将棋名人戦・順位戦を総特集!その仕組みから賞金額・永世名人まで
毎日新聞社と朝日新聞社共催の将棋の棋戦で八大タイトル戦のひとつです。将棋タイトル序列は竜王戦と並んで1位です。
タイトル戦の中で一番長い歴史を有し、短期実力制によって名人を選ぶべく、1935年に第1期が開始されました(江戸時代は終身位名人制でした)。
名人戦・順位戦は、名人に挑戦するには順位戦A級まで上がらなければ実現しない、将棋界で最も獲得するのが難しい棋戦です。
そんな、名人戦・順位戦について仕組みから賞金額・永世名人までをじっくりと総特集しました。
是非、ご一緒にご覧になってください。
名人戦・順位戦とは
名人戦・順位戦の仕組みから解説していきます。
順位戦は、名人戦の予選に当たります。
名人戦・順位戦の仕組み
名人戦・順位戦は、次のようなクラスに分かれたピラミッド型になっています。棋士は、全てこの中に組み込まれています。
頂点は名人です。
その下にA級(定員は10名)、B級1組(B1)(定員は13名)、B級2組(B2)25名、C級1組(C1)36名、C級2組(C2)52名の各クラスがあります(人数は2019年第78期のもの)。
その下に、順位戦を指さないフリークラスが存在し、宣言者とそれ以外(C2陥落及び次点2回の新棋士他※)に分かれています。
宣言以外の棋士は、10年の間に所定の成績を残さないと強制的に引退させられてしまいます。
※奨励会三段リーグで次点2回を取って棋士になった者及び編入試験を経て棋士になった者はフリークラスに配属されます。
下記に、フリークラスの給料をまとめた記事をアップしています。
さらに、この順位戦をベースに棋士の給料が決定するんです。その中身が気になる方は次の記事をどうぞ。
各クラスは1年で1つの昇級しかできません。そのため、棋士になって(四段はC2)から名人に挑戦するには最低でも5年かかります。
これが名人戦(順位戦)最大の特徴です。
タイトルである名人を獲得するにはA級に属さねばならないのです。
名人戦以外のタイトルは、予選を通過し挑戦者となり、番勝負に勝てば誰でもタイトルを獲得できますが、名人戦だけはA級に属す10名の棋士のみタイトル獲得の可能性があるのです。
A級の歴代棋士についてまとめています。棋士の中から選りすぐられた棋士たちの記録の世界を覗いてみてください。
名人戦・順位戦の実施時期と昇級、降級
名人戦・順位戦は、毎年、6月頃から始まり3月末に決着がつきます。成績により、昇級及び降級が決まります。
A級:原則として10名の棋士による総当たり戦です。成績最優秀者が4月から名人と七番勝負を行い、四番勝った棋士が名人となります。成績下位2名が来期B1に降級します。
B1 原則として13人の棋士による総当り戦です。成績上位2名が来期A級に昇級します。成績下位3名が来期B2に降級します。
※降級者は2019年度まで2名でした。
B2 棋士1人が10局対局します。成績上位3名が来期B1に昇級します。B2級所属要員をベースに規定による員数に降級点が付き、降級点2でC1に降級します。
降級点を持っている棋士が勝ち越すか、2回連続で5勝5敗を挙げるかした場合は、降級点は消えます。
※昇級者は2019年度まで2名でした。
C1 棋士1人が10局対局します。成績上位3名が来期B2に昇級します。C1級所属要員をベースに規定による員数に降級点が付き、降級点2でC2に降級します。
降級点を持っている棋士が勝ち越すか、2回連続で5勝5敗を挙げるかした場合は、降級点は消えます。
※昇級者は2019年度まで2名でした。
C2 棋士1人が10局対局します。成績上位3名が来期C1に昇級します。C2級所属要員をベースに規定による員数に降級点が付き、降級点3でフリークラスに降級します。
降級点を2つ持っている棋士が勝ち越すか、2回連続で5勝5敗を挙げるかした場合は、降級点が1つに減ります。ただし、1つ目の降級点は、昇級もしくは降級しない限り消えません。
なお、B2以下は、全勝者は人数にかかわりなく昇級となります。
規定による員数とは以下の通りです。
- B級2組:4人につき1名
- C級1組:4.5人につき1名
- C級2組:4.5人につき1名
※2019年度までは、B級2組、C級1組、C級2組とも5人につき1名でした。
なお、その年の成績により、クラス内で順位が決まります。
同じ戦績なら順位が上の者が上位になるシステムです。たとえば、B1で8勝2敗が3名いると、順位が上位の棋士2名が昇級し、最下位順位の棋士は昇級できない厳しさがあります。
但し、A級は、戦績が同じ棋士がいると、その棋士同士で名人挑戦者決定戦を争うことになります。
昇級は非常に狭き門となっておりますが、対局料はクラスで決まるので、生活が懸かっています。
順位戦の持ち時間は6時間です。
名人戦七番勝負
A級でトップの成績を上げたものが、例年4月から6月にかけて名人と七番勝負を行い、先に4勝を挙げた棋士が、その年の名人になります。
名人戦は一局二日制で持ち時間は9時間です。
ここ10年間の名人は誰?
