ススキの別名を全部公開!古くから親しまれた呼び名とその背景とは
秋の風物詩として知られる「ススキ」。風に揺れるその美しい姿は、日本人の心に深く根付いています。
しかし、「ススキ」という呼び名以外にも、古くからさまざまな別名で親しまれてきたことをご存じでしょうか?
これらの別名には、ススキの特徴や季節感、日本の文化や自然観が色濃く反映されています。
そのため、それぞれの呼び名には深い意味や由来があり、日本語の豊かさを改めて実感させてくれます。
この記事では、「ススキの別名を全部公開!」をテーマに、ススキの美しい呼び名を余すところなくご紹介します。
また、その呼び名がどのようにして生まれたのかを確認したいと思います。
さあ、ススキの別名の世界を一緒に旅してみませんか?
- 1. ススキの別名
- 1.1. 衵の花(アコメノハナ)
- 1.2. 荒草(あらくさ)
- 1.3. 男榧(おとこがや)
- 1.4. 尾花(おばな)
- 1.5. 茅・萱(かや)
- 1.6. 五月雨草(さみだれそう)
- 1.7. 頻浪草(しきなみぐさ)
- 1.8. 袖波草(そでなみぐさ)
- 1.9. 袖振草(そでふりぐさ)
- 1.10. 月並草(つきなみくさ)
- 1.11. 露草(つゆくさ)
- 1.12. 露曾草(つゆそぐさ)
- 1.13. 露見草(つゆみぐさ)
- 1.14. 手切草(てきりぐさ)
- 1.15. 旗薄(はたすすき)
- 1.16. 花薄(はなすすき)
- 1.17. 穂薄(ほすすき)
- 1.18. 美草・真草(みくさ)
- 1.19. 乱れ草(みだれぐさ)
- 1.20. 叢尾花・群尾花(むらおばな)
- 1.21. 群薄・叢薄(むらすすき)
- 2. ススキの方言
- 3. 最後に
ススキの別名
ススキの別名を一覧にして、あいうえお順に並べたのでご覧ください。
ススキの別名 | 読み方 | 異名・別名の辞典 | 広辞苑 |
---|---|---|---|
衵の花 | アコメノハナ | ◎ | ◎ |
荒草 | アラクサ | △ | |
男榧 | おとこがや | ||
尾花 | おばな | ◎ | |
茅・萱 | かや | ◎ | |
五月雨草 | さみだれそう | ||
頻浪草 | しきなみぐさ | ◎ | ◎ |
袖波草 | そでなみぐさ | ◎ | ◎ |
袖振草 | そでふりぐさ | ◎ | ◎ |
月並草 | つきなみくさ | ||
露草 | つゆくさ | △ | |
露曾草 | つゆそぐさ | ||
露見草 | つゆみぐさ | ◎ | ◎ |
手切草 | てきりぐさ | ||
旗薄 | はたすすき | ◎ | |
花薄 | はなすすき | ◎ | |
穂薄 | ほすすき | ◎ | |
美草・真草 | みくさ | ◎ | ◎ |
乱れ草 | みだれぐさ | ◎ | ◎ |
叢尾花・群尾花 | むらおばな | ||
群薄・叢薄 | むらすすき | ◎ |
うーむ、いっぱい別名が出てきちゃいましたね!
20以上も出て来るとは思いもよりませんでした!
