恵に旧字体はある!その表記の歴史からパソコン等への打ち方を総特集
「恵」という字は、豊かさや優しさを表す文字として古くから親しまれていますが、「恵」に旧字体があることをご存じでしょうか?
実は、現在の「恵」とは異なる旧字体が存在し、人名漢字としても使われてきた歴史があります。
しかし、その背景には、時代の流れとともに変遷を遂げてきた漢字の複雑な経緯が隠されています。
この記事では、「恵」の旧字がどのような形で存在してきたのか、そしてなぜ現在の「恵」へと変わっていったのかを紐解いていきます。
さらに、現在でも人名漢字として使用が認められている旧字の実例を挙げ、その意味や成り立ちについて詳しく紹介します。
普段何気なく目にしている漢字の歴史と奥深さに触れ、「恵」の旧字にまつわる魅力を再発見してみましょう。
「恵」の旧字「惠」
漢字の「恵」、「ケイ」という音読み、「めぐ・む」「めぐ・み」という訓読みを持ち、「温かく慈しむ、思いやりがあるさま」という意を持っています。
「恵比須(えびす)」や「恩恵(おんけい)」「知恵(ちえ)」など、「恵」には温かいイメージがあります。
そして、この「恵」には、「惠」という旧字が存在します。
いや-!旧字の存在する漢字は「真」以来のことですね。その間に調べた3つの漢字には旧字はありませんでした。
⇒ 真の旧字は?
新・旧字対照表|立命館大学にも、「恵」は出ています。
また、この漢字の部首は「こころ」で、漢字の下にあるので、特に「したごころ」と呼ばれます。イメージが一気に悪くなる気もしますが、この「したごころ」で記事を書いています。
この記事の中では、「恵」は出てきませんでしたが……。
恵は10画、惠葉12画の漢字です。
その書き順を見てください。
旧字の「惠」は、ご覧の通り「恵」より2画多い漢字です。
字源を見ますと、「惠」=「叀(丸く包み込む)」+「心(こころ)」で構成される会意文字で、相手を自分の方へ抱き込む心、相手を丸く包み込むような温かい気持ちを示す漢字なのです。
「叀」は、繊維をよって糸をつむぐ器具なんです。
この形態から「丸く回る」「丸く巻く」というイメージがあります。
ここに、心がついて、「惠」は上記のような意味を持つようになったのです。
恵/惠の名づけに対する変遷
さて、新字体である「恵」と、その旧字体「惠」ですが、この漢字が名付けに使用できる出来ないで、過去に色々と変遷があったようです。
- 昭和23年1月1日戸籍法施行規則
- 名づけに使える漢字は、この時点の当用漢字表1850字に制限される
・旧字の「惠」は、当用漢字表に収録されていた
・新字の「恵」は、当用漢字表には収録されていなかった
- 昭和24年4月28日当用漢字字体表
- 新字の「恵」が収録、旧字の「惠」は外れる
⇒旧字の「惠」も新字の「恵」もどちらも子供の名づけに使ってよい(昭和24年6月29日法務府民事局)
- 昭和45年12月23日福島家庭裁判所
- 旧字「惠」は「常用平易な文字ではない」ので名づけに使えない
- 昭和46年3月4日仙台高等裁判所
- 福島家庭裁判所が「惠」を「常用平易な文字ではない」としたことに関しては、これを追認せず
- 昭和56年10月1日
- 新字の「恵」は常用漢字、旧字の「惠」は人名用漢字となり、出生届に書いてOKとなった
上記内容が現在も続いており、新字体「恵」、旧字体「惠」共に、名付けに使用できるのです。
次の章では、旧字の「惠」のパソコン、スマホでの打ち方を紹介します。
歴史的仮名遣い「ゑ」
歴史的仮名遣いでの「ゑ」をご存知でしょうか?
平仮名の一つで、五十音図ワ行の第4の仮名のことです。
現代仮名遣いでは、「え」として扱われてしまいますが、悠久の昔では、発音が異なっていたんですって。
この「ゑ」は、「惠」の草書体から産まれたのです。
そんな「ゑ」について記事にしていますので、よろしければご覧になってくださいませ。
⇒ 「ゑ」とは何?読み方から意味・打ち方・「え」との違いを総特集
さて、次の章からは、「惠」をパソコン・スマホ及びTEPRAでどう入力するか、その打ち方を手順を交えてご紹介します。
これを読めば、「恵」の旧字体「惠」をそれぞれの媒体で簡単に入力できますよ!
