カモシカのような足とは?イメージと実態に大幅なずれのある理由4選
この「カモシカのような足」には忘れられない思い出があります。
嫁さんと一緒になった若かりし頃、自分の足を指して「カモシカのような足」といった所、嫁さんから「鹿というよりも牛だ」と言われてしまいました。
どうして、そんなことを言ったのか理由が思い出せませんが、「カモシカのような足」とは、イメージ的に「かっこうがいい」ものだと思っていました。
今回、記事を書くに当たって、この辺りを掘り下げたところ、タイトルにあるように「イメージと実態に大幅なずれのある」ことが分かりました。
この記事では、カモシカのような足について、多くの皆さんが思っているイメージと実態に大幅なずれのある理由4選について、その内容を明らかにしていこうと思います。
どうか最後までお付き合いくださるよう、お願いします。
カモシカのような足とは?

恐らく、皆さんは「カモシカのような足」と聞いた時に、「すらりとした格好の良い足」をイメージしませんか?
実際、実用日本語表現辞典にも次のよう載っていました。
細く長いなど美しいとイメージされているカモシカの脚に、人間の美脚を喩えた語。
カモシカのような足|実用日本語表現辞典
「細く長いなど美しいとイメージされている」と出ています。

若かりし頃は、恥ずかしくもなく、こんなことを言っちゃったんですなあ!
さて、問題はここなんですが、カモシカの足って、そんなに美しいのかってことなんです。
まずは画像を見てください。



パッと見、そんなに「細く長いなど美しい」わけではないですよね。
というか、むしろ太い感じがします!
もっとも、山岳地帯に棲む彼ら「カモシカ」は丈夫な足がないと踏ん張れないですからね~~。
ただ、なんで、この足が、細く長いなど美しいとイメージされているのでしょうか。
それを、少し、追いかけていきましょう。
※言葉の意味の中で、閑古鳥という動物を使った記事がありました。
⇒ 「閑古鳥が鳴く」の意味・由来から実在する鳴き声までを全てご紹介
※カテゴリ「言葉の意味」の記事群を一覧にまとめた記事を新たに作成しました。
イメージと実態に大幅なずれのある理由4選
イメージと実態にずれが出た理由ですが、4つの説が出てきました。
- カモシカの漢字表記「羚羊」と「レイヨウ」を勘違いした
- 英語圏の「ガゼルのような足」を誤訳した
- カモシカのような足イコール細い足ではない
- 元祖はお釈迦様?
どれが本当なのか?
ご一緒に考えてみてください。
カモシカの漢字表記「羚羊」と「レイヨウ」を勘違いした
カモシカの漢字表記に「羚羊」があります。
この「羚羊」なんですが、別に「レイヨウ」と読むことができます。
「レイヨウ」と読むと、アンテロープ (Antelope) を指し、ウシ科の哺乳類の一群で、多くはアフリカ・アジアの草原や砂漠にすむものの総称です。
インパラ・ハーテビースト・セーブルアンテロープなど、走るのに適した体形を持った動物たちで、足が細いです。

Ikiwaner, GFDL 1.2, via Wikimedia Commons
<インパラ Aepyceros melampus>

D. Gordon E. Robertson, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
<ハーテビースト Alcelaphus buselaphus cokii>

Paulmaz, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons
<セーブルアンテロープ Hippotragus niger>
冒頭で述べた「カモシカのような足」というイメージのカモシカとは、実はレイヨウのことを指しているのです。
羚羊が「カモシカ」を示すようになり混同されてしまったのです。
英語圏の「ガゼルのような足」を誤訳した
英語に、「ガゼルのような脚 ⇒ Legs like a gazelle / gazelle-like legs」という表現があります。

ご覧のように、ガゼルの足は細くきれいですよね。
ところが、この表現を日本語に訳す際、誰がそうしたかわからないのですが、「ガゼル」の替りに「カモシカ」としたのではないかと考えられています。
まあ、悪気はなかったのでしょうが、「ガゼル」と言っても日本人には伝わらないので、同じ種とされていた「カモシカ」を採用したのでしょう。
昔から、翻訳の世界では、こういうことが多々発生します。
カモシカのような足イコール細い足ではない
カモシカのような足イコール細い足のことを言っているわけではないという説もあるようです。
既に画像で見ていますが、カモシカは、山地を駆け回るのに適した、筋肉がしっかりついている足を持っています。
この筋肉がしっかりとついて引き締まった綺麗な足を「カモシカのような足」というものです。
元祖はお釈迦様?
「カモシカのような足」の由来のひとつとされているのが、仏教の始祖である、お釈迦様の姿の32の特徴を挙げたという「三十二相八十種好(さんじゅうにそうはちじっしゅこう(ごう))」です。
「三十二相八十種好」の中に記された「伊泥延腨相(いでいえんせんそう)」という項目には、「足のふくらはぎが鹿王のように円く微妙な形をしていること」という意味があります。
⇒ 三十二相八十種好|ウィキペディア:この記事の№8にあります
この「伊泥延腨相(いでいえんせんそう)」の意をいくつか探してみました。
- 膝、ももが鹿の足のように繊細で引き締まっていること
- 手足が鹿の足のように繊細で引き締まっている相を意味(=仏さまが私たちのもとへ素早く駆けつけ、お救いくださる慈悲の心)
「伊泥延」は、サンスクリットのアイネーヤの音写で鹿の一種だそうです。
ここにある表現(「丸く微妙な形」「繊細で引き締まっている」)は、単純に「すらりとした奇麗な足」ではないんですね。
そんな所から、上記「カモシカのような足イコール細い足ではない」説も発しているのでしょうか?
ただ、「伊泥延」が「カモシカ」になった理由が見つからないんですよね…・・・。
ここがネックでしょうか?
ネットで見つけた「カモシカのような足」

houzyouhideyosi, CC BY-SA 3.0, via Wikimedia Commons <野生のニホンカモシカ>
カモシカのような足を探している中で見つけたいろいろな情報を載せていきます。
トリビアの泉の中でも「カモシカの足は太い」を取り上げていました。
今でいうMCの高橋克実のセリフ「私の足はカモシカのようなにおいがします」は爆笑ものですね。
最後に
「カモシカのような足」とは、細くて引き締まった美脚を指す褒め言葉ですが、実際のカモシカの足は太く筋肉質で、イメージとは大きく異なります。
この記事では、そのズレが生まれた理由を4つ紹介しています。
カモシカの漢字表記、英語翻訳の誤訳、もともと意味が違った説、元祖はお釈迦様の4つの説です。
60爺は英語翻訳の誤訳が一番近いような気がしますが、どうなんでしょうかねえ。
※気づけば、「言葉の意味」の記事も増えてきています
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