ビールの和風の言い方は?各国語の名称も語源を含めて詳しくご紹介
テレビをつけると当然CMが流れますが、その中で頻繁に登場しているのがビールではないでしょうか。たくさんの著名な俳優などがビールをグッと飲み干し「うまいね!」というのが定番です。
私はあまり飲めないので、こう手のCMには賛成しかねます。ビールって、よほどのどが渇いていた時は、一杯目だけは「うまい」と感じますが、2杯目以降は・・・。
このビールなんですが「和風の言い方はないのか」というのが、そもそもの疑問です。そして、このビールの語源にも興味がわきました。
そこで、これらの疑問にこたえるべく、ビールの和風の言い方から始めて、なぜ、ビールと呼ぶのか、その語源についても追及していきます。
その内容をシェアしますので、ご一緒に見ていきましょう。
ビールの和風の言い方は?
ビールの和風の言い方は何でしょうか?
ビールの和風の言い方は?
麦酒(ばくしゅ)です。
聞いたことはありますよね。キリンビール株式会社の商号は「麒麟麦酒株式会社」です。また、パソコンで「ビール」と入力して変換をクリックすると「麦酒」に変換できますよ。
この麦酒ですが、いつ頃から使われているのでしょうか?
ビールが日本の文献に初めて登場するのは、享保9(1724)年『和蘭(おらんだ)問答』(阿蘭陀(おらんだ)通詞・今村市兵衛と名村五兵衛が編集)にある次の記述と言われています。
麦酒給見申候処、殊の外悪敷物にて何のあぢはひも無御座候。名はビイルと申候。
現代語に訳すと「思ったよりおいしくなく、何の味わいもない。名前はビールというらしい。」となるんですかね。あんまり、おいしくなかったようですな!
なお、ビールはオランダ語の bier からの借用語※です。
借用語※
引用 wiki 借用語
ある言語体系から別の言語体系へ取り入れられ、日常的に使われる外国語・古語・方言など。外来語と同義にも用いる。
麦酒は中国語の漢字を使った意訳※語でもあるんですね。
意訳※
引用 広辞苑
原文の一語一語にこだわらず、全体の意味に重点をおいて訳すこと。また、その訳したもの。
ビールの語源
最初にビールの意味を書いておきます。
醸造酒の一つ。麦芽を粉砕して穀類・水とともに加熱し、糖化した汁にホップを加えて苦味と芳香とをつけ、これに酵母を加え発酵させて造る。発酵過程で生ずる炭酸ガスを含む。ビヤ。
引用 広辞苑
日本の初めてのビールは、江戸時代にオランダ人がもたらしたものです。
上述したように、名称のビールは、オランダ語の bier からの外来語※ですね。
外来語※
引用 広辞苑
外国語で、日本語に用いるようになった語。狭義では、漢語を除く。伝来語。
ビールの呼び名の変遷を、ちょっと見てみました。
- 1724(享保9)年 麦酒、ビイル 『和蘭問答』
- 1788(天明8)年 びいる 『蘭説弁惑』(蘭学者・大槻玄沢)
- 1798(寛政10)年 ビール 『蛮語箋』和蘭辞典
最初の文献から、74年後に初めて現代と同じ「ビール」と発音されたようですね。
この bier のもとは、「飲む」の意のラテン語 bibere から出た語だということです。
現代では、ビールと呼ぶのが一般的ですよね。
英語の beer は、明治時代にビア、ビヤーという語形で用いられていましたが、現在では単独では用いられておりません。
ビア・ガーデン、ビア・ホール等の複合語は残っています。
各国語のビールの名称と語源を見ておきましょう。
各国語のビールの名称と語源
日本語のビールの語源がわかったところで、今度は世界に目を向けて、各国でビールがどう呼ばれているのかを語源を含めてみてみましょうか。
ビールの呼び方には、いくつかのグループがあるようです。
英語のbeerから来たもの
この beer も、上述した「飲む」の意のラテン語 bibere から出た語だということです。
言語 | スペル | 発音 |
---|---|---|
英語 | beer | ビア |
オランダ語 | bier | ビア |
ドイツ語 | Bier | ビア |
ルーマニア語 | Bere | ベレ |
英語のaleから来たもの
