梅の別名の多さに仰天!日本文化に根付く呼び方とその由来を徹底紹介
日本人に愛され続ける「梅」。その花は春の訪れを告げ、実は料理や薬として古くから人々の生活に寄り添ってきました。
しかし、梅が持つ魅力はそれだけではありません。
「梅」には、さまざまな美しい別名が存在することをご存じでしょうか?
和歌や俳句などの文学作品にも数多く登場し、それぞれの呼び名には自然や風景を映した深い意味や想いが込められています。
また、季節感を感じさせるこれらの別名は、梅の花や実がもつ独特の風情をさらに引き立てています。
本記事では、日本文化に深く根差した梅の別名について、その由来や背景に触れながら詳しく紹介していきます。
さあ、それでは、ご一緒に梅の別名の世界へ旅をしてみましょう。
梅の別名は?
梅には、「春告草(はるつげぐさ)」や「花の兄(はなのあに)」など、たくさんの美しい別名が存在します。
これらの呼び名は、単に梅を指すだけではなく、その季節感や役割、花が持つ象徴的な意味を表現しています。
日本人にとって、梅は単なる植物以上の存在であり、古くから文学や生活文化の中で特別な地位を占めてきました。
始めに、由来等が見てとれた梅の別名について見ていただきましょう。
№ | 梅の別名 | 別名の読み | 由来など |
---|---|---|---|
1 | いひなしの花 | いひなしのはな | 春の季語で梅の異名です |
2 | 香散見草 | かざみぐさ | 香をかぐ樹木という意。順徳院(『蔵玉和歌集』) |
3 | 風待草 | かぜまちぐさ | 東風を待って咲くことから |
4 | - | かとりぐさ | 古語からですが、情報が見つかりません……。 |
5 | 香栄草 | かはえぐさ | 梅の古名としか……。旅館(富士屋旅館等) |
6 | 寒梅 | かんばい | 寒中に咲く梅のこと |
7 | 好文木 | こうぶんぼく | 晋の武帝が学問に親しむと花が開き、怠ると開かなかったという故事から |
8 | 木の花 | このはな | 木に咲く花。特に、桜の花や梅の花。 |
9 | 清香 | せいこう | 雪の中で、清らかな香りを振りまく花のことです |
10 | 清友 | せいゆう | ウメの別称とあります |
11 | 清容 | せいよう? | 漢詩からですが、情報が見つかりません……。 |
12 | 世外佳人 | せがいかじん | 梅の異称のひとつです |
13 | 告草 | つげぐさ | 春の訪れを告げる代表的な花(春告草に同じ) |
14 | 天下尤物 | てんかのゆうぶつ | 「尤物」は「同類の中で、特にすぐれたもの」をいう言葉です |
15 | 匂草 | においぐさ | 香りがよいところから |
16 | 初名草 | はつなぐさ | 他の花に先駆けて咲き、初めに名を聞くところから |
17 | 花 | はな | 現代は「花=桜」ですが、平安時代より前は「花=梅」でした |
18 | 花兄 | はなのあに | 他の花に先立って咲くところを兄弟に見立てました |
19 | 花魁 | はなのさきがけ | 百花魁と同じ意を持ちます |
20 | 春告草 | はるつげぐさ | 春の訪れを告げる代表的な花 |
21 | 百花魁 | ひゃっかのさきがけ | 梅の異名で、早春を告げる花を指します |
22 | - | ほこのはな | 古語からですが、情報が見つかりません……。 |
23 | 緑花 | みどりのはな | ウメの別称とあります |
24 | 木母 | もくぼ | 植物「うめ(梅)」の異名と出ています |
別名の読みで【あいうえお順】にしています
おおお、いろいろとあるものですな。24もの別名が見つかりました。
古風な漢字の名前が多いようですが、どんなところから出てきたのかを少し、追いかけてみましょう。
「古語」と「漢詩」のジャンルにまとめてみましたので、ご覧になってください。
※別名の多いモノが他にもあります()数字が別名の数です。梅は24ですからダントツですな!
古語に見える梅の別名
始めに、雅やかな日本の古語から、梅の別名を一覧にしました。
イヒナシノハナ | カザミグサ | カゼマチグサ | カトリグサ |
カハヘグサ | コノハナ | ツゲグサ | ニホヒグサ |
ハツナグサ | ハナ | ホコノハナ | ミドリノハナ |
最初に見ていただいた一覧表のうち、かなりの数の別名が古語から来たことが分かります。
「カザミグサ」は、『蔵玉和歌集』に収められた「山里の軒端にさけるかざみぐさ 色をも香をも誰に見はやさん」から採られています。
次の「カゼマチグサ(風待草)」は、「東風」即ち「春風」を待って咲く花を言っています。
この東風、二十四節気七十二候のスタート、「東風凍を解く(はるかぜこおりをとく)」に登場するモノです。
なお、この東風については以下の記事があります。
「カトリグサ」は、情報を見つけることが出来ませんでした!