それぞれの別名が、「異名・別名の辞典」「広辞苑」に載っていた場合、「◎」を付けています。「△」は意味がススキと関係ない場合です。
それでは、それぞれの別名について簡単な紹介をしましょう。
衵の花(アコメノハナ)
ススキの別称。
衵(あこめ)は公家の装束の内着のことで、肌着と表着の間に「相籠めて」着ることから来ています。
その由来を見つけることは出来ませんでしたが、ススキの穂が持つ繊細さや優雅さが、平安時代の女性の衣服「衵」の薄布の美しさと重ね合わされたのでしょうか。
荒草(あらくさ)
ススキの別称。
別に、荒れ地に生える草という意もありますが、ススキも荒れ地に生える印象があります。
ススキの持つたくましい生態や、荒地でも勢いよく育つ野性味あふれる特徴に由来するのかもしれません。
男榧(おとこがや)
ススキの別称。
この由来についても見つけることが出来ませんでした。
恐らく、ススキは、やせた土地や荒地でも勢いよく成長する強靭な植物であり、そのたくましさや繁殖力が「男榧」という呼称につながった可能性があります。
尾花(おばな)
ススキの異称です。名前の由来は、その見た目にあります。
ススキの穂が動物の尾のように細長くふわふわとした形状をしていることから、この名が付けられました。特に、秋風に揺れる姿は、白銀色の尾のように見えるため、古くから親しまれた呼び名です。
また、「尾花」という名称は日本の文学や詩歌にも登場し、秋を象徴する植物として、情緒的なイメージを持たせています。
ススキが秋の七草の一つに数えられていることも、この美しい別名の由来を支えています。
茅・萱(かや)
屋根を葺(ふ)くのに使われる、イネ科の植物の総称としてのカヤを指します。
ススキは、秋を象徴する植物であると同時に、実用的な役割を果たしていたため、生活に深く根付いた存在でした。
「茅」や「萱」という言葉も、これらの文化的背景からススキと密接に結びついてきました。
ススキは古代から「茅葺き(かやぶき)」の屋根材として利用されてきました。
この実用的な用途から、「茅(かや)」という名がススキを含む植物を指す言葉として定着しました。
五月雨草(さみだれそう)
この「五月雨草(さみだれそう)」は、梅雨の時期を意味する「五月雨(さみだれ)」と関連したと考えると妥当性が出てきそうです。
「五月雨」は陰暦5月(現在の6月ごろ)に降る長雨を指し、この頃にススキが青々と茂ることから、この名がついたと考えられます。
また、「五月雨草」という呼び名は、ススキが梅雨明け後の夏を経て、秋に穂をつけるまでの成長過程を含めて、その季節感を表現しています。
この名前は、ススキが四季の移ろいを象徴する植物であることを示し、古くから人々が自然と季節を結びつけてススキを愛でてきたことを物語っています。
頻浪草(しきなみぐさ)
ススキの異称。「敷浪草」とあるサイトもありましたが……。
「頻浪」とは、絶え間なく寄せては返す波を表します。
ススキが群生する草原では、風が吹くたびに一面の穂が揺れ動きます。
その景色が波打つ海のように見えるため、「頻浪草」と呼ばれるようになったと考えられます。
袖波草(そでなみぐさ)
ススキの異称。
この別名は、その穂が風に揺れる様子が、まるで和服の袖が波のようにひらひらと動く姿に見えることから名付けられました。
ススキの群生地では、風が吹くたびに一面の穂が揺れ、その光景は無数の袖が優雅に波打っているように感じられます。
この呼び名には、自然の動きを繊細かつ優美なものに例える日本人の詩的な感性が込められています。
特に「袖」と「波」という言葉には、しなやかさや秋の風情を感じさせる美しさがあり、ススキの穂が持つ柔らかで軽やかな動きを見事に表現しています。
「袖波草」は、自然と調和した日本の美意識を反映した、風情あふれる名前と言えるでしょう。
袖振草(そでふりぐさ)
ススキの異称。
こちらも、風に揺れる穂の様子が和服の袖を振る動きに似ていることから名付けられました。
「袖振り」とは、袖を振る動作を意味し、優雅で品のある動きを連想させます。
ススキの穂は秋の風にそよぐと、まるで着物の袖が軽やかに振られているような動きが見られます。
この光景が「袖振草」という名前の由来です。
この名前は、ススキの穂が風に揺れながら、まるで人の袖が振られるような優雅で穏やかな動きを連想させ、秋の風景をより一層美しく感じさせるものです。
月並草(つきなみくさ)
ススキの別称。
この別名は、月のように優雅に揺れる穂の様子から名付けられたとされています。
「月並」という言葉は、月が均等に照らす様子や、どこにでもあることを意味しますが、ここでは月の光に似た穏やかな美しさを表現していると考えられます。
ススキの穂が風に揺れる姿が、月夜に静かに輝く月を連想させ、その風情が「月並草」という名に込められています。
露草(つゆくさ)
露草で引くとススキとは全く関係ない植物の紹介となってしまいます。仕方がないので想像します。
ススキの別名「露草(つゆくさ)」は、下記の「露曾草(つゆそぐさ)」「露見草(つゆみぐさ)」と同様に、朝露との深い関わりに由来した可能性があります。
ススキは朝方になると、その細長い葉や穂にたくさんの露を宿します。
