「うなづく」「うなずく」はどっちが間違い?明確にお答えいたします
日本語には同じ発音で複数の書き方がありますよね。「づ」と「ず」、「ぢ」と「じ」です。このため、同じ発音でも2つの書き方が出てくるわけです。
漢字になるとより複雑さが増します。「暖かいと温かいの違いは何?厳然たる理由とその他の意味を一緒に紹介」では、「あたたかい」に対して2種類の書き方がありました。
過去の記事では、「しづらい」と「しずらい」等について確認しましたが、今回の対象は「うなづく」と「うなずく」です。
どちらかが間違っているのでしょうが、いざ、文字にしようとすると「あれっ?どっちだったけ?」と戸惑いますよね?
この記事を読むことで、これからは、もう戸惑うことはなくなりますと言いたかったんですが、追跡したらまさかの答えが待っていたんですよ。
「うなづく」と「うなずく」はどちらが間違い?
まずは、結論から申し上げておきましょう。「うなづく」と「うなずく」はどちらかが間違いかと思って追跡していったんですが…。
「うなづく」と「うなずく」はどちらが間違い?
「うなずく」が推奨されますが、「うなづく」も間違いではない!
な、何とどっちも間違いではないという「まさかの展開」!
これ、昭和61年の内閣告示の現代仮名遣いにおいて、「うなずく」が基本的には正しく、「うなづく」は慣用表現として許容されたことからきています。
両方とも間違いではないんですね!
ただ、よほど特別な理由がなければ「うなずく」を使用した方が無難です。
辞書を確認したんですが、「うなづく」を載せていたのは明鏡国語辞典のみでした。「うなづく」の項には、『「うなずく」の許容形』とのみ記載されているんです。
うな‐づ・く【▼頷く】
引用 明鏡国語辞典
「うなずく」の許容形。
ただし、「うなづく」の載っていない5つの辞書(広辞苑、大辞林、大辞泉、日本国語大辞典)にも、「づく」が「うなずく」の項に記載されており、「うなづく」も許容範囲であることを示してはいるんですけどね。
広辞苑の内容を載せておきます。
うな‐ず・く【頷く】‥ヅク
「うな-ず・く」がメインとして掲載されていますが、「うな-づく」もOKだと言っているんです。
合わせて、「うなづく」の載っていた明鏡国語辞典の「うなずく」の項も載せましょう、上記、広辞苑と同様に、次のようになっています。
うな‐ず・く【▼頷く】━ヅク
広辞苑と同じで、「うなずく」の項にも「-ヅク」でも良いとされていますね。
以上のように、各辞書とも「うなづく」「うなずく」共に、使用できることを示しているんですよ!
今回の答えは、「うなづく」と「うなずく」はどちらも正解!でした。
なお、「うなづく」「うなずく」ですが、新聞の校閲では「うなずく」を採用するようです。
【毎日新聞校閲センター】
毎日新聞校閲センターでは、「うなずく」が本則と言っています!
【朝日新聞校閲センター】
朝日新聞では、社内の取り決めで「うなずく」を採用しています。
今回は、以前書いた記事で、「しづらい」が正解で「しずらい」が誤用というように、一方が正しく、他方が誤りではありませんでした。
「うなずく」の語源
ここで、「うなずく」の語源を確認してみましょう。
「うなずく」の語源
「うなずく」の「うな」は「うなじ(項)」、「つく」は「突く」と考えられています。
この「つく」は「つまづく」「ぬかづく」「ひざまづく」などの「つく」と同じもので、首を縦に動かす動作を「突く」として捉えたものなですね。
いざ、確認してみたら、面白いことが分かりました。
上記の内容を読む限り、本来は、「うなづく」が基本的に正しい使い方だったと思われますよね。しかし、以下の「現代仮名遣いの特例」にも記載がある通り、表記が逆転しちゃったわけですなあ~!