パソコンでの「惠」の打ち方
文字変換とUnicodeによる打ち方の2つをご紹介します。
文字変換による「惠」の打ち方
始めに文字変換による「惠」の打ち方です。
変換をかける文字は、新字と同じ読みの「めぐみ」です。
それでは、「惠」の打ち方の手順を見てください。
- 「めぐみ」入力
- 日本語で「めぐみ」と入力します。
- 変換候補から「惠」を探す
- 変換キーを数度押すと変換候補が現れます。
目指す「惠」を探します。
見つけたら、クリックしましょう。
- 「惠」入力完了
- 「惠」が入力されました。
「惠」を入力するには、これが一番簡単な打ち方だと思います。
「めぐみ」を忘れないで下さいね。
Unicodeによる「惠」の打ち方
Unicodeという4桁の数字を打ち込む打ち方です。
手軽なんですが、Unicodeを覚えておかねばならないという難点があります。
- 「60E0」入力
- 日本語で「60e0」と入力します。
ご覧のように「60え0」となりますが気にしないでください。
- 変換候補から「惠」を探す
- F5キーを押すと変換候補が現れます。
目指す「惠」を探します。
見つけたら、クリックしましょう。
- 「惠」入力完了
- 「惠」が入力されました。
日本語でUnicodeを入力してF5キーを押すだけです。注意点は「日本語で」という部分!
これだけで、望む漢字を入力できます。
しかし、Unicodeを覚えるのが最大の難関ですね!
「惠」のUnicodeですが、今入力した「60E0」の他に、「5610」、「582A」の2つ、合わせて3つのUnicodeがあります。
ちなみに、アルファベットは大文字でも小文字でも問題ありません!
先ほど言った「日本語」で!ということだけは覚えておいてくださいね。
スマホでの「惠」の打ち方
スマホでは「惠」を出すのに、文字変換による打ち方が出来ます。
変換をかける文字は、パソコンと同じく「めぐみ」ですね。
- 「めぐみ」入力
- 日本語で「めぐみ」と入力します。
- 変換候補をタップ
- 変換候補を表示するため、「ⅴ」をタップしましょう。
- 変換候補から「惠」を探す
- 変換候補が表示され、「惠」が見つかったらクリックします。
- 「惠」入力完了
- 「惠」が入力されました。
スマホでも、問題なく「惠」を表示できました。
テプラでの「惠」の打ち方
今度は、テプラ(TEPRA PRO SR300)での「惠」の打ち方を紹介します。
次の2つの打ち方があります。
- 文字変換による打ち方
- JISコードを指定する打ち方
これらの打ち方を手順に従って、ご紹介します。
文字変換による打ち方
文字変換によって「惠」を表示する方法です。
入力する文字は、パソコン、スマホと同じ「めぐみ」です。
- 「めぐみ」入力
- 日本語で「めぐみ」と入力します。
- 「変換」ボタン押下
- 「変換」ボタンを押して候補を表示します。
- 「惠」で「選択」ボタン押下
- 「↓」ボタンを押していくと「惠」が候補に表れますので、「選択」ボタンを押すことで表示できます。
- 「惠」入力完了
- 「惠」が入力できました。
JISコードを指定する打ち方
次は、JISコードを指定する打ち方です。
パソコンでのUnicodeを指定する打ち方と似ていますが、テプラ独自の打ち方になります。
- 「シフト」+「あ・ア」キー押下
- 「シフト」を押しながら、「あ・ア」キーを押します。
コード入力画面が表示されます。
- 「5610」入力
- コードに「5610」を入力します。
取扱説明書をダウンロードして、「惠」を検索しましょう。なお、見つからない場合、そのTEPRAで「惠」を入力することは出来ません!
- 「惠」押下
- 「惠」が候補に表れますので、「選択」ボタンを押します。
- 「惠」入力完了
- 「惠」が入力できました。
コードさえわかっていたら、こちらの方が簡単ですね。その方法は、次の記事に詳しいです。
恵の異体字
さて、恵の旧字体について見てきましたが、その他に、漢字には「異体字」という字体があります。
※異体字とは、ひとことでいえば、標準の字体とは異なる字体のことです。
ですから、旧字も異体字の仲間となるのです。
さて、「上級漢和辞典 漢字源」によると、惠には、次の異体字があります。
僡
これ、Unicodeの「50E1」で出せます。
パソコンでの表示手順は、上述した旧字体の『Unicodeによる「惠」の打ち方』と同様です。
「60E0」の代りに「50E1」を打つことで「僡」を入力することができます。
このように異体字を出せましたが、この異体字は「環境依存」です。この場合、使用しているフォントによっては、表示できない場合があるので注意が必要です。
スマホでは表示手段が思いつきませんので、本記事の「僡」をコピー&ペーストするのが良いかと思います。
以下の記事では、「慶」の旧字について紹介しています。合わせて、ご覧ください。
最後に
恵の旧字である「惠」について、その意味や書き順から、恵と惠の数奇な歴史を見てきました。
現在では、新字体も旧字体も名付けに使用できます。
その後に、旧字である「惠」のパソコン・スマホ・TEPRAでの打ち方を紹介しました。
やり方としては、パソコン・スマホ・TEPRA共に、文字変換で表示できることが分かりました。パソコンではunicodeでも出せますが、コードナンバーを覚えるのが難点です。
一番最後に、異体字についても簡単に触れておきました。
※思えば、「漢字の旧字」の記事も増えてきたようです。
参考資料
・上級漢和辞典 漢字源
・人名用漢字の新字旧字第64回 「恵」と「惠」
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