オットセイの漢字は難読!普通の人は絶対書けない表記の理由は中国語
オットセイという言葉を耳にすれば、海を泳ぐ愛らしい動物の姿を思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、これを漢字で書けるかと聞かれたら、答えられる人はほとんどいないのではないでしょうか。
この表記は、ほとんどの方が驚かれる難読漢字です。
この漢字は、一見すると日本語らしからぬ異質さを感じさせますが、その背景には中国語由来の歴史が深く関係しているのです。
本記事では、オットセイの漢字がなぜこれほど難読なのか、その由来や背景を掘り下げます。
普段何気なく使っている動物名が、実は奥深いストーリーを持っていることに驚かれるかもしれませんよ!
それでは、どうぞ最後までご一緒にご覧くださいませ。
オットセイを漢字で書くと
それでは、オットセイの漢字表記をご覧ください。
膃肭臍
ちなみに、この漢字はパソコン、スマホ共に「おっとせい」で漢字変換できますのでご安心ください。
このさっぱりわからない漢字「膃」「肭」「臍」を3つ並べると「オットセイ」となるのです。
最後の漢字は「へそ」、人間というか、哺乳類が必ず持っているモノですな。
始めの漢字と二番目のそれは見たことのない漢字です。
何で、これが「オットセイ」になるのでしょうか。
ただ、この言葉、随分古い時代からあるようで、室町時代文明年間以降(1469年~1487年)に成立した『文明本節用集』に「膃肭臍(ヲットッセイ)」の表記が見られるそうです。
さらに、上図にあるように、江戸時代の『和漢三才図会』でも「をっとつせい」で解説されています。
「膃肭臍」の由来
アイヌ語で「オットセイ」を意味する語「onnep(オンネプ)」を中国で音訳したものが「膃肭」です。
そして、オットセイの陰茎、睾丸、臍(へそ)の部分を「膃肭臍」という薬としたのです。
これが日本に持ち込まれ、薬だけでなく、動物そのものを指すようになったんです。
オットセイは一匹の牡が多数の牝を引き連れて種付けする所から精力絶倫とされ、「膃肭臍」は、強壮剤や媚薬として用いられました。
『柳多留拾遺』の中でも「おっとせいころばぬための薬の名」などとあり、江戸時代(寛政8〜9年(1796〜97))の珍薬の一種であったそうな。
江戸時代初期の慶長15年(1610年)と慶長17年(1612年)に蝦夷地の松前慶広が徳川家康に海狗腎を二回にわたり献上し、家康の薬の調合に使用されたという記録も残っている(『当代記』)
オットセイ|ウィキペディア
あの徳川家康が、オットセイの漢方(海狗腎)を受け取り、薬の調合に使用していたなんて凄いですね。
なお、オットセイは、既に述べたアイヌ語の音訳だった「膃肭臍」に変わり、現代の中国語では「海狗」と呼ばれるそうです。
海獣では「アザラシ」の漢字、「トド 人間食べる」について記事にしています。
次の章では、海外では「オットセイ」を何と呼ぶか見ておきましょう。
海外ではどんな名前
世界の言葉では、「オットセイ」を何と言うか調べてみました。
外国語 | スペル | 発音 |
---|---|---|
英語 | fur seal | フーシアル |
ドイツ語 | Seebär | スリーバー |
オランダ語 | pelsrobben | ペーソルベン |
フランス語 | otarie à fourrure | オタリアフォル |
イタリア語 | sigillo di pelliccia | シギノリペンリッシャ |
スペイン語 | lobo marino | ロボマリーノ |
ポルトガル語 | foca | フォーカ |
スウェーデン語 | pälssäl | パルサル |
ノルウェー語 | pelssel | ペルセン |
中国語(繁体) | 海狗 | ハイゴウ |
中国語(簡体) | 海狗 | ハイゴウ |
ロシア語 | морской котик | モリコイコーティック |
英語は「fur seal」ですから「毛皮アザラシ」となり、毛皮のあるアザラシの意味です。アザラシより、質の良い毛皮が取れるところからの命名です。
イタリア語、フランス語は3段階のスペルですな。スウェーデン語、ノルウェー語は、スペルが似通っている気がします。
他のヨーロッパ系の言語も、スペルも発音も全く違うんですね。
中国語は、繁体と簡体で表記も発音も同じで、この表記は、既に述べていました。
ロシア語は、もう全然違いますな!スペルも発音も、いつものように全く独自です。
最後に
オットセイの漢字がどんなものかを見てきました。
「膃肭臍」をみても、知らないと何と読むか答えられないでしょう。また、オットセイを漢字で書くのも非常に難しいですよね。
その由来は、アイヌ語の発音を中国語に音訳したモノでした。その漢方が日本に入ってきた際に、オットセイを指すモノに変わったんですね。
それでも、オットセイを漢字で書く必要性はほとんどないので雑学として覚えておけばいいでしょう。
※気づけば動物の漢字の記事も増えてきました
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