木へんに鬼と書いて槐!意味・読み方から名前での使われ方まで総特集
前回、草冠に鬼の蒐という漢字について記事をアップしました。
この漢字の場合、鬼は「亡霊」「屍者」という意(ちょっと怖い)だったんですが、それにめげずに、シリーズ化している木へんの漢字「木へんに鬼」があるか確認しました。
槐という漢字は存在します!
さて、木へんにつく「鬼」は、草冠に鬼の時のように、怖い意味を持っているんでしょうか?
それでは、木へんに鬼の「槐」について、意味・読み方から名前での使い方まで総特集したいと思います。
どうぞ、ご一緒に内容を見に参りましょうか。
木へんに鬼といえば槐!漢字の読み方や全体像をまずはチェック
最初に、槐の意味と読み方を明確にしましょう。
槐の読み方と意味
槐
画数 :14画
音訓:カイ えんじゅ(日本語だけ)えにす えんじ さいかち
意味
①えんじゅ。木の名。マメ科エンジュ属の落葉高木。初夏、蝶の形をした黄色の花が咲く。果実は長いさや状。材は器具用、花は黄色の染料用・薬用。エンジュ。②三公。また、三公の位。③姓の一つ。
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
読みは、音読みは「カイ」、訓読みは「えんじゅ」です。日本語だけの訓読みで「えにす」「えんじ」「さいかち」の3種類がありますね。
意味の②のいわれですが、周代に、朝廷の庭に3本の槐を植え、三公がそれに向かって座ったという故事の基づきます。格式の高い木とされていたんです。
日本語だけの訓読みですが、ぱっと見、何のことだかわからない。そこで、辞書を引いてみました。
「えにす」は、「エンジュの古名」(広辞苑)と出ていました。エンジュという名は、イヌエンジュの古名「エニス(恵爾須)」が転訛したものとされます。
「えんじ」は何なんだろ?広辞苑で、「えんじ」をひいたんですが、それらしいのは次の意味位しか見つからないです。
①(古代中国の燕の地に産したという)ベニバナから製したべに。
引用 広辞苑
②生臙脂(しょうえんじ)。〈日葡辞書〉
③紫と赤とを混ぜたえのぐ。
どうも、槐とは似ても似つかない意ばかりですよね!
最後の「さいかち」は下記の通りです。
さいかち【皂莢】
引用 広辞苑
①マメ科の落葉高木。高さ3〜5メートル。山野・河原などに自生。栽培もされる。茎・枝に多数のとげがあり、葉は複葉。夏、緑黄色で4弁の細かい花を開く。秋、長さ30センチメートル余の莢さやを垂下する。果実は、サポニンを含み洗濯用、また漢方生薬の皂角子そうかくしとして解毒・潤和剤。若芽は食用。材は器具材・細工物などとする。〈[季]秋〉
槐とさいかちは、違う植物を指していますね。槐はマメ科エンジュ属の落葉高木ですが、さいかちは、同じマメ科ですが、マメ科サイカチ属なんです。
日本語だけの訓読みとして、漢字源に、なぜ「さいかち」が入ってきたのか?よくわかりませんでした。
次は、槐の書き順を見てみましょうか。
この漢字の書き順は、それほど難しくありません。木へんを書いてから鬼を書きます。
鬼の書き順については、上記書き順を見てを間違えないようにしましょう。
もっと詳しく知ろう!槐の漢字としての由来や成り立ち
槐の漢字としての由来と成り立ちを知っておきましょう。
漢字源に解字が出ています。
【解字】
引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
槐=「鬼(まるい)」+「木(き)」(形声※)。さやの中に数珠のような丸い種子が連なる木。
形声※
形声とは、漢字の六書(リクショ)の一つ。発音を表す文字と、意味を表す文字とを組み合わせて、新しい文字を作る方法。
漢字の「鬼」なんですが、字源に「甲骨文字・金文は丸くて大きな頭をした人を描いた図形(象形)」とあり、篆分ではムを添えて鬼になったとあります。ムは云の下部で、云は「もやもやと漂う」というイメージを添える符号です。
死者の魂(亡霊)を鬼といい、「丸い」「丸く大きい」というイメージを示す記号だそうです。
槐ってどんな植物?
槐は、どんな植物なのでしょうか。
上記右の写真は、槐の実ですが、解字で言っていた通りの丸い実がなっているのがわかります。それでは、花言葉と、形態・生態を見ていきましょう。
花言葉
槐の花言葉を以下に示します。
- 上品
- 幸福
この由来ですが、「上品」は、枝の茂り方や白く美しい花を咲かせる姿から来たそうです。また、「幸福」は、槐が幸福を呼ぶ縁起のよい木とされ、中国では、出世すると庭に植える風習があったことからです。
形態・生態
中国原産で、古くから台湾、日本、韓国などで植栽されています。日本へは8世紀には渡来していたとみられます。
槐は、古くから街路樹や薬用で用いられているようですね。
・街路樹・庭園木:日本をはじめ、中国や韓国でも街路樹として珍重されている。公園や庭園にも植えられている。・・・日本では中国での「縁起の良い木」とされるゆえんから、庭木として鬼門の方角や玄関先に植えることがある。
引用 wiki エンジュ
・薬用:花を乾燥させたものは、槐花(かいか)、蕾を乾燥させたものが槐花米(かいかべい)または槐米(かいべい)という生薬で、止血作用がある。莢を乾燥して生薬にしたものは槐角(かいかく)と称し、止血剤や高血圧に用いられる。花、蕾は6 – 8月、果実は8 – 9月に採集して天日乾燥して調製される。
・・・
・木材:木質は堅硬で、中国では馬車や荷車、造船にも用いられる重要な木材であった。日本では釿(ちょうな)の柄として用いられる。
以上、槐の漢字の読み方と意味、由来や成り立ち、そして、どんな植物なのかを見てきました。
次の章では名前に使う場合のポイントを述べています。
名前に使われる際のポイントは
どうやら、「槐」は名前には使用できない漢字ですね。もし、使えるにしても、「蒐」(人名漢字でした)と同様、漢字の中に「鬼」が入っているので名前にしようと思う方は少ないでしょう。
そこで、名前は断念して「槐」の付く苗字を見てみましょう。
まずは、「槐」一文字の名字があるか確認します。今回は、「蒐」と違って存在することがわかりました。
それでは、蒐に別の漢字を付けた名字を捜してみましょう。
色々見てみたんですが、「蒐場」しか見つかりませんでした!(以前、日へんに華の「曄」の名字を調べた際、「曄道(てるみち)」以外に名字が見つからない状況と同じです)
苗字由来netで検索した結果です。
【名字】槐
【読み】えんじ、さいかち、えんじゅ、かい
【全国順位】 11,075位
【全国人数】 およそ610人
参考資料 名字由来net
読みが4種類もあります。その中に、日本語だけの訓読みで出てきた、「えんじ」「さいかち」が入っています。ひょっとして、これが訓読みにあった理由なんでしょうか?