ここでは、ここ10年の名人位を獲得した棋士を一覧にしてみていただきます。
期 | 西暦 | 棋士名 | 奪取/防衛 |
---|---|---|---|
72 | 2014 | 羽生善治 | 奪取 |
73 | 2015 | 羽生善治 | 防衛 |
74 | 2016 | 佐藤天彦 | 奪取 |
75 | 2017 | 佐藤天彦 | 防衛 |
76 | 2018 | 佐藤天彦 | 防衛 |
77 | 2019 | 豊島将之 | 奪取 |
78 | 2020 | 渡辺明 | 奪取 |
79 | 2021 | 渡辺明 | 防衛 |
80 | 2022 | 渡辺明 | 防衛 |
81 | 2023 | 藤井聡太 | 奪取 |
第73期までは羽生善治九段が名人を持っていたんですね。
佐藤天彦九段が羽生善治九段を破って名人3期を獲得しましたが、豊島将之九段、渡辺明九段が名人位を襲名、渡辺九段が3期獲得したんですが、昨年藤井竜王・名人(八冠)に敗れました。
さて、藤井竜王・名人は名人を何期獲得するのでしょうか?
賞金額
残念ながら公開されていないんです。そこで・・・。
ようやく、自分なりの将棋八大タイトルの賞金額一覧を作成しました。
やっぱり、序列は竜王戦と並んで序列1位のタイトル戦ですし、それなりの賞金が頂戴できます。
賞金額は3,500万円です!
根拠は次の記事です。
月々の名人手当の1年分、名人戦七番勝負の対局料、名人位の賞金。これらの合算が名人の賞金と考えてよいだろう。今年の場合は3,500万円近くになる。
引用 名人位の賞金総額を推計する
60爺独自で、将棋のタイトル戦の賞金額を推定した記事をアップ済です。他のタイトルの賞金額など気になる方は、次の記事をご覧ください。
永世名人とは?
名人位を通算五期獲得した棋士に永世位が与えられます。但し、襲名は引退後と決まっています。
代数は家元制(世襲制)および推挙制の数字を引き継ぎ、十四世から実力制となっています。
現在までに、永世位を獲得した棋士は次の通りです。
- 十四世名人 木村義雄:昭和27年(1952年)
- 十五世名人 大山康晴:昭和51年(1976年)
- 十六世名人 中原誠:平成19年(2007年)
- 十七世名人 谷川浩司
- 十八世名人 森内俊之(引退後に襲位予定)
- 十九世名人 羽生善治(引退後に襲位予定)
谷川十七世名人は、推挙されたことで、現在(2024年)この肩書で対局しています。
大山康晴十五世名人の記録にスポットを当てました。
羽生善治九段(十九世名人)の凄さを洗い出した記事がこちらです。
最後に
名人戦・順位戦の仕組みを解説しました。
名人戦・順位戦は毎年10局近くを戦い、その成績によって昇降級が決まる厳しいシステムです。クラスによって自らの給料が決まるシステムでC2級を陥落すると10年後は引退の文字も点滅するんです。
ただ、その中でも、名人位を何度も防衛し、永世位に輝く棋士もいます。
毎年厳しい名人戦・順位戦を戦い抜く棋士の皆様方には、頑張ってほしいものですね。
■思えば、将棋の記事も増えてきましたね!
参考記事
■日本将棋連盟 名人戦・順位戦 棋戦概要
■将棋ペンクラブログ 名人位の賞金総額を推計する
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