その露が光を受けてキラキラと輝く様子が、ススキを「露草」と呼ぶ理由となったのではないでしょうか。
また、「露」という言葉は、はかなさや一瞬の美しさを象徴しており、秋の風景の中で儚くも美しいススキの姿に重ねられたとも考えられます。
この名前は、ススキがもつ自然の美しさや季節感を繊細に捉え、古くから人々がそれを親しみを込めて呼んできた証と言えるでしょう。
露曾草(つゆそぐさ)
「すすき(薄)」の異名。
こちらは、その穂に朝露が付く様子から名付けられたとされています。
秋の冷たい朝、露がススキの穂に降り積もり、輝く様子は美しく幻想的で、まるで露を浴びた草のように見えます。
この名前は、ススキの清らかで瑞々しい印象を強調し、朝の静けさと風情を感じさせる呼び名です。
『莫伝抄(室町前)』に「露急草 すすき わがやどの庭におしなみ露そ草かたよるばかり風や吹くらん」という歌があります。
露見草(つゆみぐさ)
ススキの異名。
この別名「露見草(つゆみぐさ)」は、朝露がススキの穂に輝いて見える様子から命名したのではないでしょうか。
秋の朝、冷たい露を浴びたススキの穂は、まるで宝石のようにきらめき、その輝きが露見草という呼び名にぴったりです。
この名前は、ススキの穂が朝の清新な空気と共に見せる美しい景色を象徴しています。
手切草(てきりぐさ)
ススキの葉が線形で縁が非常に鋭いため、下手に触れると手を切ってしまうことから命名されたと考えられます。
名前自体が、実際にその葉の鋭さを示すものとして、非常に適切な呼び名です。
旗薄(はたすすき)
ススキの別称。
その穂の形状が旗のように広がり、風に揺れる様子に由来しています。
ススキの穂は、風が吹くと旗のように広がり、風に揺れる様子がまるで旗が風になびいているように見えます。この特徴から「旗薄」という名前が付けられました。
万葉集・四五に、次の歌があります。
「み雪降る安騎(あき)の大野に旗薄小竹(しの)を押しなべ」
花薄(はなすすき)
その穂が花のように見えることから名付けられたとされています。
ススキの穂は、秋になると花のように美しく広がり、風に揺れる姿がまるで花が咲いているかのように見えます。
この美しい穂の形と風に揺れる様子が、花に例えられ、「花薄」という名前がつけられました。
特に「花」は、秋の風景におけるススキの穂の優雅さや華やかさを象徴しており、秋の季節感を豊かに表現しています。
穂薄(ほすすき)
ススキの穂が細長く、穂の部分が特に目立つことからつけられました。
ススキの穂は風に揺れながら、まるで穂先が薄く広がっているように見え、穂の部分が草全体の中で特に強調されます。
このような特徴的な穂の形状から「穂薄」という名前が生まれました。
また、この名前はススキの風に揺れる穂が秋の景色において重要な役割を果たしていることを反映しており、秋の風情を感じさせる美しい呼び名です。
美草・真草(みくさ)
草、特に屋根を葺くのに用いた萱(かや)の美称です。
万葉集にも、この名称を用いた「額田王(ぬかたのおおきみ)」の歌が載っています。
「秋の野のみくさ刈り葺きやどれりし、宇治の宮処(みやこ)の、仮廬(かりいほ)し思ほゆ」
額田王(ぬかたのおおきみ)は天武天皇の妃(一説に采女や巫女)で、飛鳥時代の日本の皇族・歌人です。
乱れ草(みだれぐさ)
ススキの異称。
この別名は、ススキの穂が風に揺れることで、乱れたように見える様子に由来しているのでしょうか?
特に秋風が吹くと、ススキの穂が一斉に揺れ、穂が重なり合ったり、絡み合ったりして、まるで乱れたような形になります。
この乱れた姿から「乱れ草」と呼称された可能性があります。
また、「乱れ」は一般的に秩序がない、または混乱している様子を意味しますが、ススキの場合、その自然の乱れがむしろ美しく、風に吹かれることで独特の風情を生み出します。
この名前は、風に揺れるススキの穂が生み出す無秩序でありながらも美しい景観を象徴していると考えられます。
叢尾花・群尾花(むらおばな)
こちらの別名は、ススキの穂が密集して集まり、群れを成している様子に由来しています。
「叢」や「群」は、「たくさん集まる」ことを意味し、ススキの穂が風に揺れながら束になって広がる様子がこの名前に表現されています。
穂が集まり密集しているため、花のような美しさを持ちながらも、まるで群れを成すように見えることから、この名前がつけられました。
延宝9年(天和元年)、芭蕉38歳の句があります。
「郭公招くか麦のむら尾花(ほととぎす まねくかむぎの むらおばな)」(俳諧おくれ双六)
群薄・叢薄(むらすすき)
群がって生えているススキ。《季 秋》「はるばると雲のかげりや―/暁台」
この別名は、ススキが一箇所に密集して生えている様子に由来しています。
「群」や「叢」は「群れ」や「集まり」を意味し、ススキが群生して野山や河原を覆うように広がる光景が、この名前に表現されています。
秋の風景の中で、ススキが一面に広がる穂の海のように見えることから、このような名称がつけられたと考えられます。
また、「薄(すすき)」の優雅でしなやかな姿と、密集した群れが風に揺れる様子が相まって、自然の力強さと美しさを象徴する呼び名ともなっています。
※別名の多いモノが他にもあります()数字が別名の数です。梅は24でトップを奪取ですな!
