スーツの昔の言い方を知っていますか?その語源及び違いを総特集
今年はコロナ禍も収まって来て、4月には入社式が行われたというニュースが大きく報道されましたね。
新入社員も皆、晴れやかな顔をして入社式に臨んでおりました。
そして、新入社員は新しいスーツに身を包み、新しい門出を迎えたわけです。
さて、このスーツなんですが、昔は別の言い方をしていたんですよ。知っていますか。
私の頃は、スーツなどという横文字はないですよ!今、この言葉を使っているのは爺(じじい)もとい年配の人間だけですかね!
2015年の調査で「スーツ」を主に使うという人が70%弱にまで達していたので、現在では、その数字はもっと上がっていると思います。
この記事では、スーツの昔の言い方をご紹介すると共に、その言葉の語源・スーツとの違いを総特集します。
ご一緒にご覧になってください。
スーツの昔の言い方
スーツの昔の言い方です。
背広(せびろ)
カラーに切れ込みが入った深いV字ゾーンの襟を持つ、腰丈まである男性用の上着のことを指します。前立ては、シングルとダブルがあります。
この「背広」という言葉を聞いたことがありますか?若い方は初耳ではないでしょうか?
広辞苑で「背広」を引いてみましょう。
セビロ【背広】
引用 広辞苑
①テーラード‐カラーで腰丈までの男性用上着。前打合せにはシングルとダブルとがある。サックコート。
②1の上着とズボン、または上着・ズボン・チョッキから成るスーツ。
最初の説明でも太字にしましたが、要注意点は「男性用上着」となっていることです!
この点がちょっと気になったので、他の辞書を引いて確認してみました。
- 大辞林:男子が平服として用いる洋服
- 大辞泉:男性の平常着
- 日本国語大辞典:男子の平常用洋服
- 明鏡国語辞典:男性の平常服
おおお、どの辞書でも、男子・男性用と出ていますね!
スーツの前身である「背広」と言われていた時代は、男専用の上着だったんですねえ!
背広の語源
次に、背広の語源を見ていきましょう。
実は、背広の語源は未詳なんです。そして、語源については諸説があるんです。
- sack coat の訳語で「ゆったりした上衣」の意から
- 市民服の意の civil clothes から
- 市民服を意味する civil wear から
- ロンドンの降級洋品店街サヴィル‐ロー(Savile Row)から
- スコットランドの羊毛・服地の産地 シェビオット(Cheviot)から
- 背筋に縫い目がないところから「背広」と呼ばれたから
- 背部(背の布パーツ)が広い服の意から
- 中国語に由来する説
たくさん語源があるんですね。でも、ここから、どうして「背広(せびろ)」になるのでしょうか?
それぞれの語源について、ちょっと考えてみました。
- これ、英語なんですが、その訳語に「背広」が当てられたそうです。
- civil(シビル)が訛って「セビロ」になったのでしょうか?
- こちらは、2番と同様の理由です。
- これは、ありそう。サヴィル‐ロー(Savile Row)が昔の人には「セビロ」に聞こえたかも。
- こちらも上記と同様。シェビオット(Cheviot)が昔の人には「セビロ」に聞こえたかも。
- これは、下記を参照してください。
- これは、そのままの意ですね。
- 中国語では男子服の翻訳に「背」を用いる語が多く(vest⇒「背心」)、そこから背広が生まれたようです。
1は英語の意訳、2~5までは、英語が訛って、あるいは、聞き間違えて定着したものです。
6,7は、背広そのものを見て名付けた説ですね。
上記の語源6の説明を見てください。
「古い時代の仕立てでは背中の中央の縫い目がない」と指摘し、「我が背広服の語源はモーニングの背の細く狭きに反し背広服の背は巾広き 以つて此名を附したること明かなり」木村慶市「英和洋装辞典」1932年、慶文社、p.245と主張した。
引用 wiki 背広
この説明では、モーニングと違って、「背が幅広い」から「背広」になったと、そのままの意味で言っていますね。
1932年に「古い時代の仕立て」と言われるのは、どの位古いモノなんでしょうか?
ちなみに、「背広」は音訳即ち当て字とのことです。
幕末から明治初期にかけて「セビロ」というカタカナ表記が見られるようになり、一般には明治20年(1887年)頃から用いられたとされる。
引用 wiki 背広
幕末から明治初期というと、1960年の半ばから1872年位ですね。そこで、もう「セビロ」というカタカナ表記があったことになります!
