「ぎこちない」の意味・語源を総特集!類語に関しても詳しく解説
先日、草サッカーの試合を見ていたら、チームの監督であろう方が、「あいつ、今日はぎこちないなー」みたいなことをポツリと一言。
選手の誰かに対して言った言葉でしょうが、この中の「ぎこちない」という表現がセンサーに反応しました。
この「ぎこちない」ですが、いろいろなシーンで使われていますよね。
そこで、この「ぎこちない」について、意味と語源を総特集しちゃいます!合わせて、類語に関しても解説してみますので、乞うご期待!
それでは、その内容ご一緒にみにいきましょう。
「ぎこちない」の意味と語源
初めに、「ぎこちない」の意味を出した後、語源を見ていきますね。
「ぎこちない」の意味
「ぎこちない」の意味を辞書から引いてきました!
「ぎこちない」の意味
いくつかの辞書を見たんですが、新たな発見をしてしまいました。なんと、広辞苑には「ぎこちない」がないんですよ。しかし、「ぎごちない」が載っていました!
ぎごち‐な・い
引用 広辞苑
〔形〕[文]ぎごちな・し(ク)
(ギコチナイとも。「ぎこつなし」の転)
①無骨ぶこつで洗練されていない。動作などがなめらかでなく、不自然である。「―・い挨拶」
②(着物などが)体にうまく合わなくて、ぐあいが悪い。「―・い着付け」
学研国語大辞典も同様です。「ぎこちない」がないんですが、「ぎごちない」が載っています。
大辞林、大辞泉、日本国語大辞典、明鏡国語辞典は、その逆で、「ぎこちない」があって、「ぎごちない」が載っていないんです。
ぎこち‐な・い
引用 大辞泉
[形][文]ぎこちな・し[ク]《「ぎこつなし」の音変化。「ぎごちない」とも》(1)動作や話し方などが滑らかでない。「―・い運転」「―・くあいさつをする」(2)からだに合わなくて、ぐあいが悪い。「薄綿もめん蒲団(ふとん)のたださえ―・いに」〈緑雨・おぼろ夜〉
広辞苑と大辞泉で言っている意味は全く一緒です。
即ち、「ぎこちない」の意味は次の2つです。
- 動作などがなめらかでなく、不自然である。
- 体にうまく合わなくて、ぐあいが悪い。
1は、動作が不自然であるという意味で、冒頭で出した例の意ですね。2は、着物が身体に合わないことを言ってます。こっちの意は知らんかったですな~。
さて、「ぎこちない」と「ぎごちない」の件ですが・・・。
NHKアナウンサーのことばの拠り所である『NHKことばのハンドブック』では次のようになっています。
- 1992年(平成4年)「ぎごちない」が第1の読みなのである。第2の読みとして「ぎこちない」
- 2005年(平成17年)「ぎこちない」が第1の読み、「ぎごちない」が第2の読み
これを見ると、わずか10数年の間に「ぎこちない」派が優勢になったことがわかります。
1992年時点では、「ぎごちない」がメインだったんですね。60爺は、濁る方は聞いたことがありませんでした。
「ぎこちない」で検索した際に、「ぎごちない」との違いを言う記事をいくつか見たんですが、何かの間違いだろうと思ってたんですよ!知らないことが多いですなア!
