「やりづらい」と「やりずらい」どっちが間違い?明確にお答えします
今まで、同じ発音でも異なる書き方がある言葉について色々と見てきました。
一方は正しく、もう一方は間違いだったり、複数の表記それぞれが許される場合があったりします。日本語の難しさには、そんなことも関係しているのでしょう。
今回の主題は、何度もやってきた「づ」と「ず」の違いです。
例外があるので、これ、意外と面倒くさいんですよね。
「づ」と「ず」の使い方は、「現代仮名遣い」にて取り決められていますが、前述のように例外があって、ホント、面倒なんですよ~。
今回は、同じ発音である「やりづらい」と「やりずらい」のどちらが間違いなのかを、またまた、明確にお答えしちゃおうと考えます。
それでは、ご一緒に内容をご覧くださいませ。
「やりづらい」と「やりずらい」はどっちが間違い?
最初に結論を述べておきましょうか。
「やりづらい」「やりずらい」はどっちが間違いか?
「やりずらい」が間違いです。
実は、日本語に「やりずらい」という言葉はないんですよ!ご存知でしたか?ですから「やりずらい」が間違いなんです。
「やりづらい」という言葉は、「やる」という動詞の連用形に「つらい(辛い)」という接尾語がついた言葉なんです。
動詞の後に使われる「づらい」という接尾語ですは、その動作をすることに難しさ(難儀、困難)を感ずる意を表します。
以上の理由で、「やりづらい」は、「やるのがつらい、あるいは、うまくやれない」という意味になります。
次のような事例があります。
見出しの「やりずらくても」を「やりづらくても」に直しました。「つらい」が動詞の連用形について濁音化したものなので、「~づらい」が正しい書き方です。
やりずらい? やりづらい?
ここでも上述した内容と同じことを言っていますね。
国語辞典(大辞泉)から接尾語「づらい(辛い)」を引いてみましょう。
づら・い【△辛い】
引用 大辞泉
〔接尾〕《形容詞型活用[文]づら・し(ク活)》動詞の連用形に付いて形容詞をつくり、その動作をするのに困難を感じる意を表す。…にくい。「歩き―・い」「読み―・い」「書き―・い」
動詞「やる」に「づらい」が付いて、「やりづらい」になるわけですな。
さて、「やりづらい」が正しいにもかかわらず、「やりずらい」と書いてしまう人がいるのは何故でしょうか。
その理由として考えられる内容が次の2つです。
- やりずらいが正しいと思っているから
- 「現代仮名遣い」の「ず」、「づ」の書き分けを誤解しているから。
各々の内容について追いかけてみます。
「やりずらい」が正しいと思っている
始めに、上記の1を見ていきます。
なぜ「やりずらい」を用いるのか?
「やりずらい」が正しいと思っているから!
これは、極々単純な理由です!「やりづらい」という言葉を聞いた時、この「づ」が、発音が同じなので「づ」ではなく、「す」に濁点の「ず」であると確信しちゃうんですよ。
「やりずらい」が正しいと思っているので、文字にする際、「やりずらい」と記述してしまうんですね~。
本人は正しいと思っていますから違和感も抱かないですよね!
ここでも、「やりずらい」が出てます。
答えは「やりづらい」ですよ~~~!!
現代仮名遣いの影響
次は、2番目の内容です。
なぜ「やりずらい」を用いるのか?
「現代仮名遣い」における「ず」、「づ」の書き分けを誤解しているから。
1986年に現代仮名遣い※で、「ぢ・づ」は「じ・ず」に置き換えるよう、統一すると内閣告示されています(複数ある規則のうち、一部を抜粋)。
※現代仮名遣い
現代日本語,主として口語体の現代文を仮名で書き表す場合の準則。
上記の内容を、そのまま取り込めば、「しずらい」となるんですが、この部分には例外があるんです。
その内容ですが、二つの言葉繋がっている連語の場合は「ず」に統一するのではなく「づ」を用いると出ており、「やりづらい」(やる+つらい)は、このケースに当てはまる訳です。
「現代仮名遣い」については、例を載せて説明していますので、下記の記事を読んでみてください。
ですから、「やりずらい」ではなく、「やりづらい」となるわけです!
ここでも、「つらい」が濁って「づらい」だよ~と言ってますね。
次の章では、「やりづらい」を使用したいくつかの例文を見ていただきます。
「やりづらい」を使用した例文
それでは、「やりづらい」を使用した例文を見ておきましょう。
- あの人は、勝手に垣根を作っているから、一緒に仕事をするのはやりづらいですね。
- 彼らはタイプが全く違うから、いろいろとやりづらいだろうな。
- 自分が昨年まで所属したチームなんで、ちょっとやりづらいです。
3つの例文を挙げました。少しだけ解説しておきます。
- 「あの人」は有名な問題児。自分の勝手な判断でやる仕事を決めているんで、一緒に仕事をやることになったらやりづらいことを言ってます
- 彼らのタイプが全く違うので、一緒に何かをやるのはいろいろな面でやりづらいだろうと考えています。
- 新しいチームに移った選手が、古巣との対戦前に心境を語った言葉です
それぞれの例文で、上記で述べた意味である「動作をするのに困難を感じる意」を表しています。
「やりづらい」「やりにくい」の違い
「やりづらい」の同義語に「やりにくい」がありますので、違いがあるのかどうかを確認します。
「やりづらい」「やりにくい」の違い
この二つの言い方は、ほとんど同じと判断していいでしょう。
■ネットでは、次のように使い分けをする方もおるようです。
- やりづらい:自分の心理的な抵抗感
- やりにくい:客観的な困難さを表す
下記に意味を示します。
- やりづらい:その動作をするのに困難を感じる意を表す
- やりにくい:物事を行うのに困難を覚えるさま
よく見てもらうとわかりますが、表現は違えど、同じことを述べています。実際、「やりづらい」では意味の後に「=やりにくい」、「やりにくい」では意味の後に「=やりづらい」と出てました。
これらの表現「づらい」「にくい」の出現時期については、既にアップした記事から引用します。
この「~にくい」と「~づらい」を出現時期を比べると、何と、「~にくい」が圧倒的に古くて、10世紀には既に使われていました。それに対して、「~づらい」の登場は19世紀です。
引用 「わかりづらい」「わかりずらい」どっちが間違い?明確に答えます
ところが、現時点で見ると、「~にくい」から「~づらい」へ移行している時期といえるようなんです。「~づらい」が徐々に浸食して、その地位を脅かしているんですね。
現在は、「やりづらい」が優勢のようです!
最後に
「やりづらい」「やりずらい」の2語について、どっちが間違いなのか明確に答えました。
「やりずらい」は日本語に存在しない語ですので、明確な間違いでした!発音が同じでも、「やりづらい」は、「やる」+「つらい(辛い)」で構成される言葉です。
現代仮名遣いで明確に規定されていても、その内容を確実に覚えているわけではないし、発音を聞いただけでは「づ」か「ず」か判断が付きませんからね。
ただ、この記事で正誤ははっきりしましたので、これからは正しい表現が使えますね!
他にも、「しづらい」「わかりづらい」など、同じ仲間がいますので、出会った際は、間違わずに記述できると思います。
※気づけば「○○と××どっち」の記事も増えてきました
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