うつるの漢字の使い分け!3種の表記の明確な違いと使用例を大特集
このブログでも度々取り上げてきましたが、日本語は同じ発音でも違う表記になる言葉がたくさんあります。
過去に記事にした言葉に、「クズ」「くらげ」「おさめる」「たこ」「つむじかぜ」等があるんです。
今回も、同じ発音ですが複数の漢字表記を持つ言葉を題材にします。
対象のことばは「うつる」です。
この記事では、「うつる」の複数ある漢字表記について、その使い分けがどうなるかを明確にしたいと思います。
それでは、ご一緒に最後までご覧になってください。
「うつる」の漢字の使い分け
始めに、「うつる」の複数ある漢字表記について、その使い分けがどうなっているかをみていただきます。
「うつる」の漢字の使い分け
「うつる」の漢字の使い分けを見てみましょう。
漢字表記 | 意味 |
---|---|
写る | その通りに書く。画像として残す。透ける。 |
映る | 画像を再生する。投影する。反映する。印象を与える。 |
移る(遷る) | 位置が変わる。 |
「うつる」には3つの漢字表記があります。
それぞれの使い分けですが、意味に書いた通り明確ですね。
この表から明白なのは、「移る(遷る)」は、「写る」「映る」と別物であり、「場所や地位・配置などが変わる」「(遷る)移転する」ことを指していることです。
「写る」「映る」は、一言で言うと、画像(静止画)と映像(動画)に使い分けることです。
3つの「うつる」の使い分けは理解できたと思います。
これから、それぞれの「うつる」の漢字表記に着目して、それぞれが持つ意味を見ていきましょう。
写
始めに、「写」の持つ意味を見ていきます。
- 一カ所にたまった物を他の所に出し、うつす。
- もとの姿や原本の字などを他の所にうつして書く。
- お・ろす。荷をA所からB所へおろす。
なんと、この漢字には、「別の場所に移す」というイメージがあるんです。上記の3.の意がコア・イメージなんです。
そして、これが転じて、2.の意である「Aで書いた字をBに写す」になったんです。
ただ日本では、「移す」と「写す」を前者は「移動する」、後者は「写真を撮る」ように使い分けています。
なお、1.は、心中の思いを外にはきだす意ですね。
映
こちらも、「映」の意味からです。
- うつ・る。光の照らす所と、暗い影のけじめがはっきりする。色と色のけじめが浮き出る。色や輪郭が浮き彫りになる。もと、日光によって明暗の境目や形が生じること。
- は・える。照りはえる。反射する。
- 照らす。反射させる。
- 日かげ。うつった形。
この漢字は、「光を受けて物の姿がくっきりと現れる」というイメージがあるんです。1.で示す意ですね。
漢語では「映る」という現象を、「区切り目がはっきりつく」というイメージから捉えています。
光に照らされることで、物の姿がうつる場合も境目がはっきりとつくことを表すんですね。
その他にも、2.反射する、3.反射させる、4.移った形などの意を持っているんです。
移
この漢字の意味の数は、「写」「映」よりも少し多いです。
- うつ・る。横にずれる。ずれて動く。位置が次第にずれていく。
- うつ・る。時間が移り変わる。
- うつ・す。横に引っ張る。ずらせて動かす。位置や立場をかえる
- 文書を次々に回す。横にずらせて次々に回す回覧文。まわしぶみ。
- (日本語のみ)うつ・る。色が次第にかわる。
- (日本語のみ)うつ・る。においや病気が、横のものに伝わる。伝染する。
コア・イメージは、「横に延びていく」というものです。
そこから「他の場所に動いて、位置・状態などが変わる⇒うつる」となったようです。
移は、稲の穂波が風を受けて横にずるずると靡く情景を表しているんです。ここから、物が空間的にうつることを示します。
意味をみても、2.時間、5.色、6.においや病気までが「うつる」さまを表した漢字なんですね。
次の章では、今、ご覧いただいた「うつる」の漢字別に使用例を見ていきましょう。
「映る 写る 違い」で過去に記事を書いています。
「うつる」の使用例
それでは、「写る」「映る」「移る」の順に、使用例を見てください。
写る
- クラスの全生徒が卒業写真に写っている
- このカメラは暗がりでも見事に写る
- この特ダネ写真はよく写っている
- 裏ページの写真が写って文字が読みにくい
4つの使用例を見ていただきました。それぞれの使用例の「写る」の意味を簡単に述べておきます。
- 被写体が映像となって写真に現れる。
- うまく被写体を写すことができることを示す。
- 作品としての写真が上手に仕上がっていることを示す。
- 物の形や影が透けて見えるさまを表す。
「写る」には、4種類の意味があるんですね。
映る
次は、「映る」の例を見てください。
- 水面に修復の成った金閣寺が映っている
- 石畳に黒い人影が映る
- テレビに宿敵との出会いの場面が映っている
- 微笑ましい光景が私の目に映った
- パソコン操作は初心者の目には難しそうに映る
- 紺の背広には赤いネクタイがよく映る
「映る」では6つの使用例が出ました。それぞれの使用例の意味を個別に述べます。
- 光の反射で物の形・色等が他の物の上に現れる。
- 光の投影で物の影が現れる。
- 映画やテレビなどの映像がスクリーンや画面などに現れる。
- 現実の光景が視覚を通して見える。
- 物事が人の印象や想念となって現れる。
- 調和する。似合う。映える。
「映る」も色々な使い方が出来ました。
移る
最後は「移る」の使用例です。
- こちらの方が来春営業部に移る遠藤さんです
- あの俳優は、今度、大手プロダクションに所属が移る
- あの部署の管轄が官庁から民間に移る
- 794年、奈良から京都に都が移った
- 舞台は暗転して次の場面に移る
- あの時、唯一、無我の境地に移ることが出来た
- 彼女は飽きっぽくて、今度は、オペラに興味が移るんだって…
- あっという間に、春から夏に季節が移る
- 気をつけないと、ツユクサの色が着物に移るよ
- さっさと直さないと、あなたの悪い癖が子供に移る
- 彼は上達が早くて、もう初級から中級へ移るんだって
おお、11もの例文が出て来ました。それだけ、使える幅が広いということですね。
どんな場面で使えるのかを下記に示します。
- 人や物が移動すること
- 居所や所属が変わること
- 役割・権限などの所轄が変わること
- 役割や機能をもった場所が変る
- 目前の光景が他の光景に変わること
- 意識が、ある状態から別の状態に変わること
- 関心の対象が別のものに変わること
- 時が経過すること。また、時が経過して物事が変化すること
- 色や香り等が他のものにしみこむこと
- 病気等良くないものに感染すること。また、もののけなどが乗り移ること
- 物事が次の段階に進むこと
この「移る」は、「写る」「映る」以外の「うつる」全般をカバーするので使える意味が広くなったんです。
このブービーにあった「病気がうつる」の漢字は「移る」ですね。過去に、「風邪がうつる」について記事を書いていますので、よろしければご覧ください。
最後に
うつるの漢字の使い分けについて見てきました。
3種類の漢字がありましたが、その使い分けは割と明確でしたね。
それらについて、その使い分けを明確化するとともに、どのように使うのかも使用例を豊富に出してみていただきました。
これで、うつすの漢字の使い分けは完璧ですね。
※思えば、「ある言葉を漢字で書くと?」のカテゴリも記事が増えてきました。
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