草冠に矛で茅!読み方から意味・言葉・名前の使い方まで総特集
今回は、随分と時間が空きましたが「草冠の漢字」で記事を書きたいと思います。
「草冠の漢字」を以前に書いたのは、なんと、昨年の9月中旬以来となります。
その漢字が「茅」です。草冠に「矛」で構成されるモノです。
昔は通勤の際に「茅場町」なんて都営浅草線の駅があったことを思い出しました。
この漢字、「芽」という漢字に似ていませんか?「茅」と「芽」、並べてみると違うんですが、一見、同じ漢字に見えてしまいますね。
ちょっともやもや感があります。
それはそれとして、この草冠に矛の「茅」について、読み方から意味・言葉、そして、名前での使い方まで総特集したいと思います。
どうか、最後までご一緒にご覧になってくださいませ。
草冠に矛といえば茅!漢字の読み方や全体像をまずはチェック
最初に、茅の意味と読み方を明確にしましょう。
蒼の読み方と意味
茅
画数 :8画
音訓:ボウ ちがや かや(日本語だけ)ち
意味
①{名詞}ちがや。草の名。イネ科チガヤ属の多年草。チガヤ。白茅(ハクボウ)。②{名詞}かや。草の名。チガヤ・ススキなど細い穂先の出るイネ科の総称。屋根を葺くのに用いる。③{名詞}かや。かやで葺いた屋根。かやぶき。また、その家。④{名詞}先の細い雑草。⑤姓の一つ。
日本語だけの意味・用法
(名付)かや ち
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
「茅」の音読みは「ボウ」で、訓読みは「ちがや」「かや」です。日本語だけの訓読みに「ち」があります。
意味は5つありますね。
①「ちがや」は、古代、祭りの供物や礼物を包むのに用いられたそうです。
②の意では、①と同様、草の名称ですが、特定の植物名ではなく、「細い穂先の出るイネ科の総称」を指しています。
冒頭で述べた「茅場町」の「茅場」とは、「屋根を葺くのに用いる茅を刈る場所」を示しますので、昔は、この一帯が茅の野原だったのでしょう。
また、「茅の根は薬用にしていた」との一文がありますが、下記のサイトにもあるように事実のようです。
根茎は消炎,利尿,止血作用があり,膀胱炎,腎炎,むくみ,水腫,脚気,吐血などに用いる.若い花穂は止血作用があり,吐鼻血,血尿,喀血などに用いるほか,子供の咳止めにもなる.
チガヤ|熊本大学薬学部薬用植物園
③は、下記のような「かやで葺いた屋根」です。日本人だと、どこかで見たことがあるでしょう。
④の意には特に解説は不要ですね。
⑤は、姓の名称です。「茅」さんがいることを示しています。
茅の書き順を見てみましょうか。
草冠を書いてから矛を書きます。書き順は問題はありませんね。
もっと詳しく知ろう!茅の漢字としての由来や成り立ち
茅の字源です。
茅=「矛(ム・ボウ 突き進む)」+「艸(くさ)」(形声)。
形声とは、漢字の六書(リクショ)の一つ。発音を表す文字と、意味を表す文字とを組み合わせて、新しい文字を作る方法。
この意は、「敵に突き進む矛のように先の尖った葉をもつ草を示す」です。
参考:上級漢和辞典 漢字源 学研
「かや」の語源は、『「刈り屋」即ち、刈って屋根を葺くモノの意』から来ているようです。
なお、「かや」に「萱」という漢字を当てる場合があります(パソコンでも変換で出てくる)が、これは誤用であり、「萱」はユリ科のカンゾウ(ワスレナグサ)を指すんです。
参考:新明解語源辞典
漢字で「茅」と書き、尖った葉が垂直に立っている様子から、矛に見立てたものである
チガヤ|ウィキペディア
ウィキペディアには、上述した字源と同じことが書いてありますね。
茅はどんな植物か?
