「元に」と「基に」の違いは?意味や漢字表記を見つつ大特集しちゃう
「~もとに」という表現ですが、この「もと」に対してどんな文字を使用しますか?
現状では、この表現はあまり使わないのですが、在職中は資料を作成する際、この表現をかなり使っていたことを思い出しました。
その際、使った漢字は「元」ではなく、「基」を使用したことが多かった記憶があります。
在職中は、余り深く考えることなく、「元に」や「基に」を使用していたんですが、今回、読みは同じでも表記が違うシリーズを始めたことで、この違いや意味が気になっちゃったんですね。
そこで、いつものように、この「元に」と「基に」の違いや意味や漢字表記を、辞書を片手に調べまくってみました。
その結果をシェアしますんで、ご一緒に確認していってくださいませ。
「元に」と「基に」の違いは?
まず、これらの違いは何か一言で表しますね!
「元に」と「基に」の違いは?
漢字表記 | 意味 |
---|---|
元に | 物事が生じる始まり。以前。近くの場所。もとで。 |
基に | 基礎。土台。根拠。 |
「元に」と「基に」の違いは上記の通りです。
「元に」は、「見習うべき元がある」と考えていいでしょう。それに対して、「基に」は、基準・基礎となる基がある」と考えればいいでしょうか。
それぞれの違いが分かる助けとなるよう例文を出しておきます。
- 編集前の元の画像を調べる
- 使った道具を元に戻した
- これまでの経験を基に起業することにした
- 検査結果を基に今後の治療方針を決める
それぞれの漢字表記の意味と、どんな使用例があるのか見ていきましょう。
元に
複数の辞書を見て、どのような説明をしているか確認してみました。但し、「元」を調べています!
辞書 | 意味 |
---|---|
広辞苑 | ①はじめ。起源。 ②以前。 ③(「因」とも書く)原因。 ④もとで。元金。資本。 ⑤元値もとね。原価。 |
明鏡国語辞典 | ①物事の起こり。起源。 ②それが生じるところ。また、それを生じさせるところ。 ③原因。 ④もとで。資金。また、原価。 ⑤原料。材料。 |
三省堂国語辞典 | ①起こり。始まり。 ②それが出てくる・(それを出した)ところ。 ③以前。むかし。 ④はし(箸)・筆などの、手に持つところ(に近い部分) ⑤原因 ⑥原料 ⑦酒を発行させるもとになるこうじ ⑧もとで。 ⑨元値 ⑩素性 |
光村国語学習辞典 | ①以前。前の。 ②それが出てくる場所。 ③元手。資本。 ④原因。 ⑤原料。材料。 |
「元」の意味はたくさんありますな!三省堂さんなんかは10の意味が出ていましたよ。
このたくさんある意味につながる場合に、「元に」を使用するんです~。「元に」を使った使用例をいっぱい挙げちゃいましょう。
- 子供の頃の思い出を元にしてコミックを描く
- やってしまったことは元に戻らない
- 火の元に注意
- いなくなったネコが飼い主の元に帰ってきた
- 信頼関係が元に戻ってしまった
基に
それでは、「基」も同様に見てみることにします。
辞書 | 意味 |
---|---|
広辞苑 | 物事の主要な部分。根幹。基礎。もとい。 |
明鏡国語辞典 | 物事の根本となるところ。基本。基礎。 |
三省堂国語辞典 | 土台。基礎。もとい。 |
光村国語学習辞典 | 土台。基礎。 |
こちらは、どの辞書も一択でした。
全部の辞書で「基礎」と言っています。他にも、もとい(=基:土台。基礎。また、物事の根本。)や土台が複数の辞書で挙がっていますね。
ここでも、使用例を見ておきましょう。以下のように、根幹と成すものがある場合に「基に」を使用するんですよ~。
- あのデータを基にして説明資料を作った
- 奴のいつもの行動を基に私たちは張り込むことに決めた
- この小説は事実を基に書かれている
- 前年度の成績を基に年収を決定するシステム
次の項では、「元に」「基に」の漢字表記「元」「基」に焦点を当てて、その意味などを見ていきます。
「元」と「基」の漢字表記について
「元に」と「基に」の漢字表記について着目して、その内容を見てみましょう。
元
まず、「元」について、読み方と意味を見てみましょう
「元」の読み方と意味
元
画数 :4画
音訓:ゲン ガン もと
意味
①まるい頭。②ものごとの最初の。はじめの。③はじめ。もとのもの。もとの。④おおきい。⑤根本となる日。⑥王朝名。蒙古(モンゴル)属が南宋を滅ぼして国名を元と称した。⑦姓のひとつ。⑧中国の貨幣の単位。
日本語だけの意味
方程式の未知数。
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
意味がたくさんありますが、「元に」で関わるのは③「はじめ。もとのもの。もとの。」しかありませんね。他の意味では話が通りませんよね!
