冒頭で「かんしょう」を表す言葉がいくつかあると言いましたが、それらの漢字表記と意味を見ていきましょう。
№ | かんしょう | 意味 |
---|---|---|
1 | 干渉 | ①[後漢書東夷伝、濊]他人の物事に強いて立ち入り、自己の意思に従わせようとすること。 ②波動に特有な現象で、二つ以上の同一種類の波動が同一点に会した時、その点において起こる相互作用。波動が同位相では互いに強め合い、反対の位相では互いに弱め合う。 |
2 | 奸商・姦商 | 不正手段を以て不当な利益を収める商人。 |
3 | 完勝 | 完全な勝利。 |
4 | 官省 | ①国家の機関。中央官庁。官庁。 ②太政官と民部省。 |
5 | 官掌 | =かじょう。律令制で、太政官の弁官の下官。訴人のことを申し伝え、使部(召使)を監督し、太政官庁の整備をつかさどった。 |
6 | 冠省 | (カンセイは誤読)手紙で、時候の挨拶など前文を省略すること。また、その際に書く語。 |
7 | 冠称 | 角書(つのがき)に同じ。浄瑠璃・歌舞伎の名題なだいや、書名などの上に2行あるいは数行に割って副次的に書く文字。例、「手管早引廓節要」「頭書十八史略」の小さい字の部分。冠称。 |
8 | 竿檣 | 檣楼を設けず、簡単な見張台や信号竿を装置する軍艦の檣ほばしら。 |
9 | 喚鐘 | ①仏堂内に吊って法会などのときに用いる小さい鐘。禅宗では殿鐘ともいう。半鐘。 ②茶席の準備が整って客の入来を請う時、その合図に打ち鳴らす釣鐘形の青銅の鐘。 |
10 | 寒松 | 冬の松。 |
11 | 勧奨 | ある事をするように、すすめ励ますこと。 |
12 | 勧賞 | =けんじょう。功労を賞して官位を授け、または物を賜ること。 |
13 | 関渉 | かかわりたずさわること。 |
14 | 歓笑 | よろこび笑うこと。 |
15 | 緩衝 | 二つの物の間の衝突や衝撃をゆるめやわらげること。また、そのもの。 |
16 | 環象 | 周囲をとりまいている一切の現象。個人をとりまく社会現象の類。 |
17 | 環礁 | 大洋中に発達する環状の珊瑚さんご礁。内部は浅い潟、外側は深い外洋に面する。マーシャル諸島のヤルート島の類。 |
18 | 癇症・癇性 | 神経過敏で激しやすい性質。また、病的にきれい好きなこと。 |
19 | 簡捷 | 簡単ですばやいこと。 |
20 | 観象 | 気象を観測すること。 |
21 | 観照 | ①〔仏〕智慧をもって事物の実相をとらえること。 ②対象を、主観を交えずに冷静にみつめること。 ③〔美〕(contemplation イギリス・ フランス)自然・芸術を問わず、美的対象の受容における直観的認識の側面。 |
参考:広辞苑
気軽に、「かんしょう」の文言を見に行ったら、なんと21もの文言に遭遇して吃驚仰天でした。
しかも、この中に出てくる文言、余りなじみのないモノが多く、目が白黒してしまいましたよ~。
干渉、完勝、感傷、管掌、緩衝くらいは知っていました。言われてみれば、環礁、癇性辺りはわかりますが、あとの文言は、「へええっ」ていうのが多かったです!
最後に
今回は、「鑑賞」、「観賞」の違いを見てきました。
「かんしょう」なんていうと、普段あまり使用しないし、特に「鑑賞」とかいうと、ちょっとなーって感じがしちゃうんのは私だけなんでしょうか?
まあ、調べてみると、「鑑賞」は「芸術作品を理解し味わう」なんて、こ難しいことを言っておりまして、60爺は、こんな見方は、ほとんどないなあーなんて考えました。
この二つから選ぶと、60爺はもっぱら「観賞」ですね!まあ、そんなことで、今回は意味を4つの辞書で調べて、どんなことが書いてあるかを比較しました。
また、漢字で見ていくと、「鑑」は「かがみ」がベースで、そこからいろいろな意味が派生したことがわかりましたね~。
「観」は「全体をまとめて(一望のうちに)見渡す見方」などということがわかって感心しました!
また、ひとつ知識が増え、おりこうさんになっちゃった気がします。
※気づけば「違い」の記事も増えてきました
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