怖いの意味を由来も含めて追いかけた!方言だと変化するのが面白い
荒木飛呂彦の「岸部露伴は動かない」はおっかないですね。
今度、高橋一生主演で映画が公開されるんで、娘が「一緒に見に行こう」と言ってくるんですが、ちょっと怖そうな映画なので躊躇しています。
さて、ここで出てきた「おっかない」とか「怖そう」という言葉なんですが、この言葉の意味と由来が気になりました。
そうなると、その言葉の意味するところを調べずにはおられないのが60爺の特性ですので、いろいろと当たって調べてみましょう。
「怖い」の意味、その由来や、ライフワークとしている漢字表記なんかも調べられたらいいかなと思います。
これらの情報をシェアしますんで、ご一緒に見に行きましょう。
「怖い」の意味
始めに、「怖い」の意味を挙げましょう!
「怖い」の意味
「怖い」には、次の3つの意味がありました。
- それに近づくと危害を加えられそうで不安である。自分にとってよくないことが起こりそうで、近づきたくない。
- 悪い結果がでるのではないかと不安で避けたい気持ちである。
- 不思議な能力がありそうで、不気味である。
参考:大辞泉
怖いというのは、危害を加えられたり、良くないことが起こりそうな予感、気持ちなんですね。
何か良くないことが起きそうで避けたいという意味では、1番目も2番目も同じですね。
怖いモノからは遠ざかりたいですよね!
「怖い」の由来
「怖い」の意味が分かりましたが、その由来は何なのでしょうか?
「怖い」の由来
奈良時代末期に成立した「万葉集」に「強田(こはた)」という地名表記があることから、既に、上代※に「コハシ」という形容詞があったことが知られています。
「コハシ」の原義は「硬い」なんです。
そこから、「強い、強情だ」という意味になり、さらに、中世以降「恐ろしい」の意が現れて現代に至ったのです。
参考:暮らしのことば 新 語源辞典
※上代
引用 wiki 上代
上代(じょうだい)とは、日本史上の時代区分のひとつ。一般的には古代のうち平安時代前で日本の文献が残されている時代、すなわち飛鳥時代後期(白鳳時代)から奈良時代を指すが、単に奈良時代以前を指す場合もある。
奈良時代以前に、既に、「怖い」の前身となる言葉があったんですね。起源は、随分と古い時代に遡るんですな!
しかも、「コハシ」についてわかっているのは、以下のことだけのようです。
コハはヤハ(柔)に対するもので、コル(凝る。凝結する意)、コユ(凍ゆ。こごえるの意)、コホル(凍る)などとの関係が考えられているが、それ以上のことはわかっていない。
引用 暮らしのことば 新 語源辞典
「硬い」⇒「強い、強情」⇒「恐ろしい」と変化してきた由来をもつ「こわい」ですが、各地の方言を見ていくと、全く違う意味を持っていたりします。
次の章では、そんな方言の「こわい」を見ていきましょう。
方言の「こわい」
さて、方言の「こわい」には、どんな意味があるでしょうか?
北海道・東北地方
最初は、北海道弁の「こわい」です。
北海道弁の「こわい」の意味ですが、当然、「怖い」「恐い」という意味ではありません!
どんな時に使うのかというと、体調がすぐれない(「だるい」とか、「つらい」とか、「しんどい」場合)ときに使う言葉だそうです。
たとえば、「体がこわいと買い物に行くのもおっくうだ」なんて言い方をするそうですよ。
室町時代では、「骨が折れる」とか、「大儀だ」という意味で「こわい」が用いられていましたが、そこから派生し、疲れたという意味でのこわいが方言として残ったようです。
この「こわい」は東北地方でも使われているようです。
北関東
茨城県や群馬県では、「疲れた」という意味で「こわい」が使われます。しかも、それだけでなく、「固い」や「硬い」などの意味で用いられることもあるんですね。
この「固い」については、国語辞典に意味が載っていますよ。
こわ・い【▽強い】コハイ
引用 明鏡国語辞典
〘形〙
❶ 水分が少なくて堅いさま。「飯が━」
「こわい」に、「強い」を当てています。これって、上述した「怖い」の由来で、原義は「硬い」だと述べましたが、そこにつながるのではないでしょうか?
これらの「疲れた」「固い」の意味を会話の中で用いる場合の例を示します。
- 今日は、仕事がきつくてこわい
- 今日のご飯、こわい
1番目は、「今日は、仕事がきつくて疲れた」と言っているんですね。2番目は「今日のご飯は固い」と言っているわけです。
ですから、農家のおやじさんが「あー、こわいこわい」と言っているのは、「あー、疲れた疲れた」という意味であって、幽霊を見て怖がっているわけではないのです。
東海、関西地方
北関東で出た、「固い」や「硬い」などの意味で用いられる「こわい」は、東海地方や関西地方でも使われるようですね。
使い方は、北関東と同じで、「ご飯こわいね」や「今日のおこわ(赤飯)はこわいね」という言い方をするんです。
「こわい」の漢字表記
記事を終わる前に、「こわい」の漢字表記について見ておきましょう。
「こわい」で国語辞典を引くと、上記で見た意味に対する漢字表記は、大体、この「怖い」と「恐い」が併用されています。
パソコンで「こわい」と入力して「変換」キーを押すと、やはり「怖い」「恐い」が上位で変換されますね。
どちらの表記が正しいのでしょうか?
「怖い」「恐い」どちらが正しい?
「怖い」「恐い」どちらも正しい。
ただ、「恐い」は常用漢字ではないので、公文書では「怖い」を使用する!
どちらを使うか迷ったら「怖い」を使う。
そうなんです。「恐い」は常用漢字ではないので、公文書では「怖い」を使わねばなりません。
ですから、どちらを使うか迷ったら、「怖い」を使っておけば問題ないでしょう。
最後に
「怖い」について、意味から入り、由来と方言を見てきました。
「怖い」の意味は、何か良くないことが起こりそうというのは良くわかります。とにかく、怖いモノは見たくないですもんね。
由来は、「コハシ」=「硬い」⇒「強い、強情だ」⇒中世以降「恐ろしい」の意が現れて、現代に至ったんですね。最初は「硬い」から始まったとは驚きですな。
こういう「こわい」ですが、方言には別の意味がありましたね。方言の意には、由来で見た「硬い」につながる意味を持っていたのも新たな発見でした。
漢字表記は2種類ありましたが、常用漢字を覚えておけば怖いもの知らずですよ!最後の方言も、いろいろあって面白かったですね。
※気づけば、「言葉の意味」の記事も増えてきています
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