ここでは、「ちがや」について見ていきます。
No machine-readable author provided. Keisotyo assumed (based on copyright claims)., CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
チガヤはイネ科の雑草です。
しかも、地下茎を伸ばして繁殖するので、撲滅するのが厄介なんですって。
世界の最重要害草10種のうちの1種にあげられています。
緑化植物としてのチガヤ|兵庫県立農林水産技術総合センター
根茎が土中を密に横走することから表層土の浸食防止に効果があり、我が国の気候風土に合った地域生態系の攪乱が少ない在来種であることから、緑化植物として積極的に利用できます。
ウムム、撲滅は難しい雑草ですが、逆に、地下茎が表層土の浸食防止に効果があるんですな。
しかも、在来種なので、緑化植物としてのメリットもあるんですね。
和名チガヤの名前の由来は、その繁殖力即ち多く群がって生える様子から、「チ」が「1,000(千)」を表して、「千なる茅(カヤ)」の意味と言われます。
分布ですが、日本では北海道から琉球列島までの全土で見られます。
多年草で、日当たりのよい空き地に群生し、白い穂を出します。
チガヤの花言葉
ちょっとした日当たりの良い場所に群生している「茅」の花言葉を次に示します。
- 子どもの守護神
- 親しみ深い
- みんなで一緒にいたい
どうやら、これらの花言葉は、チガヤが子供達が仲良く遊ぶ場所に生えているため付いたのではないでしょうか。
ひとつずつ、簡単に、その謂れを見ておきます。
子どもの守護神
チガヤの穂には糖分が含まれているので、昔は子供が遊びながら摘まむ噛んで甘みを楽しむおやつでした。
「チガヤ」は、子供達を脇から見守ってくれる姿から「子どもの守護神」となったのです。
親しみ深い
こちらは、それこそ、日本のどこでもその姿を見ることができることから来たのでしょう。
みんなで一緒にいたい
ご存じのように、「チガヤ」は地下茎でつながっており群生しています。
この繁殖力は困りものですが、そこから「みんなで一緒にいたい」との花言葉になったのです。
チガヤの利用
チガヤは、人間との接点が多く、次のように利用されていました。
- 茎葉は乾燥させて屋根を葺く
- 成熟した柔らかな穂は火打石で火をつけるときの火口(ほくち)に使われた
- 乾燥した茎葉を梱包材とした
- 根茎を日干し、陰干した茅根(ぼうこん)は利尿、消炎、浄血、止血に効用がある生薬
- 花穂の絹糸状の毛を切り傷などの患部につけて止血に役立てる
参考:チガヤ|ウィキペディア
ちなみに、こめへんに宗で「粽(ちまき)」という漢字があります。
この「粽」の由来なんですが、元々は、今、解説した「茅(チガヤ)」の葉で餅を巻いたので「ちまき」と呼ばれたことから来ていると言われています。
米へんに宗で粽については、別途、記事にしています。どうかご覧ください。
茅のつく言葉
蒼は植物ではないので、蒼のつく言葉を見ていきましょう。
かやのつく言葉 | 読み | 意味 |
---|---|---|
茅巻 | ちまき | (日本)もち米・米の粉のこねたものをササの葉などで巻いて、蒸した食べ物。端午の節句に食べる。 |
茅屋 | ボウオク | かやぶきの家。また、自分の家を謙遜していうことば。 |
茅柴 | ボウサイ | ①チガヤとシバ。②アルコール分の少ない、悪い酒。 |
茅斎 | ボウサイ | かやぶきの部屋。 |
茅司 | ボウシ | 便所のこと。かわや。 |
茅茨 | ボウシ | ①チガヤとイバラ。ともに屋根を葺く材料とする。②チガヤとイバラで葺いた屋根。③粗末なあばら家。 |
茅茹 | ボウジョ | 多くのかやの根は、その中の一本だけを引き抜くことができないほどに互いに絡まりあっていること。 |
茅椒 | ボウショウ | かやと山椒。屋根や壁をつくる材料。 |