なお,次のような語については,現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの等として,それぞれ「じ」「ず」を用いて書くことを本則とし,「せかいぢゅう」「いなづま」のように「ぢ」「づ」を用いて書くこともできるものとする。
引用 現代仮名遣い 本文 第2(表記の慣習による特例)
例 せかいじゅう(世界中)
いなずま(稲妻) かたず(固唾) きずな(絆*) さかずき(杯) ときわず ほおずき みみずく
うなずく おとずれる(訪) かしずく つまずく ぬかずく ひざまずく
あせみずく くんずほぐれつ さしずめ でずっぱり なかんずく
うでずく くろずくめ ひとりずつ
ゆうずう(融通)
ここでいう「現代語の意識では一般に二語に分解しにくいもの」の中に、「うなずく」が入ってるんですね。
上述したとおり、「うなずく」=「うな」+「つく」だったのに、なぜ、こんなことになっちゃんでしょうか?
恐らく、漢字表記が悪いんだと思います。
「うなずく」=「頷く」(「〈肯定〉く」「〈点頭〉く」もあり)となったために、本来の「うな」+「つく」が忘れられて、「二語に分解しにくいもの」になったからだと考えられます。
「うなずく」「うなづく」の意味
さて、少々遅くなりましたが、「うなずく」「うなづく」の意味を見ておきます。広辞苑では、2つの意味が載っていますね。
- 首を下にうごかす。
- 諒解・承諾の意を示して首をたてに振る。合点する。首肯する。
普通は、2の意味だと思ってますよね。
「頷く」の使用例を挙げます。
- 彼女の申し出は私の要望にピッタリだったので、大きく頷く事でその受け入れの意を示しました
- あの人の提案は、会場にいたほぼ全員が頷く程素晴らしく、その後、拍手喝さいが起きました
「うなづく」の言い換え
「うなずく」が推奨されますが、「うなづく」でも間違えではないとわかりました。
まあ、この「うなずく」「うなづく」ですが、両方とも正解故、使うのが面倒な言葉だとも言えそうです。
そこで、「うなづく」の言い換えにどんな言い方があるかも見ておきましょう。
こんな言い方があるようです。
言い換え | 読み | 意味 |
---|---|---|
合点 | がってん | 承知。承諾。うなずくこと。がてん。 |
首肯 | しゅこう | うなずくこと。もっともだと納得すること。 |
承諾 | しょうだく | 相手の申し出や頼みを、聞き入れること。引き受けること。 |
承知 | しょうち | 聞き入れること。承諾。 |
合点は、NHKでやっていた「ためしてガッテン」を思い出します。漢字表記は、これだったんですね。
首肯も聞いたことがありますが、日常では、なかなか使わない言葉だと思います。
承諾、承知は、丁寧な言い方のイメージがありますね。
承知、承諾はビジネスでも使われますね。
それぞれの言い換えの言い方で例文もみておきます。
言い換え | 例文 |
---|---|
合点 | よし来た、合点だ |
首肯 | あのやり方では、首肯しがたいです |
承諾 | その件については、御社の上司に承諾を得てくださいね |
承知 | 先程の案件については承知しました |
合点は、親しい間での言葉ですね。依頼を受けて言うのが上の例文です。首肯は、こんな使い方です。
承諾については、こんな言い回しをしますね。最後の承知は、相手の提案を聞き入れた形になります。
最後に
「うなずく」「うなづく」という同じ発音で違う表記の内容のどちらが正しいのか見て参りました。
結果は、何とどっちも間違いではないという「まさかの展開」でしたね。
「うなずく」が推奨されますが、「うなづく」と書いても誤りでないことが分かりました。ただ、現代仮名遣いにおいては、前者を使用した方が無難のようです。
これだけではつまらないので、「うなずく」の語源を掘り下げてみました。すると、本来は「うなづく」が正解と思われる結果だったんですが、どこかで逆転が起きてしまったようですね。
ということで、今回は「しづらい」「しずらい」のように一方が正しく他方が誤りという結果にはなりませんでした。
※気づけば「どっちが正しい言い回し?」の記事も増えてきました
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