次の章では、背広とスーツの違いを見ていきます。
背広とスーツの違い
背広とスーツの違いとは何かを見ていきましょうか。それは次の2つです!
- 女性用の有無
- 背広は死語
それぞれの違いについて、細かく見ていきましょう。
女性用の有無
先程「スーツの昔の言い方」の中で、背広は男子用のモノであると書かれていました。
今度は、スーツの意味を広辞苑で引いてみます。
スーツ【suit】
引用 広辞苑
共布でできた衣服の上下一揃い。男子の背広服の一揃いや、女子の上着とスカートとの一揃い。
この説明で明らかのように、スーツには女子のモノがあるんです。背広と同様に、他の辞書でどういっているか見てみますね。
- 大辞林:男性の背広上下,女性の上着とスカートのひとそろいなど。
- 大辞泉:男子服では背広の上下、またはチョッキを加えたひとそろい、婦人服ではスカートと上着、または共布のブラウスを加えたひとそろい
- 日本国語大辞典:男性用の背広服の一揃いや女性用の上着とスカートの一揃いなど
- 明鏡国語辞典:共布(ともぎれ)で仕立てた上下そろいの洋服。背広上下、上着とスカートのひとそろいなど。
明鏡国語辞典のみ記述がありませんでしたが、その他の広辞苑、大辞林、大辞泉、日本国語大辞典には女性用もあると明確に期されています!
これにより、背広とスーツの違いが明確に出ましたね。
背広:男性向けの上着
スーツ:男性用と女性用がある
背広は死語
冒頭で言いましたが、今や背広という言葉は死語のようですね。
2015年(平成27年)の文化庁の『国語に関する世論調査』ではすでに「背広」を主に使うという人は19.8%にとどまり、「スーツ」を主に使うという人が68.2%で、「背広」という表現は特に若年層には使われておらず、死語になりつつあると指摘されている。
引用 wiki 背広
高度成長期には背広という名称は一般的でした。しかし、時代の流れと共に、スーツという呼び名に置き換わっているようですね。
大阪の街頭で20代の男女に聞いたところ、「分からない」「思い浮かばない」などと30%近くが全くこの言葉を知らず、正確に知っている人でもほとんどが日常的に使っていなかった。国の調査でも、20代で「『背広』を主に使う」とする回答は2%弱しかない。
引用 「背広」は死語か…20代3割「知らない」 クールビズで消費も縮小
背広は、男性用と明確に規定されていますから、現在のように女性も着用するとなると呼称としては適当ではありません。
言い方が「スーツ」に置き換わるのも、時代の流れなんでしょう!
昔の言い方があるモノ
昔の言い方があるモノは他にもあります。
トイレ、スプーン、コート、シーツ、キッチンですね。これらの記事をアップしていますので、合わせて、ご覧ください。
トイレの言い方は、物凄くたくさんありますよ。
スプーンの昔の言い方は2文字で「〇じ」です。「〇じをなげる」なんて言葉がありますよ。
コートの昔の言い方は、60爺のさらに上の方じゃないとわからないかな?「が○○う」といいます。
シーツの昔の言い方は「〇き〇」の3文字ですね。60爺位の方なら聞いたことがあるのではないでしょうか?
キッチンの昔の言い方は「だ〇ど〇ろ」の5文字ですね。現在も普通に使っている方も多いのでは。
上記の記事以外にも昔の言い方は多数存在してます。
次の記事では昔の言い方を一覧にしてますので、覗いていってくださいませ。
この一覧では20を越える昔の言い方をご紹介していますよ~!
最後に
スーツという言葉がメインになったのはいつ頃でしょうかね。
私がむかーーーし、会社に入ったころは、こんなしゃれた言い方はありませんでした。背広と普通に呼んでいましたよね。
今回は、スーツの昔の言い方ということで、ノスタルジックに浸りながら記事を書きました。
そして、その語源とそれぞれの違いを見てきました。背広は男性用、スーツは男女兼用ということがわかりましたね。背広は消えゆく運命なんですな。
※気づけば言い方・呼び方の漢字の記事も増えてきました
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