茅塞 | ボウソク | かやが生い茂って、道がおおわれてふさがれる。欲のために本心がおおわれること。 |
茅亭 | ボウテイ | かや葺きのあずまや。 |
茅店 | ボウテン | いなかなどにある、かやぶきの茶店。 |
茅棟 | ボウトウ | かやぶきの家。 |
茅門 | ボウモン | ①かやぶきの屋根の門。②転じて、自分の家を謙遜していうことば。 |
茅の付いた言葉を10以上並べました。
トップの「茅巻」は皆さん、ご存知でしょうが、この漢字表記はなかなか見ないと思います。少し上の、豆知識に、その内容が載っています。
茅屋は「かやぶきの家」なんですが、謙遜して自分の家を言うとき中国ではこういうんですな。同じ意で「茅門」があります。
かやぶきの○○という意の言葉が、次のようにたくさん出ました。
・茅屋 他に、茅舎(ボウシャ)、茅庵(ボウアン)、茅宇(ボウウ)、茅盧(ボウロ)とも
・茅斎 他に、茅室(ボウシツ)、茅堂(ボウドウ)とも
・茅亭
・茅店
・茅棟
・茅門
茅柴に「アルコール分の少ない、悪い酒」の意があるのは、火のついたチガヤやシバはすぐ燃え尽きてしまうように、悪い酒は酔ってもすぐさめてしまうことから来ています。
茅茹は、上述した意味から、同じ類いのものが互いに関連し、連なりあっているたとえに使われます。
名前に使われる際のポイントは
茅は人名漢字なので、名前に付けることができます。
上述しましたが、茅の漢字の成り立ち・由来でも見たように、「茅」は強い植物であることから、健やかな成長・くじけない強さ等を連想できます。
同じく上述した「茅」の花言葉は、「子どもの守護神」「親しみ深い」「みんなで一緒にいたい」でしたので、親しみやすさや朗らかな様子を連想できます。
また、古くから人間との付き合いがあり、かやぶき屋根や上記で言った子供のおやつ・生薬など、人の役に立つ優しさ、素直さ、穏やかさ等をイメージできます。
その他にも、子どもが遊ぶ空き地や野原などに群生していることが多いため、豊かな情緒や活発でエネルギッシュな印象も与えます。
以上から、次の印象が得られるでしょう。
- 健康
- 成長
- 朗らか
- 優しさ
- 温かい
- 親しみ
- 活発
このように、様々な連想が出来る「茅」は名付けのさい、次のような願いを込めることが出来そうです。
- 温かみがあり、親しみやすい人になれますように
- 朗らかで病気や怪我なく健やかに成長できるように
- 優しさを持つ一方、活発な人になるように
次に、男女別に名前の例をいくつか挙げておきます。
男の子の名前例
- 茅杜(かやと)
- 大茅(だいち)
- 茅隼(ちはや)
最初の読みが「かや」で、2,3番目の読みは「ち」にしました。
「かやと」の「と」には、「斗」、「富」などが使えるでしょう。
女の子の名前60爺ベスト3
- 茅(かや)
- 茅寧(かやね)
- 茅夏(ちなつ)
女の子の名前の読みは、1,2番目が「かや」、最後が「ち」です。
「かやね」の「ね」には「音」など女の子らしい漢字が選べます。「ちなつ」の「なつ」にも「奈津」「那津」などがありますね。
最後に
草冠に矛で茅の読み方と意味、その他について述べてきました。
意味には、草の名前が二つあり、「チガヤ」と「かや」があり、「チガヤ」という植物、「かや」は細い穂先の出るイネ科の総称でしたね。
字源は「敵に突き進む矛のように先の尖った葉をもつ草を示す」でしたが、チガヤにも「尖った葉が垂直に立っている様子から、矛に見立てた」という説明があり面白かったですね。
蒼は植物を示していないので、蒼のつく言葉を集めたら、なんと24もの数に上りました。知っている言葉もいくつかありましたよ。
冒頭で言いましたが、60爺と同じように茅と芽を勘違いした方がいらっしゃるようですな。
※気づけば草冠の漢字の記事も増えてきました
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