後ろめたいとはどんな気持ち?その意味や語源などを分かりやすく解説
小説の中には、「後ろめたい」という言葉がたくさん出てきます。お話を続けていくのに、登場人物の心情を表すのに便利だからでしょうか。
そいう私も、後ろめたいなと思ったことはあります。
さて、この後ろめたいというのは、どんな気持ちなんでしょうか。いざ、こういう気持ちだよといい表すのは、簡単ではないですね。
今回は、この後ろめたいというのはどんな気持ちなのかを、辞書を使って調べてみます。合わせて、語源を明らかにしていきますね。後ろ○○という言葉や例文なども挙げていきます。
是非、ご一緒にご覧になってくださいますよう、お願いします。
後ろめたいとはどんな気持ち?
「後ろめたい」とは、どんな気持ちなのでしょうか。
後ろめたいとはどんな気持ち?
まず、後ろめたいを辞書で引いてみます。
うしろ‐めた・い【後ろめたい】
引用 広辞苑
①あとの事が気にかかる。こころもとない。古今和歌集秋「をみなへし―・くも見ゆるかな」
②やましいところがあるので気がひける。「前にも迷惑をかけているので頼むのが―・い」
広辞苑では、二つの意味が出てきました。
我々が使う「後ろめたい」は②の意味ですね。自分が悪いことをした意識があって、良心の呵責に苛まれる感覚です。
元々の意味は、①だったのですが、これが転じて②の意味を持つようになったようです。詳細は、次の語源の章にあります。
「後ろめたい」の語源
この「後ろめたい」という言葉の意味ですが、次のように変わっていったと考えられています。
後ろめたいの意味の変遷
自分以外の人の将来を気にかけて不安に思う気持ち
事の成り行きを心もとなく思う気持ち
■古今和歌集に見られるので、平安時代の初め(延喜五年=九〇五年)には使われていたことがわかります(古今和歌集秋「をみなへし―・くも見ゆるかな」)
⇓
相手が何を考えているかわからず、気が許せない
■平家物語に見られるので、鎌倉時代前期には使われていたようです(これほど―・う思はれ参らせては,世にあつては何かはし候ふべき/平家 2)
⇓
人の視線を気にしておどおどするような自身のやましさをいう
■増鏡に見られるので、戦国時代(確実な上限は元弘3年(1333年)6月で、確実な下限は天授2年/永和2年(1376年)4月)には使われていたようです(増鏡‐二「君の御為にうしろめたき心やはある」)
一番上の「事の成り行きを心もとなく思う」というのは、上述「後ろめたい」を辞書で引いた時の①の意味ですね。この時はやましい気持ちを含まなかったですね。随分と、意味が変わるもんなんですな^^;
次に「後ろめたい」の語構成を見ていきます。
後ろめたい=「後ろ+目+いたし」と考えられますが、「後ろ」及び「いたし」の解釈に諸説があるようです。
- 後ろ目痛し 後ろから見て心が痛む
- 後ろ目痛し 後(のち)のことを考えて心が痛む
- 後ろ目甚(いた)し(はなはだしい) 後ろを見たくて仕方がない
1,2番は同じ表記ですが、上記に示したように「後ろ」の解釈が異なり、それに従って意味が違っています。3番は「いたし」を「甚し」と考えた説ですね。
どの説が正しいかは確定できていないそうです。
ただ、上記で示した「後ろめたいの意味の変遷」にある「人の視線を感じておどおどする」イメージからすると、1番の説が正しいような気もします。
参考:暮らしのことば新語源辞典、広辞苑、大辞林、日本国語大辞典
「後ろ」の付く形容詞
「後ろ」の付く形容詞ですが、「後ろめたい」の他に何があるのかみてみました。
形容詞 | 読み | 意味 |
---|---|---|
後ろ暗い | うしろぐらい | ①あとの事が心にかかって安心できない。気がかりだ。②内心やましい点を持っている。うしろめたい。 |
後ろ汚い | うしろぎたない | いさぎよくない。卑劣だ。 |
後ろめたなし | うしろめたなし | 《「なし」は意味を強める接尾語》「うしろめたい」に同じ。 |
後ろ安し | うしろやすし | (1)あとのことの心配がない。心残りがない。(2)気遣いがないさま。隠しだてがない。信頼がおける。 |
参考:広辞苑、大辞泉
4つの形容詞が出てきました。「後ろ暗い」は聞いたことがあるような気がします。その他の言葉は初耳ですな。皆さんはいかがでしょうか?
