「いもあらい」とは一体何か?その漢字表記が面白いので追いかけた
「いもあらい」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
日常、余り見聞きすることのない言葉ですが、ニュースなどでたまに見かけることがあると思います。
恐らく、パッと思い出すのは、人が大勢集まり、ぎゅうぎゅう詰めの状態になることでしょう。
あるいは、そのものズバリで「お芋を洗うこと」くらいですかね。
しかし、この言葉の漢字表記には全然想像しえないモノがあるのをご存知ですか?
その文字面のインパクトと由来には驚かされるかもしれません。
本記事では、「いもあらい」の語源や使われ方を探りつつ、なぜそのような漢字が当てられたのかを深掘りしていきます。
思わず誰かに話したくなるような、この言葉の面白さを最後までご覧ください。
「いもあらい」とは一体何か?
「いもあらい」とは一体何でしょうか?
漢字表記「芋洗い」のことではありませんよ!
面白くて追いかけた漢字表記は次の内容です。
一口
そう、「おいしいから一口(ひとくち)で食べちゃった」の「一口」と同じ表記です。

実は、「いもあらいざか(一口坂)」という地名が東京にあるんです。
現在では、「ひとくちざか」と呼ばれているようですが、「本来は一口坂(いもあらいざか)という名称が正しい(一口坂|千代田区の文化財)」そうです。
靖国神社の近くですね!
また、京都にも「東一口(ひがしいもあらい)」という大字があります。
現在、東一口(ひがしいもあらい)は農業集落となっていますが、漁村の面影が残されています。

<東一口集落の航空写真(2020年撮影)>
<左上に宇治川。右側を南北に通るのが京阪国道。その間で南北2本の水路に挟まれるのが東一口集落。>
国土地理院 (GSI), CC BY 4.0, via Wikimedia Commons
また、この「東一口」は難読地名としても知られているそうです。
普通は、「一口」が「いもあらい」なんて読めませんよね!
名字にも「一口」があります。
【名字】一口
【読み】いちぐち,いもあらい,かずぐち,いっこう,ひとくち
【全国順位】 23,529位
【全国人数】 およそ170人
参考:一口|名字由来net
読みが5つありますが、その中に「いもあらい」がありますね。
全国で170人ほどいるようですが、何人の方が「いもあらい」を名乗っているのでしょうか?
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「一口(いもあらい)」の語源
なぜ、「一口」が「いもあらい」なのでしょうか?
「一口」が「いもあらい」になった理由
京都に「豊吉(ほうよし)稲荷神社」があります。
この神社、東一口集落内にあり、疱瘡(天然痘)を治す力を持っていると言われています。
疱瘡を「いも」、治すことを「洗い流す」で、「いもあらい」と言われるようになったそうです!
さらに、この豊吉稲荷神社、池のほとりにあって、一方向からしか行くことができないイコール入り口が一つで「一口」となりました。
そこから、「一口」が「いもあらい」になったそうです。
東京の、「一口坂」ですが、江戸で疱瘡が流行った時、この「豊吉稲荷神社」を勧進し、この神社が建った場所を「一口(いもあらい)」と称するようになったそうです。
実際、「一口坂」の坂の下に疱瘡の治癒に霊験のある一口稲荷が祀られていたと言われています。
東京都千代田区には、「太田姫稲荷神社」というのがあって、古名を「一口稲荷神社(いもあらいいなり)」と言ったそうです。
この神社のベースは、長禄元年(1457年)に太田道灌が、娘の天然痘が治癒したことを感謝し、一口稲荷神社を勧請して旧江戸城内に稲荷神社を築いたとされるモノです。
一口の由来とされる説は、下記のようにいっぱいあります。
まずは記録のあるものから……。
- 入口がひとつのみであったことから「一口」とかいた『山城名勝志』(1711年)
- 用明天皇が一口(ひとくち)川に流した短冊を淀魚市の漁師が禁裏へ届けた際「一口」を賜った『漁師由緒抜書写(東一口の山田家に伝来する文書)』(年欠)
- 土地を神から貰う神事「地貰い」が転訛し「イモアライ」になった『久御山町史』(1986年)
上の二つは、「一口」はわかるんですが、「いもあらい」の理由がないんですよね。
最後の説は、「一口」とつながらないです。
- 鯉を石清水八幡宮に献上していたとき、目録に記される「一咫」を「一口」に見間違えた
- 鋳物師(いもじ)のイモから変わった
- イモは斎(いもい)・忌(いまう)に由来し、潔斎場所に由来する
- 古訓を「以毛阿良比」とし、「以毛」は斎む「阿良比」は清めるの語意で霊場地名
- イマ(今)・アラ(新)・ヰ(井)を語源とし、新しい水路を設けたことに由来
こちらの説も、「一口」と「芋洗い」がつながりませんね。
まとめ
「いもあらい」は、一見すると何気ない日本語ですが、その漢字表記を知ると驚かされます。
実は「一口」と書いて「いもあらい」と読むのです。
東京や京都に、この名称を持った地名がありました。
この表記の語源には、たくさんの説がありましたが、疱瘡に関わる説が説得力が高かったような気がします。
「いもあらい」のユニークな漢字表記を、ぜひ誰かに話してみてください。
※気づけば、「言葉の意味」の記事も増えてきています
参考
東一口|ウィキペディア、バラ肉のバラって何?
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