いかがわしいとは?その意味・語源をグッと掘り下げたら面白かった
以前読んでいた小説で、主人公が、「いかがわしい場所に出入りするのはやめたほうがいい」と年若い友人に対してアドバイスしているシーンがありました。
このセリフの「いかがわしい」という言葉にピーンときました。
この「いかがわしい」ですが、聞いただけで落ち着かなくなるような響きを持っていると思いませんか。何かまともじゃない感じがしますよね!
そこで、この「いかがわしい」について、その意味と語源をグッと掘り下げてみました!そうしたら、起源からして偉く古くて大変面白かったんですよ。
その内容をシェアしますんで、ご一緒にみていってくださいませ~。
「いかがわしい」の意味と語源
まずは、「いかがわしい」の意味をみてから、語源の解説をします。
「いかがわしい」の意味
「いかがわしい」の意味を辞書から引いてきました!
「いかがわしい」の意味
広辞苑に出ている意味を引用します。
いかが‐わし・い【如何わしい】‥ハシイ
引用 広辞苑
〔形〕[文]いかがは・し(シク)
①正体がはっきりしない。疑わしい。怪しい。信用ができない。「―・い人物」
②風紀上よろしくない。好ましくない。「―・い絵」
「いかがわしい」の意味は上記に示す通りです。
この表現はあまり使いませんが、何となく怪しい、ちょっとまずい感じを受けます。
いかがわしいの意味が分かったところで、その語源を見に行きましょう。
「いかがわしい」の語源
次に、「いかがわしい」の語源を見ていきます。
「いかがわしい」の語源
■疑いの気持ちを示す「イカ」という語があった。
(万葉集「いかばかり、恋しくありけむ」)
⇩
■イカニ(如何に)
(疑問の副詞が成立)
⇩
(助詞の「カ」が付加)
■イカニカ
(万葉集「うちなびく 春の柳と 我が屋戸の 梅の花とを いかにか分かむ」)
⇩
(音便化※1)
■イカンガ
上代※
⇩
(音便化※1)
■イカガ(如何)
中古※初期
⇩
(形容詞化)
■イカガシ
(ウタガワシなどの語形に引かれて)
■イカガワシ
近世※
参考:暮らしのことば新語源辞典 いかがわしい
元々の語源は、上代にあった『疑いの気持ちを示す「イカ」』なんですね。この語が、「イカニ」→「イカニカ」と変化していきます。
「イカニカ」が音便化※1して「イカンガ」→「イカガ」と変化するわけです。
音便※1
ある単語の一部の音が、もとの音とはちがった発音に変化すること。イ音便・ウ音便・撥音便・促音便の四つの音便がある。
この「イカガ」は、現代語の「ご機嫌いかがですか」につながっています!
そして、この「イカガ」が形容詞化して「イカガシ」になり、「ウタガワシ」などの語形に引かれて「イカガワシ」が誕生したんです。
【おまけ】
現代語の「いかさま」(いんちきの意)は、上記「イカ」に「サマ」がついた「如何様」から。
「如何様」は本来「どんな様子か」という疑問の表現から「いかにもそれらしい」の意になり、さらに「いんちき」の意になったそうです。
「ぎこちない」の語源は、江戸時代まではわかっているんですが、それ以前は未だはっきりしないようです。
※上代、中古
上代 | 奈良時代とそれ以前 |
中古 | 平安時代 |
中世前期 | 院政・鎌倉時代 |
中世後期 | 室町時代 |
近世前期 | 江戸時代前期 |
近世後期 | 江戸時代後期 |
現代 | 明治以降 |
いかがわしいの類語
「いかがわしい」の類語について、どんな言葉があるか一覧にしてみました。
類語 | 意味 |
---|---|
疑わしい | ①本当かどうかわからない。②おぼつかない。不確実だ。③あやしい。不審である。 |
怪しい | いぶかしい。疑わしい。えたいが知れない。不気味である。 |
いぶかしい | 不審に思われる。うたがわしい。 |
うさんくさい | どことなく疑わしい。何となく怪しい。 |
うろん | 疑わしいこと。うさんくさいこと。 |
不審 | うたがわしいこと。 |
うさんらしい | うさんくさい。怪しげである。 |
みだりがましい | 規律・礼儀・風紀などが乱れている。 |
不道徳 | 道徳に反していること。また、そのさま。 |
風紀紊乱 | 社会生活上守るべき道徳・秩序が乱れること。また、乱すこと。 |
参考:広辞苑
10ほど挙げてみました。
基本的に、トップから「うさんらしい」までは、「いかがわしい」の意味の①の類語、以降は意味の②の類語ですね。
こうやってみると、「いかがわしい」の意味①を言い換えると、どんぴしゃりの「怪しい」の他に、いろいろな表現があることがわかります。
それは、意味②でも同様です。もっと、直接的な表現もたくさんあるんですが、敢えて割愛しました。
いやいや、日本語って類語をたくさん持っていますよね。だから、日本語は難しいなんて言われちゃうんですね。
記事を終わる前に、「いかがわしい」を使用した例文を挙げておきます。
「いかがわしい」を使った例文
「いかがわしい」には2つの意味があったので、それに対応した例文を挙げて見たいと考えました。まず、その意味を再掲します。
- 動正体がはっきりしない。疑わしい。怪しい。信用ができない。
- 風紀上よろしくない。好ましくない。
上記の意味に、それぞれに対応した例文を挙げてみます。
- 彼は、簡単に儲けようと、敢えて、いかがわしい取引に手を出してしまった。
- あそこは、いかがわしい店だから、ずっと当局に目を付けられていたんですよ。
1番の彼は、簡単に儲けようとして、怪しいとわかっていて、その取引に手を出したわけです。結果は、しれてますよね!
2番の例文は、あそこにある店は、風紀が乱れていることが前々からわかっていて、当局に目を付けられていたんですな。
以上、簡単に解説しました。
最後に
「いかがわしい」について見てきました。
この言葉には、発音からして怪しい雰囲気ですよね!
意味は二つあって、「怪しい」と「風紀の乱れ」でした!
語源は、疑いの気持ちの「イカ」から始まりました。長い年月をかけて、「イカニ」「イカニカ」「イカンガ」「イカガ」「イカガシ」「イカガワシ」となって「いかがわしい」に変化したんですな。
いやいや、勉強になりました~。
※気づけば、「言葉の意味」の記事も増えてきています
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません