代替の読み方は?「だいがえ」と読む人の理由・歴史を追いかけた
日本語には同じ漢字でも異なる読み方が存在し、時代が変わると変化することがあります。
「代替」もその一例であり、「だいがえ」と読む人も増えてきているようです。
しかし、この読み方が広まった背景には、何があるのでしょうか?
この「だいがえ」という読み方は、一体いつ頃から出てきたのでしょうか?
その理由は何なのでしょうか?
本来の読み方があるのですが、実際の会話やビジネスシーンでさえ「だいがえ」と発音する人が少なくありません。
本記事では、なぜこのような読み方が生まれ、広がったのか、現代の日本語においてどのような立ち位置にあるのか、その歴史を含め追いかけていきます。
どうか、ご一緒に最後までご覧くださいますよう。
代替を「だいがえ」と読む人の理由・歴史
始めに、代替を何と読むのか見ておきましょう。
代替は「だいたい」と読みます。
「おおー!知らなかった」と叫ぶ方もいらっしゃるでしょう。
この「代替」って、難読漢字としてクイズに度々出てくる言葉なんです。
難読になる理由は、「替」を「たい」と読ませる言葉が余りないせいだと思います。
辞書を紐解くと、「代替」の他に「交替」「隆替」「衰替」が出てきます。
ですけど、これらの言葉は次のようになってます。
- 「交替」は「交代」が普通です。
- 「隆替」はめったに見ない言葉なんですよね。
- 「衰替」は「衰退」と書きますし、「すいたい」とやってもパソコンでは「衰替」は出てきません。
代替を「だいがえ」と読む理由?
まずは、代替を「だいがえ」と読むのは間違っているのか確認します。
手持ちの辞書(三省堂国語辞典、広辞苑)を確認すると、なんと、この「だいがえ」が載っています。
三省堂国語辞典では「代替え」と「代替」+「え」になっていました。
広辞苑では、「だいたい」の重箱読みと出ています。
※重箱読み:漢字の熟語を植えの字を音読み、下の字を訓読みでよむ読み方
例として、縁組(えんぐみ)や献立(こんだて)、残高(ざんだか)があります。
では、何で、代替を「だいがえ」と読むのでしょうか。
- 一つは、既に述べたように「替」を「たい」と読む習慣がないことがあげられます。
「代替」の他に、思い浮かぶ言葉がほとんどありませんが、それが影響しているようです。 - もう一つは、「替」の訓読みに「か・え」(etc.取り替える、替え歌、替え玉)があり、かつ、多く見かけるので、そのせいで「代替」を「だいがえ」と読んでしまうのではないでしょうか。
「だいがえ」の歴史
この「だいがえ」が、いつ頃から辞書に載せられているのかを確認してみましょう。
上述した60爺の手持ちの辞書は、2008年発行の広辞苑第6版、2004年発行の三省堂国語辞典第5版です。
2008年で17年前、2004年では21年も前のモノです。
また、小学館『日本国語大辞典』の初版(1974年)には載っているとの情報もあります。
そうだとすると、2025年で51年と半世紀も前に了承とされている言葉なんですね。
Xに、興味深い投稿があります。
このXの投稿を時間単位で見てみましょう。
- 1938年(昭和13年:戦前ですよ!)『大阪朝日新聞』:「代替(か)へ」
今年2025年から見ると、87年も前に使われていたということですね。 - 1952年『明解国語辞典』改訂版:「代替」に「だいかえ(がえ)」の読み
1952年と言えば昭和27年で、辞書に載ってから73年にもなるんですよ。
この時点で辞書に載っていたのですから、もう、市民権を獲得していたんですね。 - 1960年の『三省堂国語辞典』初版:「代替え」がある
- 1960年秋号『暮しの手帖』:……の代替え物……
なんと、87年前の新聞にも載っているし、73年前の辞書にもあったのですね。
思ったよりも、随分、昔から使われていたようです。
2014年の記事ですが、こんなアンケート結果が出ています。
Q.「代替」の読み方、どちら派ですか?
「代替」の読み方、「だいたい」「だいがえ」? |マイナビニュース
「だいたい」 69.0%
「だいがえ」 31.0%
既に11年経っていますので、この差はさらに縮まっている気がします。
NHKでも「だいたいち」と聞いて「代替地」と理解できる人は少ないので、「代わりの土地」など違う言葉を使った方が無難なんて時代になってきているんです。
参考:わかりやすく伝えるために必要なくふうと音声表現の基本|NHK
※漢字自体は簡単でも読み方の難しい漢字は多々あります。「代替」を含め、それらの漢字をクイズ形式にしてみました。
「代替」の言い換え
ビジネスの場で「代替」を使用するなら、正規の読みである「だいたい」を使用せねばなりません。
ただ、「代替」を別の言葉で置き換えるなら、次のような複数の言葉があります。
- 置き換え
- 変更
- 交代
- 代用品
- 別の手段
それぞれの言葉について簡単に紹介します。
置き換え
「置き換え」は、あるものを別のものに変更するという意味を持ちます。
特にデータ処理やビジネスの場面で使用され、「古いシステムを新しいものに置き換える」などの表現で使われることが多いです。
変更
「変更」は、内容や方法を変えることを指します。
「代替」との違いは、必ずしも別のものに入れ替えるのではなく、元のものを修正・調整する場合にも使える点です。
契約や計画の変更時によく用いられます。
交代
「交代」は、人や役割などを入れ替える際によく使われます。
例えば、「チームのリーダーが交代する」「選手を交代させる」などのように、特定の役割を別の人やものに任せる場面で適しています。
代用品
「代用品」は、元のものと同じ機能を果たすために用いられるものを指します。
「この部品の代用品はありますか?」のように、主にモノに対して使われ、完全に置き換えるわけではなく一時的な代用を指すこともあります。
別の手段
「別の手段」は、「代替手段」と同じ意味で、元の方法とは異なる方法を選択する場合に使われます。
例えば、「この方法が難しいなら、別の手段を考えよう」といった使い方があり、柔軟な選択肢を示します。
最後に
「代替」の読み方として、多くの人が「だいがえ」と発音していますが、これは単なる誤読ではなく、なんと70年以上の歴史がありました。
現在では、日本人の半数近くまで「だいがえ」を使っているかもしれません。
「だいがえ」の読みが広まった理由の一つには、直感的に理解しやすいことが挙げられます。
また、過去の辞書や文献にもこの読み方が見られることから、広い範囲で使用されて市民権を得ているのだと考えられます。
ただし、公的な場では、やはり正規の表現である「だいたい」を使用するか別の表現を用いるべきでしょう。
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