将棋の八大タイトルの名称と序列・番勝負及び永世位について解説する
2017年、羽生善治竜王(当時)が棋界最高と言われる「竜王」を奪取したことで、永世七冠を達成しました。
この栄誉をたたえて、2018年国民栄誉賞を受賞したことを覚えておられる方もいらっしゃると思います。
さて、ここで言っている「七冠」ですが、これが将棋界におけるタイトルの数なんです。
現在は、2018年に叡王戦が追加され、タイトル数は八つになっています。
将棋界は、藤井竜王・名人が全タイトルを獲得(2023年10月11日時点)し、八冠達成後も竜王戦・王将戦と防衛し、八冠を堅持しています。
今回の記事では、この八大タイトルとは何かを見ていきます。合わせて、序列・番勝負及び永世位について解説していきます。
八大タイトルの名称と序列
その名称と序列を以下に掲げます。
八大タイトルの名称と序列
八大タイトルの序列は次の通りです!
竜王&名人>王位>叡王>王座>棋王>王将>棋聖
竜王と名人が並んで序列1位となっています(賞金額は竜王戦がトップ)。それ以降、王位、叡王、王座、棋王、王将、棋聖の順となっています。
タイトル戦の序列は契約金の額(wiki 棋戦)によるものです。合わせて、タイトル戦の歴史も、その序列に影響を与えています!
これらのタイトルを保持する棋士をタイトルホルダーと呼びます。
そして、タイトルホルダーは、氏名の後にタイトル名を付加して呼ばれます。たとえば、渡辺明名人や豊島将之竜王という形ですね。
タイトルを二つ以上持つと、渡辺三冠、豊島二冠と称されます。
2024年2月21日時点では、藤井聡太竜王・名人(竜王と名人をあわせ持った棋士の呼び名)が八冠を制覇していますので、藤井八冠とも称されます。
タイトルの序列は、上記で述べたように、「契約金の額」の多寡によるものです。合わせて、タイトル戦の歴史も、序列に影響を与えているんです。
「序列の決め方」については、次の記事で詳しく解説していますので、ご覧になってください。
なお、賞金額は竜王戦のみ公開されており、竜王獲得者は4,200万円(敗者でも1,500万円)です。すごいなーー。
他のタイトル戦の賞金額は非公開ですが、60爺が独自に調べた内容が次の記事です。賞金額に興味のある方は、是非、ご覧ください。
この将棋の8冠達成者は、上に述べた藤井聡太竜王・名人のみです。
過去には、羽生善治九段が七冠を達成しています。この時は、叡王戦がなかったんです。
タイトル戦
棋戦のうち、称号(タイトル)を争うものがタイトル戦です。
タイトル戦の勝者は、称号を獲得し、翌年のタイトル戦が終わるまでの間、段位に代わってタイトル名を肩書として名乗ることがでます。
タイトル戦の詳細
これらタイトル戦の方式は全て異なります。
ただ、基本的に全棋士が参加して、予選及び本戦を行って挑戦者を決定し、1年に1回タイトルホルダーと挑戦者が番勝負を行って、その年度のタイトルホルダーを決定することは同じなんです。
それぞれのタイトル戦の予選、本戦、挑戦者決定戦の有無は次の通りです。
- | 予選 | 本戦 | 挑戦者決定戦 |
---|---|---|---|
竜王戦 | ランキング戦1~6組 | 変則トーナメント | - |
名人戦 | 順位戦B級1組、B級2組、C級1組、C級2組 | 順位戦A級 | - |
王位戦 | 予選 | 挑戦者決定リーグ | 紅白リーグの優勝者 |
叡王戦 | 段位別予選 | トーナメント | - |
王座戦 | 一次予選、二次予選 | 挑戦者決定トーナメント | - |
棋王戦 | 予選 | 挑戦者決定トーナメント | 変則挑戦者決定戦 |
王将戦 | 一次予選、二次予選 | 挑戦者決定リーグ | - |
棋聖戦 | 一次予選、二次予選 | 決勝トーナメント | - |
名人戦ですが、本選に「順位戦A級」を入れていますが、順位戦A級に所属している棋士のみが名人挑戦者になれるため、便宜上こうしているだけです。B級1組、B級2組、C級1組、C級2組の棋士が予選を勝ち上がる訳ではありません。詳細は、下記名人戦の記事を参照してください。
それぞれのタイトル戦のシステムの詳細については、次の解説をご覧ください。
- 将棋の八大タイトル序列一位竜王戦の仕組みと賞金額について!
- 将棋名人戦・順位戦の仕組みと特徴及び賞金額について
- 将棋タイトル序列第3位王位戦の仕組みと賞金額、永世位について
- 将棋叡王戦の方式の紹介と賞金及びスポンサーの変更
- 将棋王座戦の賞金額と方式、永世位と面白いエピソードについて
- 将棋棋王戦とは?その仕組みと賞金及び持ち時間や永世位について紹介
- 将棋ALSOK杯王将戦の方式と賞金及び永世位とエピソードの紹介
- 将棋ヒューリック杯棋聖戦の序列と賞金及び方式と永世位について
タイトル戦の歴史
タイトル戦が、いつごろから始まったのか表にしてみました。
タイトル戦 名称 | 開始時期 |
---|---|
名人戦 | since 1937 |
竜王戦 | since 1988 |
王位戦 | since 1960 |
叡王戦 | since 2015 |
王座戦 | since 1953 |
棋王戦 | since 1975 |
王将戦 | since 1951 |
棋聖戦 | since 1962 |
この表を見てわかるように、名人戦が最も歴史が古い棋戦であることがわかります。そして、名人戦は、他の棋戦と異なり、A級棋士にならないと挑戦すらできない棋戦なのです。
名人位は、江戸時代から存在していましたが、実力性になったのが 1937年なのです。
名人戦で名を馳せた棋士達(升田幸三、大山康晴、加藤一二三、羽生善治)を見てください。
- 升田幸三の名言を大特集!数々の伝説エピソードと一緒に見てみよう
- 大山康晴の伝説の記録を紹介!あの藤井聡太にも破れない?
