寿司の数え方は?現在は「貫(かん)」が主流だが歴史は浅かった
寿司を注文する際、私たちは自然と「貫(かん)」という単位を使います。
「寿司を2貫ください」といった注文が当たり前のように聞こえますが、この「貫」という数え方、実は寿司の歴史全体から見ると比較的新しいものだということをご存じでしょうか?
そもそも、寿司には時代や地域によってさまざまな数え方が存在していました。
「貫」が主流となった背景には、江戸時代から続く寿司文化の進化や商習慣の変化が大きく関わっています。
本記事では、「貫」という単位の起源や、他にどのような数え方が使われていたのかを紐解きながら、寿司と日本人の密接な関係を深掘りしていきます。
寿司の数え方に隠された歴史の一端を、一緒に探ってみませんか?
寿司の数え方は?
寿司の数え方は、寿司の種類がたくさんあることから、多岐に渡るようです。
寿司 | 数え方 |
---|---|
なれ寿司 | 匹(鮒や鮎の魚が主体となるため) |
かぶら寿司・大根寿司 | 樽(漬け込む樽を数える) |
巻き寿司・押し寿司 | 切る前は「本」、切り分けると「切れ」「個」「つ」 |
茶巾寿司・稲荷寿司 | 個 |
手巻き寿司 | 本 |
折り箱に入った寿司 | 折 |
寿司桶に盛り合された寿司 | 桶 |
おおお、なるほど、寿司の種類によって、その数え方が変わるんですね。
普段、我々が目にする巻き寿司や、押し寿司などは「本」で数えますよね!
稲荷ずしも「個」で数えます。
寿司桶に入ったのは、まさに「桶」で数えていいんですね。
ただ、この中に、「貫」がないのは何故という方がいらっしゃると思いますので、章を変えてご紹介します。
貫という数え方
現在、「握り寿司の数え方は?」と聞くと「貫」と答える方が大多数だと思います。
なぜ、寿司を数えるのに「貫」という言葉が使われるのでしょうか?
始めに、「貫」を広辞苑で調べても次の3つが出るだけで、寿司の数え方の単位という意味はありません。
- 尺貫法の目方の基本単位。1貫は3.75kg。1000匁
- 銀貨を数える単位。銭1000文を1貫とする
- 00室町時代の武家の知行高を表示する単位
この「貫」ですが、どうやら大昔から使われてきた数え方ではないようです。
江戸時代の資料(※)を見ても、この「貫」は載っていないとも言われています。
※
「絵本江戸土産」の「両国橋納涼」にある「は●つけすし」
毛ぬきずしと云うは、握りずしを一つづゝくま笹に巻きて押したり。価一[つ]六文ばかり。毛ぬきずしの他は貴価のもの多く、鮨一つ価四文より五、六十文に至る。
「守貞謾稿 巻之六(生業下)」喜田川守貞著「近世風俗志」
ご覧のように、「守貞謾稿」(嘉永6年1853年)では、寿司を「つ」で数えていたのがわかります。
また、ずっと後、志賀直哉の「小僧の神様」(1920年)という小説の中でも、にぎり寿司を「ひとつ」と数えていました。
握鮓でも、出来にやア箱鮓でも巻鮓でも可いが、チヨイと二切か三切程持ツて来てんか
『滑稽大和めぐり』曽呂利新左衛門
曽呂利新左衛門の『滑稽大和めぐり』では、握鮓(にぎりずし)を「二切、三切」という数え方をしています。
現在なお、にぎりずし一人前に十個の基本数(戦前は、にぎりずし五個と、のり巻三つ切りを二切れが基本数で、これをすし屋は「五カンのチャンチキ」といった。
すし技術教科書 江戸前ずし編第一版 昭和50年(1975年)
昭和50年(1975年)の記録で「カン」が見られますが、「貫」という表記ではありませんね。
そもそも、「貫」の由来がはっきりしないそうです。
上記の「貫」を基準にしたら3.75kg……、こんな寿司は握れないし食べられません。
実は寿司の単位の「一貫」というのは割と新しい単位で、バブルの最末期・平成3年(1991)頃から流布しはじめた極めて新しい言葉なのである。
寿司の「一貫」しない単位のハナシ
1990年前後のグルメブームに持って一気に独り歩きを始めます。……「カン」が、あたかも寿司専用のものであるかのようにテレビや雑誌に登場するようになりました。
寿司の数え方|日本の助数詞に親しむ
これらの話が真実だとすると、寿司の数え方の助数詞「貫」は、バブルの産んだ産物なんですね。
なお、1貫は同じ寿司が1個なのか2個なのかという議論があるようですが、次のような資料もあり、1個だと思われます。
「1カン」ということばは料理人が用いる隠語(符丁)で「1個」のことを指す、と書いてある昭和初期の資料があります。このことから、もともとの意味としては「1カン」は「1個」を指したものと想像されます。
にぎりずし「1カン」?|NHK放送文化研究所
但し、これが絶対ではなく、店によって違うというのが実情のようです。
通ぶらずに「つ」や「個」で頼めば、余計な詮索から逃れられそうですね。
最後に
寿司の数え方を見てきました。
これを聞くと大体の方は「貫」と答えるんですが、実際に調べてみると、寿司の数え方は多岐に渡ることが分かりました。
肝心の「貫」なんですが、過去の記録を見ていくと、ほとんど残っていないというか、最近になって表れた数え方というのが実情のようです。
日本語というのは、いろいろな助数詞があって、特別なものほど爆発的に広まるようですね。
※思えば、「数え方」の記事も増えてきています。
参考:
すしの歴史/江戸の握り寿司文化と華屋与兵衛
「一カン」と数えるようになったのはいつ頃?
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