ススキの方言
ススキの別名の多さに驚きましたが、方言もいっぱいありますね。
こちらも一覧で見ていただきましょうか。
アオイ | イチモンジガヤ | イナビニ | オバナカルカヤ |
ガイン | カヤンボ | カントーシ | ギスキ |
グシキ | グシチ | クロガヤ | ゲーン |
ゴスキ | シノ | ジュウゴヤグサ | ススツカヤ |
トバシグサ | フキクサ | ミミツンボ | ヤネカヤ |
こちらの名称も面白いモノが複数ありますね。
いくつか想像してみます。
イチモンジガヤ
この名称は、ススキの葉が細長く平らで、一文字(まっすぐな線)のように見えることからきたのでしょうか?
そうであれば、この表現は、ススキの形状を特徴的にとらえたものといえそうです。
オバナカルカヤ
この名称は、ススキの穂(尾花)が特徴的であることや、「刈萱(カルカヤ)」という別名を組み合わせたものとですかね?
「オバナ(尾花)」はその穂の美しさを表しており、「カルカヤ(刈萱)」は、ススキが草刈りや茅葺きに利用されてきた歴史を反映しているようです。
この呼び名は、ススキが実用性と観賞用の両面で重宝されてきたことを象徴しているのではないでしょうか。
カヤンボ
「カヤ(萱)」に親しみを込めた方言?「ンボ」がついたものと考えられます。
「カヤ」はススキや茅葺きに使われる植物を指す一般的な呼び名であり、「ンボ」を加えることで柔らかく親しみやすい響きにしているようです。
ススキが日常生活や風景の中で身近な存在であったことを表しているのでは……。
グシチ
沖縄で「グシチ」と呼ばれるのは、ススキを指す方言です。
この名称は、地域独特の言語体系の中で生まれたものではないでしょうか。
ススキは沖縄でも身近な植物であり、草地や山間部で広く見られます。
「グシチ」という呼び方には、地域の自然や文化に根付いた親しみが込められていると思われます。
ジュウゴヤグサ
「十五夜草」の略であるとも言われ、ススキが秋の十五夜に見頃を迎えることに由来していると考えられす。
十五夜の月見にはススキが飾られることが多く、これが名前の由来となったと考えるのが自然でしょう。
ススキの穂が美しく、秋の風物詩として親しまれていることが反映された名称です。
トバシグサ
ススキの穂が風に吹かれて飛び散るような様子に由来しているのでしょうか。
「トバシ」は「飛ばす」から来ており、風に揺れる穂の動きが、まるで飛んでいるかのように見えることが名前の由来となったのかもしれません。
ススキの風に揺れる姿が印象的なことを反映した呼び方です。
最後に
この記事では、秋の風物詩「すすき」にまつわる別名とその背景を紹介しました。
すすきは「尾花」や「茅」など、古くから日本人に親しまれた風情ある呼び名を持ち、それぞれが自然観や文化的背景を反映しています。
和歌や俳句、物語の中にも登場し、その美しさや儚さが日本語の豊かさを象徴しています。
また、すすきの別名には地域ごとの特色や季節感が込められており、日本人の自然との共生を感じさせます。
これらを知ることで、すすきの魅力をより深く理解できるとともに、日本文化や言葉の奥深さを再発見することができます。
ぜひ、すすきの別名とともに秋の風景を楽しんでみてください。
※気づけば「別名」の記事も増えてきました
参考
イミナさん|yahoo!知恵袋
芒(すすき)尾花(おばな)
植物名辞典|weblio辞書
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