それでは、槐さんが都道府県別にどれだかいるか見てみましょう。
都道府県 | 人数 |
---|---|
茨城県 | およそ230人 |
東京都 | およそ150人 |
栃木県 | およそ110人 |
神奈川県 | およそ40人 |
埼玉県 | およそ40人 |
参考資料 名字由来net
おお、関東地方ばっかりじゃないですか。しかも、この5都県で570人も!そうなると、残りの42道府県で40人しかいないということになりますな!
次に、「槐」に別のか字をつけた名字を挙げてみますね。
- 槐原(えずはら)【全国順位】 65,697位 【全国人数】 およそ20人
- 槐島(げじま、きじま)【全国順位】 19,249位 【全国人数】 およそ240人
驚いたことに2つしか見つけられませんでした。しかも、見つかった2つとも読みが変わってますね。「槐原」では「えず」、「槐島」では「げ」「き」と読ませています。
さらにさらに、「槐原」は全国でたったの20人ですよ!これ、今までの最小記録でっせ!
他の部首に鬼
他の部首に「鬼」を付けた漢字があるのか見ていきましょう。
漢字 | 部首 | 音読み | 訓読み | 意味 |
---|---|---|---|---|
傀 | にんべん | カイ | おお・きい くぐつ | ①おおきい。目立っておおきい。立派。②もののけ。わざわい。あやしい。奇怪。③くぐつ。でく。あやつり人形。からくり人形。 |
塊 | つちへん | カイ | かたまり | ①つちくれ。ひとかたまりの土。②かたまり。ひとつにかたまったもの。③ひとりぼっち。孤独。孤立。 |
蒐 | くさかんむり | シュウ | あかね あつ・める かく・す さが・す かり | ①あかね。あかねぐさ。アカネ科の多年草。赤色の染料に用いられる。②あつめる。③狩り。春の狩り。狩猟。④しらべる。数える。 |
嵬 | やまへん | カイ ガイ ギ | おお・きい たか・い | ①たかい。おおきい。山が高く大きいさま。②けわしい。険しい山。③あやしい。奇怪。 |
愧 | りっしんべん | キ | はじ は・じる | はじる。はじ。恥ずかしく思う。 |
隗 | こざとへん | カイ | けわ・しい | けわしい。たかい。高くけわしい。 |
魂 | きにょう | コン | たましい たま | ①たましい。たま。体の中に宿り、精神をつかさどる精気。②こころ。思い。気持ち。精神。 |
槐 | きへん | カイ | えんじゅ | ①えんじゅ。マメ科の落葉高木。②三公。三公の位。周の時代、朝廷の庭に植えた三本のえんじゅで、三公の位置を示したことから。 |
瑰 | おうへん | カイ | おお・きい すぐ・れる めずら・しい | ①おおきい。すぐれる。めずらしい。美しい。②美しい玉。丸くて形の良い玉。③玉の名。 |
参考:「鬼」を構成に含む漢字
この記事の主題である「槐」も含む9つの漢字が対象となりました。部首の「きにょう」(魅、魁などの文字)を入れると膨大な数になるので、「魂」のみ表に入れてあります。
また、「環境依存文字(=機種依存文字)」(たとえば、さんずいに鬼など)は一覧表から外してあります。
機種依存文字とは、電子的に扱う文字データのうち、利用するパソコンやスマートフォン等の環境によって文字化けや全く表示できなくなるものをいいます。
引用 機種依存文字について
上記の漢字のうち、「草冠に鬼の蒐」で過去に記事を書いています。
この漢字は、一覧にあるように訓読みがたくさんあります。合わせて、その数だけ意味を持ってます。漢字の成り立ちも変わってますよ。
その他、蒐の書き順、名付けでのポイントなども解説していますので、以下の記事をご覧ください。
最後に
木へんに鬼の槐について見てきました。
読み方は、音読み「カイ」、訓読みが「えんじゅ」とひとつずつありましたね。日本語だけの訓読みが3つあったんですが、余り馴染みのない言葉が並んでおり、うち、2つは何を指しているのか、明確にわかりませんでしたね。
解字では、意外にも「鬼」が「丸い」という意で、「蒐」の意とは全く異なっておりました!ちょっとビックリしました。
名付けにおいては人名漢字柄はなく、名字を見に行きましたが、あまり見つかりませんでした。読みも、偉く変わっていましたな~!
※気づけば木へんの記事も増えてきました
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