まずは、語源を見ておきましょう。
元は丸・円などと同源で、「丸い」というコアイメージがある。頭の形態的特徴による命名。元の意味はコアイメージからではなく、頭の人体における位置関係から、トップ(かしら)の意味、始めの意味、物事のもとの意味に展開。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
元の意味がストレートに書いてあります。次の3つですね。
- トップ(かしら)の意味
- 始めの意味
- 物事のもとの意味
次は、字源です。
元=「ー(あたま)+兀(人体)」。胴体の上にある頭を示した図形。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
こちらも明確ですね。頭とは、語源で出てきたトップ、始め、物事のもとを指しています!
基
「基」について、読み方と意味を見てみましょう
「基」の読み方と意味
基
画数 :11画
音訓:キ もと・もとい
意味
①建物の四角の土台。②物事が成立つための基盤となるもの。③それをよりどころとする。④刃の四角いすき。⑤姓の一つ。
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
意味が5つありますが、「基に」で関わるのは②「物事が成立つための基盤となるもの。」③「それをよりどころとする。」の2つかな。その他の意味は関係ないようです。
語源を見ておきましょう。
基は期・旗と同源。其のグループは箕(み)(穀物を振るってごみをふるい分ける道具)から発送された語で、「四角い」というコアイメージがある。建物は四角い土台で柱を支えている。また、たいてい四隅に土台を設置する。だから建物の基礎を基という。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
基は、建物の基礎のことを指しているわけですか。
最後に字源を見ておきましょう。
「基」=「其(四角い)+土(みる)」。其の最古の字は箕みを描いた図形(象形)。のち、箕の形に丌(台の形)を添えた字体に変わった。箕も台も形状が四角なので、其は「四角い」というイメージを示す記号となる。基は建物の四角い土台のこと。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
字源においても、明確に「建物の基礎」のことを指していますね。
その他の「もとに」
さて、「元に」と「基に」の違いを見てきましたが、その他にも「もとに」と書く言葉があります。
それは、「下に」と「本に」です。これらの意味と使い分けを見ていきましょう。
「下に」「本に」の意味
№ | もと | 意味 |
---|---|---|
1 | 下 | ①根元のところ。何かの下の・ところ(あたり) ②そのはたらき・支配力のおよぶところ。 ③(「の-に」の形で)…する(した)という状態で。…で。 |
2 | 本 | ①はえ出るものの(いちばん下の)太いだいじな部分。ねもと。つけね。 ②ものごとの中心になる、いちばんだいじにところ。根本。 ③和歌の上(カミ)の句。 |
参考:三省堂国語辞典
それぞれ上述の意味があります。
「下に」は、②の意味である「そのはたらき・支配力のおよぶところ」をベースに使用します。「本に」も、やはり②の意味である「ものごとの中心になる、いちばんだいじにところ。」を軸に、使用することになります。
「下に」「本に」の使用例
「下に」の使用例です。
- 法の下に平等
- ある条件の下で成立する
- 一撃の下に倒した
- 真実を白日の下にさらす
次は、「本に」の例です。
- その発言は何を本にしたものなのか
- 生活の本を正す
- 本を立つ必要がある
- 本を正せば、全てあなたが悪い
「本」を「もと」と読む場合、「元」とほぼ同義ですが、日常的には「元」の方がよく使われるようですね。
最後に
今回は、「元に」と「基に」の違いを見てきました。
調べてみると、「元に」には意味がたくさんありましたが、「基に」は「土台、基礎」という意味たったひとつでしたね。合わせて、使用例を載せましたので、その違いと共に、もう間違うことはないでしょう。
そして、漢字表記を調べてみたところ、その語源、字源から、見事に裏を取ることが出来ました。
今回も、意味や漢字を調べて、日本語はまだまだ面白いと感じた次第です。
引き続き、知識を増やしていきまっせ!
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