「カハエグサ(香栄草)」は梅の古名、別称としか情報がないのです。
ただ、この字を見ていくと、梅の香りが良いことから付けられたとみて間違いないでしょう。
読み方については、「かばえぐさ」「こうばえぐさ」なんかもみえますね。
あとは、旅館(湯河原・富士屋旅館、那須・「おやど小梅や」等)の部屋の名前に「香栄草」が見えます。
「コノハナ」の漢字表記は「木の花」を示しましたが「木花」もあるようです。
木に咲く花として、サクラやウメの別称です。
ツゲグサ(告草)は、「春の訪れを告げる代表的な花」が、その由来です。
別に、「春告草」という別名もあり、由来は同じですね。
ニホヒグサ(匂草)は、梅の香りがよいところから付けられた別名でしょう。
別名の由来は、「カハエグサ(香栄草)」と同じですね。
ハツナグサ(初名草)は、まだ春が訪れぬうち、他の花に先駆けて咲くことから、一年で初めに名を聞く花と言う謂れがあります。
たった一文字の「ハナ(花)」と言う別名もあります。
現代では、「花」と言うと「桜」となりますが、奈良時代までは「花」=「梅」だったのです。
「ホコノハナ」は、情報を見つけることが出来ませんでした!
最後に「ミドリノハナ」です。漢字表記は「緑花」となるようです。
梅の別称即ち別名と「緑花|weblio辞書」に出ています。
漢詩に見える梅
次は、漢詩の中にある、梅の別名を一覧にしました。
清友 | 清容 | 天下尤物 | 世外佳人 |
好文木 | 寒梅 | 百花魁 | 清香 |
花魁 | 花兄 | 木母 |
清友は「せいゆう」と読み、コトバンクに「梅の異称」を見つけました。
由来等は、残念ながら見つかりませんでした。
清容だけは、梅に関わる内容を見つけることが出来ませんでした!
天下尤物は「てんかのゆうぶつ」と読みます。
植物学者 牧野富太郎博士の「植物記」の中で「梅の花は天下の尤物(ゆうぶつ)だといわれます」と述べられています。
「尤物」は「同類の中で、特にすぐれたもの」をいう言葉ですね。
世外佳人は「せがいかじん」と読み、梅の異称のひとつです。
「世外佳人」とは、梅の香りに誘われ、世俗から離れた異世界から現れた、美しいも儚い麗人ととでも解釈すればいいのでしょうか。
寒梅(かんばい)は、冬に咲く早咲きの梅、つまり、寒中に咲く梅のことで、冬の季語となっています。
「寒梅を手折るひびきや老が肘」という与謝蕪村の歌があります。
百花魁(ひゃっかのさきがけ)は、新島襄(同志社大学創設者)の詩「寒梅」から生まれた言葉のようです。
梅の異名で、早春を告げる花として知られます。
清香は「せいこう」と読みます。
goo辞書に、「雪裏清香(せつり(の)せいこう」があり、梅は、雪が降っている、あるいは、雪の積もっている中でも、すがすがしい香りを振りまいている意です。
花魁は「はなのさきがけ」と読みます。
多くの花に先がけて咲く花で、特に梅の花を指していいます。
花兄は、「はなのあに」と読むのでしょうか?
こちらも、他の花に先立って咲くところから、「梅」のことです。
木母は、「もくぼ」と読みます。
植物「うめ(梅)」の異名と出ていました。
「吉野拾遺」藤親房卿の詩に「春来品物都青容、木母花開香正濃」があります。なんと10歳の時の作だったんですって。
最後に
梅は、古くからその美しい姿や香りで人々に愛され、多くの別名が生まれました。
これらの別名は、日本の四季や自然と深く結びついた文化を映し出しています。
和歌や俳句などに登場する梅は、日本人の自然観や感受性を表現し、現代でも地名や商品名にその名が使われるなど、私たちの生活を彩り続けています。
梅の別名に触れることで、単なる植物以上の深い物語や背景を知り、梅に対する理解がさらに深まるでしょう。
※気づけば「別名」の記事も増えてきました
参考資料
⇒ 梅のプロフィール:月向農園
⇒ 香散見草(梅 花)の こと|近畿大学学術情報リポジトリ
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