まあ、現時点では、「ぎこちない」が主流になっているとのことで一安心です。
「ぎこちない」の語源
次に、「ぎこちない」の語源を見ていきます。
「ぎこちない」の語源
- 中古※
- コチナシ=コチ(「骨」の呉音)+ナシ(形容詞を作る接尾語)
コチゴチシ(骨々し)=無作法←骨のようにゴツゴツしている
コチナシ=無作法←骨のようだ
- 中古※
- ■コチナシ(無作法)+漢語「気骨」 ?未詳
- 中世※
- ■キゴツナシ ?正体不明
- 近世※以降
- ■キゴツナシ(ギコツナシ、ギゴヅナシ):無作法
- 現在
- ■ぎこちない(ごごちない)
コチナシは、「骨」の呉音であるコチに形容詞を作る接尾語ナシが付いたモノです。
コチゴチシ(骨々し)という言葉があって、「骨のようにゴツゴツしている」の意から「無作法だ」の意になったと考えらます。
同様に、コチナシも「骨のようだ」の意から「無作法だ」に展開したと思われます。
この「コチナシ」(無作法)と漢語「気骨」あたりが混合したものが「キゴツナシ」になったと考えられますが、はっきりしていません。また、この「キゴツナシ」という言葉は中世から見えますが、その正体はわかっていないんです。
近世以降に使われた「無作法だ」という意味のキゴツナシが変化したのが「ぎこちない」です。
参考:暮らしのことば新語源辞典 ぎこちない
「ぎこちない」の語源は、江戸時代まではわかっているんですが、それ以前は未だはっきりしないようです。
※中古、中世、近世
上代 | 奈良時代とそれ以前 |
中古 | 平安時代 |
中世前期 | 院政・鎌倉時代 |
中世後期 | 室町時代 |
近世前期 | 江戸時代前期 |
近世後期 | 江戸時代後期 |
現代 | 明治以降 |
ぎこちないの類語
「ぎこちない」の類語について、どんな言葉があるか一覧にしてみました。
類語 | 意味 |
---|---|
スムーズでない | 動きが滑らかでない。 |
滑らかでない | スムーズでない、すんなりいかない。 |
板につかない | 動作がしっくりしていない。 |
不自然 | 自然でないこと。わざとらしいこと。 |
たどたどしい | 動作・話し方などがなめらかでないさま。 |
ぎくしゃく | 動作が滑らかでないさま。 |
ぎくぎく | 言語・動作の円滑でないさま。ぎくしゃく。 |
どろくさい | 土くさい。洗練されていない。やぼである。 |
やぼ | 洗練されていないこと。風雅な心のないこと。無風流。 |
ぶこつ | ごつごつしていて、洗練されていないこと。 |
10ほど挙げてみました。
基本的に、主に、動作が滑らかでないという意味の言葉です。「どろくさい」以降は「洗練されていない」という意味で挙がりました。
「ぎこちない」の類語に、「下手」や「拙い」を含む方がいますが、滑らかなでないこととはイコールでないと感じます。
記事を終わる前に、「ぎこちない」を使用した例文を挙げておきます。
「ぎこちない」を使った例文
「ぎこちない」には2つの意味があったので、それに対応した例文を挙げて見たいと考えました。まず、その意味を再掲します。
- 動作などがなめらかでなく、不自然である。
- 体にうまく合わなくて、ぐあいが悪い。
上記の意味に、それぞれに対応した例文を挙げてみます。
- 彼女は、あまりの緊張で、いつものプレーには程遠いぎこちない動きをしていた。
- 新入社員たちは、新品のスーツをぎこちなく着てかしこまっていた。
1番の彼女は、緊張が激しいせいでしょうか、いつも彼女がやっているいるプレーには程遠い、滑らかでない動きをしているんですね。
2番の例文は、入社式に臨んだ新入社員たちの姿を描写したものです。着慣れない新品のスーツを着ているんですが、余りにあっているとは言えないようです。
以上、簡単に解説しました。
最後に
「ぎこちない」について見てきました。
今回、一番驚いたのは、「ぎごちない」が昔は主流だったということです。私は、産まれてからこれまで、「ごこちない」しか知りませんでしたが、濁る方は、今回の調査で初めて知ったんですよ!
また、意味に「着物が合わないこと」とあるのも初耳でございました。今回の調査では、様々な勉強が出来て良かったです!
語源も、何かよくわからないカタカナから始まったんですね。しかも、古い時代のことは未解明だということでしたね。
新たな勉強になるので、また、違う言葉を探す旅に出かけます。
※気づけば、「言葉の意味」の記事も増えてきています
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