インド・ヨーロッパ祖語※の、alu-(「酔う」「魔術的な」など)が語源です。
言語 | スペル | 撥音 |
---|---|---|
英語 | ale | エオ(ア)? |
エストニア語 | olu | オロ |
デンマーク語 | øl | ユイ? |
ノルウェー語 | øl | オイ |
スウェーデン語 | öl | アウ |
インド・ヨーロッパ祖語※(インド・ヨーロッパそご)
引用 wiki インド・ヨーロッパ祖語
インド・ヨーロッパ語族(印欧語族)の諸言語に共通の祖先(祖語)として理論的に構築された仮説上の言語である。
発音が聞きづらいのばっかりで困りました。皆さんも、是非、聞いてみてください。
スラヴ語派諸国
スラヴ祖語pivoの派生系を使います。
言語 | スペル | 発音 |
---|---|---|
ロシア語 | пи́во | ピーバ |
セルビア語 | пи̑во | ピーボ |
ポーランド語 | piwo | ピーボ |
ポーランド語 | piwo | ピーボ |
スラヴ祖語(スラヴそご)はスラヴ語派に属する言語の元になった祖語。インド・ヨーロッパ祖語(上述)から発展した。文献はなく言語の比較によって再構した体系による。
引用 wiki スラヴ祖語
ロシア語だけ、「ピーバ」と聞こえました。あとの4つの言語、セルビア語、ポーランド語、ポーランド語は「ピーボ」でした。
こうしてみると、旧ロシア圏なんですね。
ラテン語cervisiaから派生
言語 | スペル | 発音 |
---|---|---|
スペイン語 | Cerveza | サルベーサ |
ポルトガル語 | Cerveja | サルベージャ |
ヨーロッパでは、この2国が「Cerve」で始まるスペルでしたね。最後というか、後ろから2番目の文字が違っているだけでした。
スペインは、zaですが「サ」と読ませます。ポルトガルは、jaで、そのまま「ジャ」でした。
その他の国
言語 | スペル | 発音 |
---|---|---|
日本語 | ビール | - |
中国語 | 啤酒 | ピージョ |
フィンランド語 | olut | オルト |
中国語は、ドイツ語の Bier からの借用と中国語「酒」の合成と思われます。
フィンランド語は、上述「英語のale」から来たと思ったんですが、実は、「ゲルマン祖語 *alu かバルト語からの借用語」とのことです。
借用語(しゃくようご)
引用 wiki 借用語
言語学の用語で、他の言語から別の言語にそのまま取り入れられた語彙である。
麦酒の類義語
ビールの類義語って言ってもあまりないんですよ。
- 麦酒(ばくしゅ):麦をかもした酒、すなわちビール。
- ビア:=ビール
- ビヤ:=ビール
- エール:イギリス産の上面発酵(常温性の酵母を用いる発酵)ビールの総称。
- 生ビール:醸造したままで、殺菌のための加熱を行わないビール。なま。
- ラガービール:貯蔵タンクで熟成させたビール。日本では、多く、醸造後に加熱殺菌して貯蔵に適するようにしたものを指す。貯蔵ビール。
- 黒ビール:ビールの一種。焦がした麦芽を用いるので暗褐色をしている。
うーむ、余りに類義語が少ないので、無理矢理ひねり出しましたが、生ビール以降はビールの一種であって類義語ではないですな!
こんなところで、ご勘弁を!
最後に
ビールの和風の言い方と、他の国ではビールをどう呼ぶか、その語源が何かを見てきました!
日本では、和風の言い方をすると「麦酒(むぎしゅ)」でした。キリンビール株式会社の商号は「麒麟麦酒株式会社」でしたね。「ビール」を変換と「麦酒」に変換できますよ。
日本のビールは、江戸時代にオランダ人がもたらしたもので、オランダ語の bier からの外来語であることもわかりました。
外国でのビールの名称は、グループが複数あって、それらグループで名称がほぼ決まっており、他のグループとは違うこともわかりました。
いやー、雑学としての知識が増えましたね。
※気づけば言い方・呼び方の漢字の記事も増えてきました
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