- 加藤一二三(ひふみん)のすごさ!蓄積された数々の大記録を見よ!
- 羽生善治の凄さとは?数々の記録から棋界第一位の記録をピックアップ
番勝負
番勝負とは、タイトルホルダーと挑戦者が複数回の対局を行い、既定の勝ち星を挙げた方を勝者とする仕組みを指す言葉です。
防衛と奪取
将棋の番勝負には、五番(王座、叡王、棋王、棋聖)の番勝負と、七番(名人、竜王、王位、王将)の番勝負があります。
五番勝負は先に三勝、七番勝負は先に四勝した棋士がタイトルを獲得します。
番勝負でタイトルホルダーが制勝すれば防衛、挑戦者が勝てば奪取と呼ばれます。
一日制と二日制
タイトル戦には、一日制と二日制があります。
一日制とは、前日に現地入りして検分を行い、勝負は翌日一日で決着がつくものです。
五番勝負の王座戦、叡王戦、棋王戦、棋聖戦の各棋戦が一日制です。
二日制は、前日に現地入りし検分を行い(タイトル戦によっては、前夜祭が行われることがあります)、勝負が翌日と翌々日の二日に渡り行われるものです。
七番勝負の名人戦、竜王戦、王位戦、王将戦の各棋戦がこれに当たります。
勝負が二日に渡りますので、初日の決められた時間(大体18:00)に、手番の棋士が差し手を紙に記載(封じ手という)し、それを保管して一旦勝負を中断し、翌日、これを開封して勝負を継続する方法が取られています。
中継ブログ
また、番勝負は、基本的に全国各地の旅館などで実施されます。
中継ブログなどで、各地の名産などが紹介されますので、一度、ご覧になってみてはいかがでしょうか。
棋士の注文したおやつや、食事なども公開されています。
タイトル戦の実施時期
以上でお分かりになるように、八大タイトルの挑戦者は八名のみです。
全棋士(160名)を越える棋士が、1年間に渡り勝負を繰り広げ、1名だけが挑戦権を得て、タイトルホルダーと雌雄を決する訳です。
このことから、挑戦権を得るだけで、並大抵のことではないことがわかりますよね。
タイトル戦の実施時期は次の通りです。
- 竜王戦:毎年10月から12月
- 名人戦:毎年4月から7月
- 王位戦:毎年7月から9月
- 王座戦:毎年9月から10月
- 棋王戦:毎年2月から3月
- 叡王戦:毎年4月から6月
- 王将戦:毎年1月から3月
- 棋聖戦:毎年6月から8月
これを、月別の表にしてみてみると、どの月も何らかのタイトル戦が実施されているのがわかります。
しかし、これはタイトル戦が最終戦までもつれ込んだ場合ですので、一方的な展開になると後半のスケジュールがなくなり、タイトル戦のない月が発生しますね。
永世位について
永世位は下記の表に示すように、タイトルごとに条件があり、その条件を満たすことで与えられるものです。名乗るのは原則引退後です。
永世位の名称 | 獲得条件 |
---|---|
永世竜王 | 連続五期か通算七期 |
永世名人 | 通算五期 |
永世王位 | 連続五期か通算十期 |
永世叡王 | 通算五期 |
名誉王座 | 連続五期か通算十期 |
永世棋王 | 連続五期 |
永世王将 | 通算十期 |
永世棋聖 | 通算五期 |
タイトルを一つ獲得するのも大変なのに、永世位は、さらにそれの上を行く称号なのです。詳細については、次の記事をご覧ください。
なお、全冠制覇を成し遂げた藤井聡太竜王・名人が永世八冠を成し遂げるには、どれだけかかるかをチェックした記事があります。
現時点(2024年2月21日)では、2031年の王将戦で永世八冠が実現する見込みです。
ただ、条件は、それぞれのタイトルの永世位を順調に獲得できたと仮定しているので、それが崩れると、実現は先延ばしとなっちゃいますが。
最後に
将棋の八大タイトルについて見てきました。
2023年2月現在で、将棋界には8つのタイトルが存在します。それらの序列を紹介し、また、個別のシステムを紹介しています。
さらに、タイトル戦の歴史を紹介した後、それらの番勝負について解説し、奪取及び防衛とはどのようなものかを説明しています。タイトル戦の実施時期を図で示してあるので、どこでタイトル戦が行われるか一目瞭然ですね。
そして、将棋界の中でも、より優れた棋士のみ獲得できる永世位について解説しました。藤井竜王(五冠)が永世を獲得するのは早くて来期(2024年)となりますね。
■思えば、将棋の記事も増えてきましたね!
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