草冠に湯と書いて蕩!読み方から意味・苗字での使われ方まで総特集
小説を読んでいたら、「放蕩息子が父親が一代で築いた財産を使い切ってしまった」という表現がありました。
この「放蕩息子」に使われている草冠の漢字が今回の標的です。
草冠に湯と書く蕩ですね。普段の生活では、余り見かけることのない漢字だと思います。
この漢字を見かけるのは小説などに多いですね。そして、この「蕩」、「草冠に○○」シリーズに適合します。
そう言う訳で、草冠に湯の蕩について、読み方から意味・名字での使われ方まで総特集します。
ご一緒に、その内容を見に行きましょうか。
草冠に湯といえば蕩!漢字の読み方や全体像をまずはチェック
最初に、蕩の意味と読み方を明確にしましょう。
蕩の読み方と意味
蕩 異体字 蘯
画数 :15画
音訓:トウ うご・く やぶ・る(日本語だけ)つたよ・う とろ・かす
意味
①広く行き渡る。ゆらゆらと広がっているさま。②うご・く。うご・かす。やぶ・る。ゆらゆらとうごかす。ゆれうごいてこわれ崩れる。③酒色などに溺れる。また、物事にしまりがなくでたらめであるさま。④勢いよく洗い流す。よごれや邪魔なものをきれいに除く。⑤うごきはじめる。胎動する。⑥姓の一つ。
日本語だけの意味・用法
(訓読み)つたよ・う とろ・かす とろ・ける
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
「蕩」には「蘯」という異体字があります。
異体字※
引用 コトバンク 異体字
漢字の字体のうち標準字体以外のもの。異体文字、別体字、変体字ともいう。広義の・・・通常は漢字のみをさす。異体字の分類は諸家によりかならずしも一定しないが、(1)略字(字画を省略したもの。暦・歴→厂、幅→巾など)、(2)合字(2字を合成したもの。麻+呂→麿、菩+薩→など)、(3)分字(1字を2字に分割したもの。米→八木など)、(4)古字(古文ともいう。篆(てん)書以前の古体字。礼のように常用漢字に採用されているものもある)、(5)俗字(世間に通用している正式でない字体。曜→など)、(6)譌(か)字(誤字と認められるもの)などが考えられる。
音読みは「トウ」で、訓読みは「うご・く」「やぶ・る」の2つですね。日本語だけの訓読みに、「つたよ・う」「とろ・かす」の2つの訓読みがあるんですね。
意味には、植物の意味はありませんな。でもって、6つの意味があるんですよ!
- 広く行き渡る。
- うご・く。うご・かす。やぶ・る。「蕩折(トウセキ)」「蕩尽(トウジン)」
- 酒色などに溺れる。「放蕩(ホウトウ)」
- 勢いよく洗い流す。「掃蕩(ソウトウ)」
- 胎動する。
- 姓の一つ。
日本語の訓読みの意味を載せておきます。
まず「つたよ・う(漂ふ・蕩ふ)」からです。
余り、聞いたことのない言葉ですが、意味は「さまよう。ただよう。流浪する」です。
昔の言葉ですかね。
二つ目の「とろ・ける(蕩ける・盪ける)」を見ていきます。
意味は3つ。
- 金属など固体がとけて液体となる。とけて形がくずれる。
- 怒りなどがとけ心がやわらぐ。
- 心のしまりがなくなる。うっとりする。
これ、3番目の意味で使われていたと思いますが、小説なんかで見たことがある表現です。
「蕩けるような甘い言葉」なんてのもありました。
1.は今昔物語、2.は源平盛衰記という古典に出てくるんですね。
参考:広辞苑
それでは、次に、蕩の書き順をみてみましょう。
草冠に「湯」を順に書いていけばOKです。「湯」の画数は多いですが、上から順に書いていけば問題ないと思います。
もっと詳しく知ろう!蕩の漢字としての由来や成り立ち
字源を見ていきます。
蕩=「湯(トウ)ゆれうごく水」+「艸(くさ)」(形声※)。引用 上級漢和辞典 漢字源 学研
形声※
