「おさめる」の使い分けは漢字表記の意味を理解すれば自ずと解決
今までにもやってきましたが、日本語には同じ発音を違う表記で表わせる言葉が多数あります。
「あたたかい」や「かたい」、「たこ」、「こわい」など記事にしたモノも複数存在しますね。
今回の題材も、これらと同じで、同じ発音ですが複数の漢字表記を持つ言葉です。
対象の表記は4種類ある「おさめる」という表現です。
この「おさめる」の使い分けですが、その漢字表記「収める」「納める」「治める」「修める」の意味を理解すれば自ずと解決いたします。
それでは、どういうことなのか、ご一緒にご覧になってくださいませ。
「おさめる」の使い分け
「おさめる」には、上述のように「収める」「納める」「治める」「修める」の漢字表記があります。
その使い分けは、それらの持つ意味を理解すれば自ずと解決します。
参考:上級漢和辞典 漢字源
こうみると、4つの漢字表記で表わす「おさめる」の意味は全然違いますね。
ですから、その意味さえ理解すれば、どの漢字を使うかはおのずと明らかになる訳ですね。
4つの漢字表記の「おさめる」の意味を国語辞典から引いてきました。こちらも、一覧で見ていただきましょう。
漢字表記 | 意味 |
---|---|
収める・納める | ①物をある物の中にきちんと入れる。しまう。また、ある範囲内にきちんと入るようにする。 ②受け取って(また、奪い取って)自分のものとする。 ③乱れた状態を鎮める。乱れを収束させる。治める。 |
収める | ①(しまいこんで)記憶や記録に残るようにする。 ②よい記録や結果を生み出す。 |
納める | ①金品を受け取り手のもとに入れる。納入する。 ②物事を終わりにする。やめる。 ③…することを終わりにする。それを最後に…することをやめる。 |
治める | ①乱れを鎮めて、安定した状態にする。表記「収める」とも。 ②組織の中に秩序を行き渡らせる。統治する。統すべる。 ③痛みや症状がなくなるようにする。治療する。治なおす。 |
修める | ①心や行いを正しくする。 ②学問・技芸などを学んで、自分のものにする。修得する。 |
参考:広辞苑
「収める」と「納める」には、個々の表記の持つ意味の他に、どちらの表記を用いても良い場合があるんですね。
また、「収める・納める」の③は、治めるの①と同じ意味なんですな。
※「国をおさめる」を漢字で書くとどうなるかを記事にしています。ここまで読んだ方は、どの漢字か、もうお分かりですよね!
⇒ 「国をおさめる」を漢字で書くと?
漢字の持つ意味からみた使い分け
それぞれの漢字の持つ意味から使い分けができるか見てみましょう。
・収:ばらばらのものを引き寄せ、一つに集める動作
・納:織物を倉庫などにしまい込む情景
・治:良くない事態(無秩序・混乱など)に手を加えてうまく調整する
・修:形を整えて美しくする
それぞれの漢字の持つ意味が、上述した言葉の意味につながっていますよね。
個別の漢字の字源の詳細は以下です。
収める
収
収の旧字は「收」です。この漢字の字源ですが、左側は、二本のひもを一つによじりあわすさまを表します。
それに攵(て)をそえて、ばらばらのものを引き寄せ、一つに集める動作を示しています。
納める
納
この漢字の字源は、「内(ナイ 中に入る)+糸(いと)」。内(ナイ)は「入(ニュウ 中に入る)+冂(屋根・覆い)」で建物の中に入っていく情景。
ここから、「納」は織物を倉庫などにしまい込む情景を表します。
治める
治
この漢字の字源は、「台(ダイ 人工を加える)+水(みず)」。「治」は洪水が起こった場合、川の水があふれないように人工を加えて調整する状況を表します。
ここから、良くない事態(無秩序・混乱など)に手を加えてうまく調整することを示します。
修める
修
この漢字の字源は、「彡(飾り)+攸(細長い)」で、でこぼこやきれめがなくてすらりと細長く姿が整ったことをあらわします。
ここから、形を整えて美しくすることにつながります。
参考:上級漢和辞典 漢字源
それぞれの漢字の字源をみると、構成される漢字が持つ意味から、それぞれの漢字の意につながっていくことが分かりますね。
「おさめる」の使用例
それぞれの漢字表記の使用例を、またまた、一覧にしてみました。
漢字表記 | 意味 |
---|---|
収める・納める | 「遺体を棺に納める」「怒りを心に━(=封じ込める)」 「つまらない物ですが、どうかお━・め下さい」「勝利を手中に━」 「紛争を━」「物事を円満に━」 |
収める | 「あの日のことは記憶に━・めて忘れません」 「大会で好成績を━」 |
納める | 「注文の品は月末までに━」「県に地方税を━」 「今年の仕事はこれで━」 「舞い━・歌い━・書き━・飲み━」 |
治める | 「反乱[暴動]を━」「水を━(=治水する)」「荒ぶる心を━」 「関東一円を━」「人民を━」 「痛み[発熱]を━」 |
修める | 「身を━」 「学問[ドイツ語・仏道]を━」 |
「おさめる」対象によって、使用する漢字が違うので注意しましょう。
たとえば、勝利を「おさめる」場合に、「治める」や「修める」を使うと誤りになります。税金を「おさめる」場合は、「納める」が正解ですね。
暴動を「おさめる」には、「治める」の他に「収める」「納める」も使用できます。
学問を「おさめる」は「修める」しか使えなかったりします。
最後に
「おさめる」の使い分けについて見てきました。
4つの漢字表記がありますが、それぞれ、どう使うかが規定されていました。ですので、どの漢字表記を使うのか理解することが必要です。
漢字自体に着目しましたが、その漢字の持つ字源で代替の対象が決まるようですね。
最後に例を出しておきましたので、どの場合にどの漢字表記なのかを吸収しちゃいましょう。
冒頭で言った「同じ発音を違う表記で表わせる言葉」の記事群です。
※気づけば「違い」の記事も増えてきました
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