「後ろ汚い」を除いて、意味は「後ろめたい」に似た感じですね。
次の章では、「後ろめたい」の類語を見てみたいと思います。
「後ろめたい」の類語
「後ろめたい」の類語を思いつくまま挙げてみました。
類語 | 意味 |
---|---|
疚しい(やましい) | ①病気の感じである。気分がすぐれない。②あせり・不満・腹立たしさなどを感ずる。心中おだやかでない。じれったい。③良心に恥じるところがある。うしろめたい。 |
気が咎める(きがとがめる ) | 自分の気持にやましさを感じる。気が差す。 |
気が差す(きがさす) | 心にひっかかることがあって、素通りできない。うしろめたい感じになる。 |
気に病む(きにやむ) | くよくよと思い悩む。 |
後ろ暗い(うしろぐらい) | ①あとの事が心にかかって安心できない。気がかりだ。②内心やましい点を持っている。うしろめたい。 |
脛に疵持つ(すねにきずもつ) | 隠した悪事がある。やましいことがある。うしろぐらいことがある。 |
不面目(ふめんぼく) | 面目をけがすこと。人に顔向けできないさま。ふめんもく。 |
参考:広辞苑
日本語はスゴイ!「後ろめたい」の類語がたくさん挙げることが出来ました。
さすがに、ここに上がった言葉は、ほとんど聞いたことがありますね。
「気が差す」という言葉については初耳かもしれません。この言葉、意味の中に、「うしろめたい感じになる。」というのがりますね。まさに類語じゃないですか。
「後ろ暗い」は、先程の「後ろ」の付く形容詞にも挙がっていた言葉です。これにも、「うしろめたい。」という意味があります。
「気に病む」と「不面目」には、直接、「うしろめたい」という意味は上がっていませんが、他の言葉は、意味の中に「うしろめたい」があるか、似た表現が入っていますよ。
「後ろめたい」を使った例文
「後ろめたい」が使われる場面は、自分に悪い点があって疚しい気持ちを表現する時ですね。
いくつか例文を挙げます。
- 仕事だと偽って麻雀に参加したので、妻に対して、後ろめたい気持ちがある。
- 人に言えない後ろめたい過去があるが、目を背けず向き合って生きていきたい。
- 結局、あの発言が元で親友を裏切った形になってしまい後ろめたい。
- その集まりで特別扱いされるのは後ろめたいので、皆と同じように扱ってくれるよう依頼した。
- いつまでも親の脛をかじって生活をしている兄は、後ろめたい思いがないのだろうか?
5つ例文を載せました。1-3までは、自分のやった行為が元で疚しい気持ちがあることを表現しています。
3は、特別扱いされることが後ろめたさにつながることを述べています。
最後の例文は、自分ではなく、兄が疚しさを感じないのかということを言っています。
最後に
後ろめたいとはどんな気持ちなのかを見てきました。
自分がやった行為が元で、疚しいというか、良心の呵責に悩んでいる気持ちですね。当初は、事の成り行きを心もとなく思う気持ちだったものが、長い時間をかけて変わってきたんですね。
語構成は、後ろめたい=「後ろ+目+いたし」と考えられ、3つの説があることを示しました。
類語や例文も見てきましたが、かなり勉強になりました。
これからも、いろいろな言葉の由来を見ていきたいと思います。
※気づけば、「言葉の意味」の記事も増えてきています
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