漢字の六書(リクショ)の一つ。発音を表す文字と、意味を表す文字とを組み合わせて、新しい文字を作る方法。
- 「昜」
- 昜は、「日(太陽)」、「丂(上に伸びていく)」、「彡(光が発散する)」で構成される漢字です。
太陽が空高く上がる情景を示すところから、「高く上がる」というイメージを示す記号となりました。
- 「湯」
- 湯は、「昜(ヨウ)高く上がる」、「水(みず)」で構成される漢字です。
水が沸騰して蒸気が高く上がる情景を示すところから、「ゆれうごく水」というイメージを持ちます。
- 「蕩」
- 蕩は、「湯(トウ)ゆれうごく水」、「艸(くさ)」で構成される漢字です。
大水で草木がゆれうごくことを示しています。
参考 上級漢和辞典 漢字源 学研
蕩のつく言葉
蕩は植物ではないので、ここでは、蕩のつく言葉を見てもらいます。
蕩のつく言葉 | 読み | 意味 |
---|---|---|
蕩佚 | トウイツ | ⇒{蕩逸(トウイツ)}①物事に対して寛大でゆるやかなこと。②しまりがなく、かってきままなこと。《類義語》放佚(ホウイツ)。 |
蕩子 | トウシ | ⇒{蕩児(トウシ゛)}①遠くへ旅に出たまま帰らない者。②酒色におぼれる者。道楽者。遊蕩児。〔古詩十九首〕 |
蕩志 | トウシ | 気をまぎらすこと。 |
蕩舟 | トウシュウ | ⇒{蕩船(トウセン)}舟をうごかす。 |
蕩心 | トウシン | ①心を迷わし本心を失わす。②迷わされたしまりのない心。③酒色にふける心。 |
蕩尽 | トウシ゛ン | 洗い流されてなくなる。また、ほろび尽きる。 |
蕩析 | トウセキ | 分散する。また、離散する。▽一説に、洪水によって流され、一家がちりぢりになる。 |
蕩然 | トウセ゛ン | ①洗い流されてあとかたもないさま。洗い流されたようにあとかたもないさま。②かってきままなさま。 |
蕩駘 | トウタイ | ①かってきままにする。ふける。▽「駘」は、なまける。②心が失われてしまうほどに美しい。 |
蕩滌 | トウテキ | 洗い流して清める。けがれ、よこしまな事などを除き去ること。 |
蕩蕩 | トウトウ | ①ゆらゆらとして大きいさま。また、広くはるかなさま。②広くゆきわたるさま。③心がゆったりしたさま。④法律・制度が乱れたさま。⑤水勢の激しいさま。⑥心がしっかり定まらないさま。 |
蕩覆 | トウフク | 国家をくつがえす。また、国家がくつがえる。 |
蕩平 | トウヘイ | ⇒{蕩定(トウテイ)}世の乱れを平定する。 |
蕩揺 | トウヨウ | ゆれうごく。また、ゆりうごかす。 |
参考 上級漢和辞典 漢字源 学研
たくさん出てきました。
ご存知の言葉はありましたか?
私の知っている言葉はありませんでした。残念。
「蕩子」という言葉ですが、「宕」という漢字が「蕩」を当てた使用法をしていますよ!
次は、名前に使われる際のポイントを見にいきましょう~。
苗字に使われる際のポイントは
この棟という漢字は、人名に使うことができません!
そこで、蕩を持つ苗字を見ていきます。
「蕩」のつく名字が日本では見つからないようです!
ないのであれば仕方がないですな~。
最後に
草冠に湯で蕩ですが、あまり見かけないイメージです。
意味は、水がうごくさま。あとは、酒色なぞに溺れるさまです。日常生活にはあまり縁がない漢字だと思われます。
蕩は名前も使えず、苗字も見つけることが出来ませんでした。ただ、蕩のつく言葉を見ていったら、かなりの数が見つかりましたね。知っている言葉は皆無でしたけど…。
漢字には、それぞれ性格があるようですね。また、別の漢字と出会いたいですね。
※気づけば草冠の漢字の記事も増えてきました
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