「思う」と「想う」の違いを語源を土台に掘り下げたら面白かった!
色々な記事を書いてきましたが、記事の中で割と頻繁に使用する表現に「思う」があります。
この「思う」なんですが「おもう」と発音しますよね。で、漢字表記はというと、「思う」一択ではないんですよ。
「想う」という表現が「変換」ボタンを押すとよく表示されます。
「想う」ですか、この文字は在職中でも、ほとんど使ったことはありませんな!
フーム、どんな時に、この「想う」を使うんでしょうか。想像の「想」ですよね。何となく「思う」とは違う感じはします。
今回は、この「思う」と「想う」について徹底的に掘り下げてみたいと思います。あ、また、「思」を使ってしまいました。
それでは、ご一緒に違いを見ていきましょう!
「思う」と「想う」の違いは?
まず、これらの違いは何か一言で表しますね!
「思う」と「想う」の違いは?
漢字表記 | 意味 |
---|---|
思う | 細やかに物をおもう。 |
想う | ある対象に向かって心でおもう。 |
「思う」と「想う」の違いは上記の通りです。もっと詳しく言うと、次のようになります。
- 思う:こまごまと考える。また、なつかんしんでおもう。細かく心をくだく。
- 想う:ある対象を心において求め考える。いろいろのイメージを考える。
「想う」の方が「思う」よりも、対象に対して強い思い入れがあるといっていいでしょう!
何故そうなのかは、それぞれの漢字表記と密接に関わりがあります。それぞれの漢字表記をベースに見ていきましょう。
「思」と「想」の漢字表記について
「思う」と「想う」の漢字表記について着目して、その内容を見てみましょう。
思
まず、「思」について、読み方と意味を見てみましょう
「思」の読み方と意味
思
画数 :9画
音訓:シ おもう (日本語のみ)おぼしい
意味
①こまごまと考える。また、なつかんしんでおもう。細かく心をくだく。②物おもいに沈んでいるさま。憂いを帯びているさま。③「相思」は、男女が恋愛すること。④語調を整えることば。句末にあるときは読まない。⑤姓のひとつ。
日本語だけの意味
おもい。こと。
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
意味が5つもありますが、今回の調査に関わるのは①の「こまごまと考える」です。
字源をみてみましょう。
思=「囟(シン・細い。細かい。)+心(心臓)」。
この形から、思は心臓が細々と働いて、思考を生む気を出し入れする状況を示す。この意匠によって、「細やかに物を思う」「細々と考える」の意味を表す。
また、思の文字は、細と同源で『「細かい」というイメージを示している。』です。上述した「細々と考える」に繋がるんですね。
想
「想」について、読み方と意味を見てみましょう
「想」の読み方と意味
想
画数 :13画
音訓:ソウ おもう
意味
①ある対象を心において求め考える。いろいろのイメージを考える。②「予想もしなかった」の意を示すこと。③考え。イメージ。④姓の一つ。
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
意味が4つありますが、①ある対象を心において求め考えるが、今回調べていることの答えになりますね!「心において求め考える」のですから、強い気持ちでいるのは間違いないですね!
語源を見ておきましょう。
「おもう」を意味する語に思・想・惟・意・懐・念などがあるが、それぞれイメージが異なる。想は相と同源。相はA(見る主体)とB(見られる客体)が向き合うというイメージ。想は思考する主体(人の心)が対象に向き合うこと、つまり象(すがた)や像(イメージ)をおもうことである。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
まさに、対象に向き合っていることを明確に示していますね!
字源はどうでしょうか?
「想」=「相(二つのものが向き合う)+心(こころ)」。相は「木(き)+目(め)」で、見る主体と見られる対象(客体)が向き合う情景。これは「二つのものが向き合う」というイメージである。想は思考の主体(心)が対象(姿・イメージ)と向き合う状況を示す。この意匠によって、姿やイメージを心に思い描くことを表す。
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
字源においても、明確に「見る主体が対象に対して姿やイメージを心に思い描くこと」を言っています。
さて、漢字表記で「思」「想」を見てきましたが、その違いが明確にわかりましたね。もう一度、記載しておきましょう。
- 思:細々と考える
- 想:見る主体が対象に対して姿やイメージを心に思い描くこと
今回は、国語辞典を見なかったんですが、どんな風に出ているか見ておきましょうか
国語辞典の「思う」「想う」
片っ端から辞書を見ていったんですが、「おもう」で見ていくと、表題に一緒に出てきてしまい、意味が複数あるんですが、どれを使用するのかわからないんですよ!
- 広辞苑:おも・う【思う・想う・憶う・念う】
- 大辞林:おも・う【思う・想う】
- 大辞泉:おも・う【思う・△想う・△憶う・△念う】おもふ
- 明鏡国語辞典:おもう【思う】[表記]に「《想う・〈惟う・《懐う・《意う」などとも書く。
- 三省堂国語辞典:おもう【思う】
- 光村国語学習辞典:おもう【思う】
広辞苑の「おもう」で拾った意味です。
①…の顔つきをする。…という顔をする。表情をする。
引用 広辞苑
②物事の条理・内容を分別するために心を働かす。判断する。思慮する。心に感ずる。
③もくろむ。ねがう。期待する。
④おしはかる。予想する。想像する。予期する。
⑤心に定める。決心する。
⑥心にかける。憂える。心配する。
⑦愛する。慕う。いつくしむ。大切にする。
⑧過去の事を思いおこす。思い出す。回想する。
⑥~⑧は「想う」が妥当なようですが・・・。
その他の「おもう」
さて、「思う」と「想う」の違いを見てきましたが、上記の国語辞書の中に、その他にも「おもう」と書く漢字がありました。
それは、「念う」「憶う」「懐う」「惟う」です。これらの意味を漢字表記に焦点を当てて見ていきましょう。
№ | もと | 意味 |
---|---|---|
1 | 念 | 心中深くおもう。 |
2 | 憶 | 口には出さず、あれこれとおもいをはせる。心中に深く思いをこめる |
3 | 懐 | 心の中におもいをいだく。心の中で大切に思い慕う。 |
4 | 惟 | 心をもっぱらある点にそそぐ。 |
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
それぞれ、「おもう」と読むわけですが、意味がそれぞれ異なりますね。
- 「念」は「ねんずる」などとも読み、「心中に祈る」という意味を持ち、一途に思いを込める意味を持ちます。
- 「憶」は、イメージ的に、昔の記憶に対して思いをはせる感じですね。
- 「懐」は、心中におもいを隠すイメージもあります。懐かしくおもうイメージです。
- 「惟」は、心をある一点に集中するイメージですね。
最後に
今回は、「思う」と「想う」の違いを見てきました。
今までは、国語辞典で意味を見てから、漢字表記を確認してきたんですが、今回は逆のやり方で違いを明らかにしました。
国語辞典では、「思う」と「想う」の使い方が明確に期されていなかったからです。
ただ、漢字表記を見てきたら、その語源、字源から明確に違いを知ることが出来て非常に良かったと思っています。
まだまだ、同じ発音で漢字が違う表現はたくさんあるので、この先も知識欲を旺盛にして調べまくっていきたいと考えています。
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